癒しと毒の融合愛◆◆心の逃げ場だけでいいのか?久遠の愛を誓う物語◆◆ 【完結】

まぁ

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part 7-6

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「大切な家族が亡くなったのは、紗栄子の体から無理やり杭を引き抜いたような…そんな深くて鋭い縦穴を作ったはず」

そうなんだろう。1週間動けなかったのはそういうことで、今朝から龍之介が私を表の部屋に連れ出したんだ。

「その穴は俺が埋めてやる。その穴が溢れるほどの愛を…この世に存在するありとあらゆる種類の愛を紗栄子に注いで埋めてやる」

告白とか愛を言葉にするというのはこういうことなのか。結婚していたけれど私は知らない。

そしてそれが寝耳に水のような話でも、この熱量を視線と声に乗せられ、両手から体温が伝えられると心は動く。

「ここはすでに紗栄子の家。で…」

言葉を区切り僅かに目尻を下げた彼は何が言いたいのだろう。

「俺はただ好きな女をここには置かない。住ませることはない。紗栄子はずっと手放したくない存在だからここへ連れて来た。他に助ける方法はあっただろうが、紗栄子のこれからは俺と一緒だと。紗栄子、こうして俺の手を取るだけでなく深く飛び込んで来い」

龍之介がそう言った時には、私の体はすっぽりと彼の腕に包み込まれていた。

甘い言葉は甘い毒。

真っ直ぐに私へ届くバリトンに乗せられたそれは、彼の言う縦穴に簡単に入り込む。

深い深い穴の奥底までしっかりと届くように…まるで子どもが甘い風邪薬シロップをべぇっと吐き出すのを防ぐみたいに抱きしめられ、効き目が確かめられるまでは解放してもらえないのだ。

ああ、彼の体温によって甘い毒が浸透してしまいそう。

「…何を言えばいいのかわからない…ごめん…」
「ん」

わからないと言ったのにそれだけって…何を言えばいいの?

「…ドクドクしてる」
「俺がな」
「私でしょ」
「俺」

そう言って龍之介は私の頭を抱えるように自分の胸に寄せた。

「ドクドク…?」
「生きてるからな」
「うん」
「好きな女に触れてるからな」

彼の音色からは緊張などは微塵も窺えないけれど。

「俺の女になれ。間違いなく幸せになれる」
「女…」
「離婚からの日数で今すぐ結婚が出来ないからな。それで我慢してくれ」
「…話が大きく飛躍したと感じるのは…気のせい?」
「気のせいだな。ずっと一緒にいるんだから肩書きは何だって同じこと」
「甘い話は怖いんだよ?」
「それは俺もよく知っている。だが、俺のは甘い話じゃねぇ。神にも紗栄子の親にも誓える愛情の話」
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