癒しと毒の融合愛◆◆心の逃げ場だけでいいのか?久遠の愛を誓う物語◆◆ 【完結】

まぁ

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part 5-8

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「すごく元気」

母の後ろからで良かった…元気ってことに嘘はないよ。朝からケラケラと盛り上がっていたからね。

でも私はその輪からずっとはみ出ていて、ついには離婚だよ。

嘘ついてごめんね、お母さん。

車椅子から降りてベンチに座る母は思ったよりも嬉しそうな顔でない。鎮痛剤を使わない日も、もうずっと体は重くダルさはあるだろうから。それでも

「こういうみかん、皮も剥きやすくて甘いわよね」

自分でみかんの皮を剥くところを見ると安心するし、記憶などに問題がないことにはいつも“ありがとう”と思う。

母はみかんを半分私に差し出すので

「たくさんあるよ?お母さん、ビタミン摂って」

と心から言う。食べられる時に食べられるだけ食べてよ。

「少しずつね」
「そっか、ありがと…わっ、甘い」

お母さんが剥いてくれたから美味しい…龍之介さんの優しさも美味しさを増量させたのかもしれない。

そう思う私の頭に木漏れ日が差すと頭皮がジリジリする気がする。それは龍之介さんとは対照的な夫を思い出させるもので、私は

「お母さん、ストール借りるね。頭があつい気がする」

と母の薄いストールを自分の頭に被せた。

母は美味しそうにみかんを食べたけれど、ヨーグルトは半分で満腹だと言った。

そして真上でなく遠い空を見上げて

「生きてるねぇ…秋限定なんてものが食べられるなんてね」

嬉しいはずの言葉を無表情に見える顔で呟く。

母もいろんな思いを抱えて今日まで来たのだろう。

小さくバッグの中でスマホが震えたので、ティッシュを出すフリで確認する。私がスマホを手にすると母が時間を気にするから。

“泊まりオーケー”

という龍之介さんからのメッセージを見て、彼は今朝急いでいたからではなく常にこういう短いメッセージを送るのかな?と考えた。

「お母さん、私今日泊まれるから」

私がそう言って母を見ると、母はゆっくりと私を見て

「帰りなさい」

と今日初めて柔らかい表情になった。
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