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part 5-7

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「転けて捻っちゃったけど大丈夫。大袈裟に固めてあるから動かしづらいだけで痛くないし」
「そう、ビックリするわ」
「ごめん、ごめん。ご飯は?」
「昨日は食べたけど…」
「みかん、食べる?一緒に売店に行ってヨーグルトとか買う?」
「そうね…そんなの持って外で食べようかしら」

珍しいことを言われると、嬉しい反面ドキッとする。

「じゃあ、着替えてお化粧する?」
「それもいいわね。準備だけでお昼になりそう」
「お昼のピクニックでいいんじゃない?」

この部屋の中ではゆっくりと自分で動ける母に出来るだけ自分で着替えもお化粧もしてもらう。

そして部屋の入り口にある車椅子に母を乗せて、トートバッグにみかんを入れて売店を目指す。

「あら、上村さん、お出掛け?素敵なストールですね」
「外でおやつを、と思って」
「それはいいですねぇ、中庭より表のイチョウの樹の下が涼しいかもしれませんよ?」

母が着替えたことに気づいて声を掛けてくれたスタッフさんに教えてもらったので、イチョウの樹の下に行くことにする。敷地内のあちこちにベンチがあるから座るところには困らない。

売店での買い物も二人で一緒というのは久しぶりだから私が嬉しい。

足首は動きが不自由で歩きづらいけれど、車椅子を押すのはもたれ掛かるように歩けて楽な気もする。右膝の方が痛むなぁ…骨を打ち付けたのかな。

「紗栄子はおやつじゃなくて、しっかりお昼も食べたらいいんだよ?」
「まだ早いし、あとでね」

夫と義父が初期費用を出してくれたあと、月々の支払いは母の掛けていたガン保険やそれまでの母の貯えをホスピスへの支払いに充てることでやっていけている。ここでの買い物は母の来月の支払いに回すことも出来るけれど、財布には昨夜舞い戻って来た2000円があるから支払ってしまおう。

「プリンもいいね」
「紗栄子はプリンにする?私はこのヨーグルトを食べてみようかしら」
「秋限定だって」

まだ結構暑いけれど9月だからね。梨がゴロゴロという誘い文句に乗った母のヨーグルトと私のプリン。常温のお茶と少しの焼き菓子。みかんもあるから十分だね。

「暑いわね」
「少しね。ストール外す?」

母はゆっくりとストールを外しながら

「清水のご両親はお元気?」

と車椅子を押す私に聞く。
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