癒しと毒の融合愛◆◆心の逃げ場だけでいいのか？久遠の愛を誓う物語◆◆

part 5-6

ホスピスへ到着して分かったのは、私の乗っていた車の前後に全く同じ車が走っていたこと。私達が車を降りた時に、もう1台が敷地へ滑り込んで来て助手席から降りて来た芦田さんが

「間に合ったな。これ持って行って」

とスーパーの袋を私に持たせる。中を見ると温室みかんのパックが2パックも入っている。

「一緒に食えるといいな」
「っ…ありがとう…ありがと…」
「若から‘フルーツ’とだけメッセージが来たからな」

芦田さんがそう言ったけれど、龍之介は知らん顔でひょいっと私を持ち上げる。

「歩くっ…じゃない…最初にありがとうだね…ありがとう、龍之介」
「ん」
「で、下ろして」
「もう少ししたらな」

4台の黒塗りと黒い男の集団はホスピスに似合わないと思ったけれど、建物の中へは龍之介しか入って来ない。そして龍之介も母の部屋から少し離れたところで私を下ろすと

「ここからはこれまで通りだ」

と私の頭をそっと撫でる。

「離婚届の提出や紗栄子の生活に必要な物を用意しておく。帰る時に電話をくれれば迎えに来る」
「ありがとう」
「何時でもいい。1時間後でも夜遅くてもいつでもかまわない。宿泊の申請が出来るとも聞いてる。宿泊してもいい」
「ぇ…いいの？」
「当然だろ？宿泊するか？」
「したい…したくてもいつも帰っていたの…」

食事を作るために…

「申請してやる。泊まりに必要なものも届ける、ちゃんとスタッフ経由でな。寝ていようが一緒に過ごしたいよな」

本来、家族でもない龍之介が私の宿泊申請など出来るはずがないけれど、寄付をするような信頼関係にあるのだろうと考えながら

「お母さん、おはよう」

とそっと声を掛け扉を開ける。考えてみれば、いつもお昼前に来ることが多いから今日は早い。

「紗栄子？早いね、おはよう」
「起きてたんだ」

母は窓際にある椅子に座って中庭を見ていたようだ。

「…足、どうしたの？」