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第一章 寝坊少年と委員長
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私は橋本瑞穂、濱崎高校1年2組のクラス委員長をやっています。
以前中学校でも生徒会やいろんなことに挑戦してきたので、今回も自ら率先してこの役を引き受けました。ですが最近ちょっと気になっていることがありまして。
というのも、うちのクラスの一人の生徒がまだ学校が始まって一か月も経っていないのに、もう9回も遅刻をしているんです。その都度注意をしてはいるのですが彼の目つきは悪く、何度注意しても反省しているようには見えません。一応返事はしてくれるのですが声はなんだか棘があるようです。別に不良だとか怖いとか、そういった印象があるわけではありませんが。
そう思っているうちに今日も彼は遅刻してきてしまいました。また注意に行くべきか、そろそろ諦めるべきか、いえ、弱気になってはいけませんね。連絡事項を聞く相手もいなさそうですし、注意がてらに教えてあげましょう。
「遠藤君、今日も遅刻ですか? 何度言ったら改めてくれるんです? 朝が弱いとはいえ、どうにかやりようがあるんじゃないんですか?」
「はあ、すみません」
いつもこれなんですよね。本当に聞いているんでしょうか。
「はあ、すみません。じゃないですよ! これで何度目だと思ってるんですか。まだ一か月も経ってないのに十回も遅刻してるんですよ! さすがにあなたにとってもまずいでしょうそれに―――聞いてるんですか?」
「はい、はい、聞いてます」
やっぱり少しも反省してなさそう。
「そういった態度も改めてくださいね」
「はい」
「……はあ、まったく反省しているように見えませんよ。まあいいです。それで今日の連絡なのですが、5限目は教室移動ですから早めに移動するようにお願いします」
「分かりました」
どうやらこれは本当にわかっているらしいですね。それでは連絡を切り上げて授業の準備をすることにしましょう。
友達と弁当を食べた後、昼休みも終わりに近づいて教室にも人が集まってきています。しかしこの後は午前中の話の通り移動教室ですので、私が呼びかけを行いたいと思います。
「皆、移動教室だから少し早めに出てくださいね」
教室からはみんなの返事がばらばらに聞こえてきます。中学校までと違いみんな言うことをしっかり聞いてくれるから本当に助かりますね。
だんだんと教室内から人が出始めてから今気づいたというように動き始める人もいます。読書に集中してると周りの音が聞こえなくなったりする経験が私にもありますが、さっきの声で聞こえていなかったのか、と少ししょんぼりしてしまいます。
それはさておき、皆が移動してから見つけたのですが、先ほど男子が固まっていた場所にゴミが落ちていますね。皆が出てから拾いましょうか。
そう思っていた矢先、一人の生徒がゴミを拾い正しい場所に捨ててくれました。いやーこのクラスにもいい人がいるんですね。なんて思いながらふと、あることに気づいたのです。ゴミを拾ってくれたのは彼、遠藤君だったのです。
いやいやいやいやちょっと待って、いやだって遠藤君だよ? 何とも言えない態度で反省しない、せっかく私が注意してあげているのに聞き流す、あの遠藤君だよ?
見た目だけならともかく態度が失礼なあの遠藤君がそんな親切心を持っているわけがないじゃないですかー。なんだ私ったら疲れてるのかな。今日は早めに寝るようにしようっと。
移動教室の先は理科室、今日は化学の炎色反応の実験をするそうで、みんなガスバーナーなどの準備をしています。こういう時にいっせいに動くと意外と危ないので、みんなが動くようなら私は座っておこうかなとどうでもいいことを考えながらボーっとしていました。
準備の間時間を持て余していると、自然と私は先ほど見た信じられない光景を思い出し、思わず彼の方を見てしまいました。
て、テキパキと準備をしている、ですって!
いや待て私、さすがにそれは彼に失礼というものだ。いくら彼が目つきが悪く、人の注意を聞かず、何度も遅刻して、やる気がない態度で先生の注意を受け流す生徒であっても、ただ単に化学が好きなだけってことも考えられるじゃないか。どうせすぐボロが出るに決まっている。
それにこれは班活動だ。一人で勝手に盛り上がっているだけではまったく意味がないのである。
ほらその証拠に、班員を手伝って教えて、い、る……!?
か、彼は協調性がない生徒ではなかったというの? それじゃあ今まで私がしていたことはただのお節介で、連絡事項を聞く相手もいないなんて言うのは私の勝手な思い込みで、それに加えて勝手に決めつけて私は……。
「え? 遠藤君がどんな人かって、急にどうしたの瑞穂ちゃん」
放課後、私は彼と席の近い友達に話を聞いてみることにしました。
「い、いやー、その、彼ってよく遅刻するじゃない? それでどんな人なのかなって」
「んー、それこそ朝話しかけてる瑞穂ちゃんの方が知ってるんじゃないかと思うんだけど。私も今日初めて話したくらいだし」
「へ、へえ。で、どんなだった?」
「そうだねぇ。目つきはよくないって前から思ってたけど、かなり親切? 私ガスバーナーの使い方とか忘れてたんだけどすぐに気づいてわざわざ教えてくれたんだよね」
「そ、そう」
どうやら彼はいい人だったようです。それもかなり気の利く人みたいですし。
「それにしても急にそんなこと聞くなんて変なの。もしかして瑞穂ちゃん」
彼女はニヤニヤしながら私の方を見ている。
「遠藤君のことが気になっちゃったの?」
「え? いやまあそりゃ、気になるから聞いたんだけど」
「いやいやそうじゃなくって。はあ、まあいいか。それじゃあ私部活行くね」
「あ、うん。がんばってね」
私は思い違いをしていたようです。遠藤君は本当に朝が弱いだけなんですね。はあ、このままではなんだか後味が悪いですね……。
以前中学校でも生徒会やいろんなことに挑戦してきたので、今回も自ら率先してこの役を引き受けました。ですが最近ちょっと気になっていることがありまして。
というのも、うちのクラスの一人の生徒がまだ学校が始まって一か月も経っていないのに、もう9回も遅刻をしているんです。その都度注意をしてはいるのですが彼の目つきは悪く、何度注意しても反省しているようには見えません。一応返事はしてくれるのですが声はなんだか棘があるようです。別に不良だとか怖いとか、そういった印象があるわけではありませんが。
そう思っているうちに今日も彼は遅刻してきてしまいました。また注意に行くべきか、そろそろ諦めるべきか、いえ、弱気になってはいけませんね。連絡事項を聞く相手もいなさそうですし、注意がてらに教えてあげましょう。
「遠藤君、今日も遅刻ですか? 何度言ったら改めてくれるんです? 朝が弱いとはいえ、どうにかやりようがあるんじゃないんですか?」
「はあ、すみません」
いつもこれなんですよね。本当に聞いているんでしょうか。
「はあ、すみません。じゃないですよ! これで何度目だと思ってるんですか。まだ一か月も経ってないのに十回も遅刻してるんですよ! さすがにあなたにとってもまずいでしょうそれに―――聞いてるんですか?」
「はい、はい、聞いてます」
やっぱり少しも反省してなさそう。
「そういった態度も改めてくださいね」
「はい」
「……はあ、まったく反省しているように見えませんよ。まあいいです。それで今日の連絡なのですが、5限目は教室移動ですから早めに移動するようにお願いします」
「分かりました」
どうやらこれは本当にわかっているらしいですね。それでは連絡を切り上げて授業の準備をすることにしましょう。
友達と弁当を食べた後、昼休みも終わりに近づいて教室にも人が集まってきています。しかしこの後は午前中の話の通り移動教室ですので、私が呼びかけを行いたいと思います。
「皆、移動教室だから少し早めに出てくださいね」
教室からはみんなの返事がばらばらに聞こえてきます。中学校までと違いみんな言うことをしっかり聞いてくれるから本当に助かりますね。
だんだんと教室内から人が出始めてから今気づいたというように動き始める人もいます。読書に集中してると周りの音が聞こえなくなったりする経験が私にもありますが、さっきの声で聞こえていなかったのか、と少ししょんぼりしてしまいます。
それはさておき、皆が移動してから見つけたのですが、先ほど男子が固まっていた場所にゴミが落ちていますね。皆が出てから拾いましょうか。
そう思っていた矢先、一人の生徒がゴミを拾い正しい場所に捨ててくれました。いやーこのクラスにもいい人がいるんですね。なんて思いながらふと、あることに気づいたのです。ゴミを拾ってくれたのは彼、遠藤君だったのです。
いやいやいやいやちょっと待って、いやだって遠藤君だよ? 何とも言えない態度で反省しない、せっかく私が注意してあげているのに聞き流す、あの遠藤君だよ?
見た目だけならともかく態度が失礼なあの遠藤君がそんな親切心を持っているわけがないじゃないですかー。なんだ私ったら疲れてるのかな。今日は早めに寝るようにしようっと。
移動教室の先は理科室、今日は化学の炎色反応の実験をするそうで、みんなガスバーナーなどの準備をしています。こういう時にいっせいに動くと意外と危ないので、みんなが動くようなら私は座っておこうかなとどうでもいいことを考えながらボーっとしていました。
準備の間時間を持て余していると、自然と私は先ほど見た信じられない光景を思い出し、思わず彼の方を見てしまいました。
て、テキパキと準備をしている、ですって!
いや待て私、さすがにそれは彼に失礼というものだ。いくら彼が目つきが悪く、人の注意を聞かず、何度も遅刻して、やる気がない態度で先生の注意を受け流す生徒であっても、ただ単に化学が好きなだけってことも考えられるじゃないか。どうせすぐボロが出るに決まっている。
それにこれは班活動だ。一人で勝手に盛り上がっているだけではまったく意味がないのである。
ほらその証拠に、班員を手伝って教えて、い、る……!?
か、彼は協調性がない生徒ではなかったというの? それじゃあ今まで私がしていたことはただのお節介で、連絡事項を聞く相手もいないなんて言うのは私の勝手な思い込みで、それに加えて勝手に決めつけて私は……。
「え? 遠藤君がどんな人かって、急にどうしたの瑞穂ちゃん」
放課後、私は彼と席の近い友達に話を聞いてみることにしました。
「い、いやー、その、彼ってよく遅刻するじゃない? それでどんな人なのかなって」
「んー、それこそ朝話しかけてる瑞穂ちゃんの方が知ってるんじゃないかと思うんだけど。私も今日初めて話したくらいだし」
「へ、へえ。で、どんなだった?」
「そうだねぇ。目つきはよくないって前から思ってたけど、かなり親切? 私ガスバーナーの使い方とか忘れてたんだけどすぐに気づいてわざわざ教えてくれたんだよね」
「そ、そう」
どうやら彼はいい人だったようです。それもかなり気の利く人みたいですし。
「それにしても急にそんなこと聞くなんて変なの。もしかして瑞穂ちゃん」
彼女はニヤニヤしながら私の方を見ている。
「遠藤君のことが気になっちゃったの?」
「え? いやまあそりゃ、気になるから聞いたんだけど」
「いやいやそうじゃなくって。はあ、まあいいか。それじゃあ私部活行くね」
「あ、うん。がんばってね」
私は思い違いをしていたようです。遠藤君は本当に朝が弱いだけなんですね。はあ、このままではなんだか後味が悪いですね……。
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