平和への使者

Daisaku

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遺跡の発掘

170話 秘匿情報と誓約

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「うぉ~」

大平まみが最新の技術を使い、3Dの立体画像で王宮の会った場所や建物、そして、どのような経緯でここに王宮ができたか、信じられない様な話を次から次へと説明していった。勝畑教授は大平まみに会ってすぐに、若くて生意気な小娘が他の優秀な研究者から盗んだ知識ではないかとちょっとでも疑った自分がはずかしくてたまらなかった。なぜなら、大平リーダーは誰もが知らないとういうか、想像を絶する情報やそれを裏付ける古文書を写真やデータで集めており、ここまでされたら、この大平リーダーを疑うどころか、こんなことができる人間はおそらく日本にはいないだろうと思った。
特に神社やその周辺の方から、どうやって、こんな門外不出の品物や古文書を見せて貰えたか聞くと笑顔で

「私はみなさんと違ってプライドとか役職や地位も名誉もない人間ですから、情報を得る為には、土下座だろうが、使い走りだろうが、信頼を得る為には何でもやりましたから、だから、しばらくすると、神社の宮司さんや地域の有力者の方など、お1人に認められるとそこにいる方達は皆、繋がっている仲間だから、芋づる式に色々な物を見せてくれるようになるんです。凄い時には数百年開けた事が無い不思議な品物も出してくれた事もありますよ~。でも、今回の遺跡発掘とは関係ありませんから、みなさんには見せませんけど~、アハハハ」

勝畑教授や松本研究員そしてここに集まった遺跡発掘のスペシャリスト達は大平まみの自分のほしい情報のためなら、何でもできるこの行動のすごさに感服して、自分達が本気で取り組んでいる研究がいかに中途半端だったのか打ちのめされた気持ちで一杯になった。

「リーダー、全く、この日本にはこれほど門外不出になっている物があるんですね」

「やだ、私の資料を勝手に見ないで下さい」

「すみません。どうしても見たくなってしまいまい、申し訳ありません」

松本は自分より20歳は下のまみに深々と頭を下げた。

「それでは、みなさん、今、説明した通り、各ブロックに分かれて頂上部にある王宮の発掘を始めます」

大平まみは一生懸命に発掘箇所やその方法を時間をかけて無事に説明ができてほっとした。そして勝畑教授が立ち上がり

「よ~し、みんなこれから、しばらくの間、協力してがんばっていこう」

皆が立ち上がり、到着早々発掘の準備をしようとした時に軍服を着た4人の外国軍人と
その後から、同じく40歳すぎの外国人2名、ミーティングルームに突然入って来た。そしてその指揮官らしき男がなれない日本語で

「突然、すみません。皆さん、もう一度席に座ってください。これから重要なお話があります」

突然入って来た軍人を葉子やまみが見て驚き、

「みんな!どうしたの急に連絡もなしに日本に来るなんて」

葉子とまみは喜んだ様子で軍人達を見た。また、その軍人達も葉子達を見て笑顔であいさつをした。

「ボンジュールヨウコ、マミ、元気にしてたかい」

勝畑教授をはじめ、まみの助手もいったいこの人達は誰なんだという表情で突然室内に入ってきた軍人達を見た。

「誰だ!君達はここは軍人が来るようなところではない。大平さんこれはいったいどういことなんですか」

急にわけのわからない軍人が来た事でミーティングルームに動揺が走った。

「お静かにしてください。我々は松田マツさんに許可をもらってここに来ています。それと私達はフランス治安情報局の人間です。決して怪しい者ではありません」

葉子は指揮官のカミーユ大尉に

「大尉どうしたんですか。急にこんなところまで来て」

「連絡しなくて悪かったなヨウコ、連絡をしようとは思ったんだけど、今さっき、フランスを出たら、すぐに着いてしまったものだから」

葉子は何を訳の分からないこと言っているのかと思い、

「そんなすぐに着かないでしょ。ユウキさんがいないのに」

そばにいた50歳すぎの男が葉子に近づいてきて

「ヨウコ久しぶりだね」

「アダム!あなた、今までどこにいたの?」

「アハハハ、色々と後始末や片付けが多くてね。やっと落ち着いたと思ったら、あの事件のことを知ってね。僕の宇宙船でここまで来たんだ」

「宇宙船?」

「そうだ。もう1万年以上、この星の周回軌道上にあったものだ。イブやベータのおかげで通信がとれるようになり、回収することができたんだ。あまり大きな宇宙船ではないのだが、この地球の飛行機に比べれば100倍ぐらいはは早く飛べるからね」

カミーユ大尉がアダムを睨んで

「こら、アダム、部外者がここにはたくさんいるんだ。そういう話は僕の話が済んでからにしてくれ、なんのために、秘匿情報に関する誓約書を持ってきたと思っているんだ」

「ごめん、ごめん、そういう物がここでは必要だったな」

葉子はカミーユ大尉に

「あの大尉、この誓約書って、いつものやつですよね」

「そうだけど」

「それなら、松田マツの孫であり、今回のプロジェクトのサポート役でもある私から話した方がいいと思うんですけど、失礼ですけど大尉はいつも、余計な事を話して、もめごとを作るのがお上手ですからね」

隣にいた他の軍人が葉子の話を聞いてクスクスと笑っていた。葉子は発掘隊の20人に向けて話をするため、前に出て大きい声で

「みなさん、急に部外者が入ってきて、申し訳ありません。大平リーダーに変わり私からご説明させていただきます。まず、みなさんはなぜ、この遺跡発掘がこれだけ急いで行うことや、また、松田グループのみが、この遺跡発掘に莫大な費用を負担していることなど、疑問に思っている方も多いと思います。それは、今、こちらに来られた、治安情報局の局長とその部下、そして元アメリカ合衆国大統領レナード氏を発見するためなのです」

勝畑教授をはじめ、訳のわからないことを言っている松田葉子に

「ちょっと待ってくださいよ。葉子さん、遺跡発掘とその人達の発見とどうつながるんですか?たしか、レナード元大統領はこの間アメリカで襲撃され、亡くなったはずでしょ」

ここに集まった発掘隊も訳のわからないこと言っている葉子に

「教授のいう通りですよ。そんなことを言われても困りますよ。我々は遺跡発掘のためにここに来ているんだから」

「すみません。これから順を追ってお話ししますが、これ以上は秘匿情報のため、みなさんにはフランス政府が作成しました、この誓約書を読んでサインをいただいてからでないとお話しすることができません。一応、言っておきますが、この誓約書はフランスで作成されたものですが、日本を含む主要国でも有効なものです。誓約書にサインされ、これから話す秘匿情報をもし、外部に漏らした場合、国家反逆罪として罪に問われ、状況によっては一生刑務所から出ることはできなくなります。もちろん、情報を知ってしまった、家族や知人などもその対象になります」

ミーティングルームはその話を聞いた途端、静まりかえってしまった。そんな時、大平まみが

「あの~私もその誓約書サインしたんですけど、私はサインをして良かったと思いました。なぜなら、その秘匿情報は私達、人類が知りえない、想像を絶する内容だからです。しかも、こんなチャンスを与えられるのは世界でもごくわずかな人達だけです。
別に無理強いはしませんが、考古学を志す者なら絶対にサインをするべきです」

発掘隊の一人が手を挙げて質問をしてきた。

「この誓約書にサインしたら、外部には漏らせないんですよね」

「はい、そうです」

「でも、それって、民主主義に反することではないのですか。人類は皆、平等なのに、一部の者だけがこんな情報を知っているなんて、ましてや、それを漏らしたら、一生刑務所だなんて、おかしいと思うんですけど」

「そうですね。おっしゃる通りだと思います。ですが、この情報を漏らしたことで、人類は急激な科学進歩を遂げ、その情報をすぐに利用する一部の賢い科学者や企業が恐るべき兵器を作り、この人類をすぐに消滅させることもできるようになります。いや、そのつもりがなくても、二次的な副作用で環境を破壊してしまうこともあります。
あなたは、人類が滅亡しても、今、おっしゃった意見が正しいと言えますか。情報は一度漏らしたら、取り返しがつきません。いかがですか?」

「それは、可能性ですよね。絶対そうなるとは限らないと思いますけど」

その話を聞いていたサターン人アダムが大声で笑い出した。

「アハハハ、あなたみたいな人、私はたくさん見てきたよ。そして、そんな平和論を唱えていて、本当に大変なことが起きたら、すぐにどこかに逃げてかくれてしまい、全く責任を取らないクズを、自分は言いたいことを言うが責任は取らない、この地球で言えば、小さな子供と一緒だね。親をバカにして、自分はすごいんだなんて言って、結局なにもできない子供と、それならば、あなたは、この情報を世界に拡散して、何か起きたら全責任を取って世界を守ってくれるのか、今ここで話している葉子はその責任を果たすためにこうやって秘匿情報の制限をしているんだ」

勝畑教授はしばらく考えて、皆に話をはじめた。

「みんな、どうだろう。誓約書にサインをしても、ここにいる関係者以外に話さなければいいんだ。いつも一緒に仕事をしている仲間だし、間違えて他人に話す危険も少ないだろうから、せっかくのチャンスだ、あの大平リーダーも進めていることだし」

「そうですね。我々は教授の発掘隊です。教授がそうしろと言われれば、サインをしますよ。別に秘密を話さなければ、何もされないんですからね」

「それでは、誓約書を渡しますので、よく読んでサインをしてください。それとみなさんは、各ブロックに分かれ、それぞれがブロックの班長になられる方です。作業員など関係する者達を監視して、何かあれば秘密が漏れないようにしてください」

皆、疑心暗鬼な気持ちではあったが、勝畑教授の進めもあり、全員誓約書にサインをした。
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