平和への使者

Daisaku

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倭国大乱

142話 倭の国の役人

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「うわあ~」

わけのわからない、生き物がものすごい速さで動き回り、盗賊は次から次へと空高く飛ばされていった。その様子を見ていた盗賊の頭は、おびえるように、走って村から逃げ出そうとした。その目の前に、マリが急に現れた。

「もう、あなただけよ。降参しなさい」

盗賊の頭は辺りを見渡したら、20人近くいた配下の者は、マリに倒され、全員気絶していた。

「お前は、何者だ」

不思議な服を着たマリに盗賊は尋ねた。

「盗賊のお頭さん、降参しないなら、あなたも気絶してもらうわよ」

「ウワハハ、お前はバカか、あいつらに何を聞いたか知らんが、我々は盗賊ではないぞ」

「何を、言ってるのよ。どう見たって盗賊じゃない。村人をしばって、娘たちを自分たちのいいように使って、それに、あなたとの争いであんなに村の人が死んでいるじゃない」

「当たり前だ。倭の国に納め物を出さずに、いきなり、襲いかかってきたのは、この村人達だ。お前も何者か知らんが、こいつらにいいように利用されてるのがわからんのか」

マリは何がなんだかわからなくなり、

「びりゃねじいさ~ん、こっちに来て」

遠くで、皆の無事を確認していたびりゃねじいさんがマリの声に反応して、すぐに走って近づいてきた。

「何ですか。神人」

「あの~この人が盗人などではないと言ってますけど」

びりゃねじいさんは盗賊の頭をにらんで

「お前達は盗賊と同じだろうが、我々が作ったものを全部出せなど言うやつらが、そんなことをされたら、村人は冬を越せないだろうが」

マリは状況がよく呑み込めず、もう一度、盗賊の頭に尋ねた。

「あの~盗賊のお頭さん、あなたは誰なんですか?」

「ワレは盗賊の頭などではない、倭の国第4の護り人配下納め物取締り、やちゃりだ」

「納め物取締り?」

「そうだ、王様への納め物を出すことに抵抗し、いきなり、我に襲いかかってきたから、返り討ちにしたまでのこと。つまり、ここの村人は国に背き、戦いを仕掛けてきた犯罪人ということだ。だから、全員捕まえて、閉じ込めていたのだ」

びりゃねは、それを聞いて興奮して

「何を言っている、いつも急に来て、根こそぎ、我々の食物から、作り物を取り上げ、今まで、何人、村人が飢えで死んだか、もう、これ以上、物を取っていくだけで、なにもしてくれない、お前達の言うことなんて聞けるか!」

マリは盗賊が盗賊でないこと、村人がいきなり襲われたのではなく、先に襲ったなど
どちらの言い分が正しいのかがわからなくなってきた。そして、マリが困っているところに、後ろから声がした。

「それならば、その第4の護り人をここに呼んできてくれ、部下のあなたでは話にならない。それまで、この20人ほどの部下は人質として預からせてもらおう」

マリはその声にうれしそうに反応して、振り向いた。

「ユウキ、みんな!」

ユウキをはじめ、イブ、レナード、ドニーズがマリを見て、笑顔で手を振っていた。

「みんな、無事に目覚めたのね。よかった~」

びりゃねじいさんは、その不思議な4人と一緒にいる孫のひみゃこやたっきしを見て
とてもうれしそうに

「お前達、無事だったのか」

そう言って、二人を強く抱きしめた。

「うん、この人達が助けてくれたんだ」

「そうか、よかったのお~」

納め物取締りやちゃりは、大声を出して

「石森の村人よ。倭の国に逆らう罪人として、これから、第4の護り人にお越しいただく、心して、待て、お前達の助っ人など、あの方の足元にも及ばないことを思い知るがよい」

捨て台詞をはいて、やちゃりは森の奥に歩いて消えて行った。イブはそれを聞いて

「あいつは何を言っている?マリに勝てるわけないだろ」

ユウキは嫌な予感がしたが、何かあっても、自分やイブがいるのだから、問題はないだろうと思った。

「マリ!勝手に単独行動をしたらダメだろ!」

「だって、みんな寝ていたし、ひみゃこの村が襲われていると聞いたら、ほっておけないじゃない」

「あのね、ここは過去の時代なんだよ。こんなに過去を変えるようなことをしたら、僕たちのいた世界は消えてしまうんだよ」

マリは何を言っているか理解できずに

「そんなの知らないわ。困っている人がいるから、助ける、今も昔も私は変わらないから」

マリは、イブの横に立っている30歳ぐらいの男性を見て驚いたように

「ねえ、イブそこにいる男の人だれ?」

「あ~こいつか、私の部下、ベータワンだ」

「ベータワン?」

「そうだ、簡単にいうと情報局にいたベータ22の兄貴分だ。だが、こいつはあらゆる面で人間そっくりに作られている。そして、ベータアンドロイドを統括する司令官でもある。とても優秀だぞ」

「ふ~ん、過去の時代だから、月から来ることができたの?」

ベータワンは第一執政官になれなれしく話すマリを睨んで

「おい、第一執政官を名前で呼び、それにその偉そうな態度なんだ?マリとか言ったな、お前はもっと、礼節をわきまえろ!」

急に怒鳴るような声をベータワンは出した。
それを聞いたイブが

「ばかもの!私はこのマリに命を救われ、そして、正義の心とその強さに魅了され、今ではこの方の従者なのだ。礼儀をわきまえるのはお前だベータワン!」

ベータワンは驚き、急に膝を落とし、手を広げて

「マリ、大変失礼いたしました。第一執政官のマスターであれば、私もあなたの部下となります。そして、まだ月にいるベータ2から50までのベータシステムに帰属する物もすべておおせのままに起動するように再プログラムいたします」

「別にそこまでしなくても大丈夫ですよ。あなた達は今までとおり、イブに従ってもらえば」

「いえ、また、このような失礼な態度を取らないためにも、再プログラミングいたします」

イブはベータワンに

「それでいい、それとベータワン、しばらくこの星に滞在する。我ら5人の住まいをここに用意してくれるか。木でも、土でもよいが、建物や施設をこの時代の原始人から見えないようにしてくれ」

「承知しました。では、村からの距離も考え、先ほどの山の上に外観を岩で囲ったように見せ、5人の住居を設置します。6時間ほど、時間をいただきます」

「わかった、すぐにかかってくれ」

「承知しました」

そういった途端、ベータワンの宇宙船が石森の村に赤い光を放って飛んできて、ベータワンはその中に入り、また、月に向かって赤い光を放ち、ものすごい勢いで飛んで行った。マリは不思議そうに

「イブ、家を造るの?」

「そうだ、なにしろ、ここは原始民族が住む時代、この村での生活は我々には厳しすぎるだろ、寝るところもそうだが、オフロや、トイレなど衣食住を整えないとな」

マリはうれしそうに

「サターンの科学技術ってすごいんだね。6時間で家ができるなんて」

「そうだろ、そうだろ、どこかのうんちくしか言わない、宇宙人とは大違いだろ」

イブはユウキを見てニヤニヤしたが、そんなイブをユウキは無視した。

「イブさんはユウキさんのことが大嫌いとよく言ってますが、その新しい建物にユウキさんの居場所を造ってあげるんですね」

「は?当たり前だ。私は、対等な条件で意見のぶつかり合いはするが、決して意地悪な低レベルの者ではない、マスターであるマリが信頼している者をのけ者のように扱うことは絶対にしない。それはマリが望むことだろうから」

マリはうれしそうに

「イブ、ありがとう。ほら、ユウキも家をイブが用意してくれるんだから、お礼を言わなきゃ」

ユウキはイブと反対側を向いて、小さい声でしぶしぶ『ありがとう』と言った。

イブはその声を聞いて、とても、満足そうだった。
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