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倭国大乱
139話 石森の村
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「ねえ、ひみゃこ、村はまだなの、もう結構歩いたわよ」
「もうすぐだ」
「さっきも、そう言ったわよ」
ひみゃこは笑いながらマリを見て
「マリ、あの山の向こうがオイラの村、石森だ。この獣道を歩いて行けばすぐだ」
「わかったわ、それじゃあ、ちょっと見てくるわ、そうだ、ひみゃこの親の名前はなんて言うの?」
「おとうはもう死んじまったけんど、おかあはなちゃね、おじいはびりゃねだ」
「なんかむずかしい名前ね、え~と、なちゃねさんと、びりゃねさんね。じゃあここでいいわ」
ひみゃこは心配そうにマリを見て、
「オイラはこの辺りのこと詳しいけど、マリはさっきいた場所に自分で戻れる?」
「フフフ、大丈夫よ。ちゃんと、目印を付けてきたから、戻れるわ、わたしもおばあちゃんにサバイバル訓練を受けて、数か月、森で一人で暮らしたことだってあるんだから」
ひみゃこは、また、わけのわからんことを言っているなと思い、首をかしげ、
「また、なんかよ~わからんけど、マリ気を付けて」
先ほどの森から、おそらく5キロほど歩いたところで、マリはひみゃこと別れた。
村まではあと2キロほどで着きそうだと思い、周辺を警戒しながら、マリは歩いて行った。
そして、深い森を抜け小山の頂上まできたら、下の方にワラでできた家が広がっていた。
そこは20ほどの竪穴式住居のような家や、高床式の蔵のような建物、25mはある、大きな集会所のようなワラでできた建物もあった。物音をたてず、気配を消して、マリは村周辺を偵察した。そして、村の真ん中で大声でさわぐ、盗賊達がいた。
「ウワハハ、おい、早く、酒を持ってこい」
「はい」
村の娘が慌てて、酒を持ってきたら
「おい、いつまでこんな山ぶどう酒を飲ませるんだ?」
「あの蔵には口噛みの酒があるんだろ、持ってこい」
娘は困った顔をして
「あれは、神聖なお酒です。勝手には持ってこれません」
「なんだ~村の仲間が死んでもいいのか。早くもってこい」
「巫女のひみゃこがいないので、どこにしまったか、わからないんです」
「あ~、だれだそれは、だったらそいつを連れてこい」
「今、でかけていていないのです」
盗賊の頭はその娘を蹴飛ばし、
「おい、お前ら、あの蔵から、酒をもってこい。片っ端から荷物を出せば、そのうちでてくるだろう」
「わかりやした」
手下の男たちが数人蔵に入り、次から次へと蔵の荷物を外に出した。それを見ていた娘は大きい声で泣きながら
「やめてください。村のみんなが、長い時間をかけて作った大切な物ばかりです」
盗賊の頭は娘をにらみ
「まあ、さわぐな、夜になったら、かわいがってやるから、いまはとにかく酒だ」
そんな様子をマリは村の廻りを見ながら偵察していた。盗賊は20人程度で、銃などの武器もなく、弓矢や鉄か銅かわからないが短剣のような物をぶらさげている物がいるくらいで、特に危険な武器は携帯していないようだった。しかし、若い娘は5人ほど、盗賊と一緒にいたが、村の人間が一人も見当たらなかったので、もう少し、偵察を続けた。そして、村の中心にある大きなワラでできた家に盗賊が数名、見張りをしているのを見つけた。そして、その建物の裏に近づき、耳をすました。
「はあ~とんでもないことになったのお~、こんな盗賊が野放しになっているとは、今の王様になってから、災い続きだな」
「倭の30の国をまとめる王様がなにもしてくださらないし、この国は阿波からは、遠いところで、国と言っても、5つの村の集まりでだれも、守ってくれる人もおらんしな」
「まったく、こんなところにまで盗賊が来るようになっちまったな」
「昔は、倭の国の守り人がぎょうさん追って、助けてくれたが、今の王様になった途端、みんな、いなくなっちまったからな」
「びりゃねじいよ。盗賊に、あの蔵の物を全部取られたら、村の者は今度の冬をこせないぞ」
「そうだな。なんとかして、ここから出て、あいつらを追い出さないとな」
家の裏でその様子を聞いていたマリは家の外から小さい声で
「びりゃねおじいさんですか?聞こえますか?」
びりゃねじいは建物の外から聞こえてくる声に驚いて
「誰だ?」
「ひみゃこに頼まれて、村の様子を見に来たマリです」
「ひみゃこが?あの子は無事か?」
「はい、無事ですよ。弟のたっきしもケガをしていますが無事です」
「そうか、2人共、無事か良かった。ひみゃこはこの村の巫女で特別な子だからな」
「マリとか言ったな、女がこんなところに来たら危ない、早くここから逃げたほうがいいぞ」
「いいえ、皆さんを助けます。今から、私が外の見張りを倒します。中に盗賊はいますか?」
「3人、刀を持っておる」
「そうですか。皆さんは動くことはできますか?」
「無理じゃ、全員縄で縛られ身動きできん。村の人はそこにどれくらいいますか?」
「40人ぐらいじゃ、本当はあと10人いたが、盗賊に抵抗して殺されてしまった」
マリは村の地形や家の配置、盗賊の動きを頭の中で整理して、戦術を考えた。そして
「びりゃねおじいさん、これから、少し大声を出して、見張りの気を引いてもらえますか」
「おう、かまわんが、大声を出すくらいならできるぞ」
「では、騒いでください。すぐに助けに行きますから」
マリにいわれたぴりゃねはそばにいる村の人達と大声で騒ぎ出した。
「お~い、縄が痛い、早くほどいてくれ~」
「おれは小便がしてえ~」
「飯をくわせろ~はらぺこだ~」
村の人たちはびりゃねじいさんに呼応するようにみんなで騒ぎ出した。盗賊の見張りは
急に騒ぎ出した、村人に驚き
「お前ら静かにしろ、村の娘達がどうなっても知らんぞ」
3人の見張りは出入り口に背を向け、村人の方に気を取られた。その様子を外から見ていたマリは突撃して見張りの急所を突き、一瞬で気絶させ、盗賊3人は倒れた。そして、たおれた盗賊の後ろから出入り口のあかりがさし、まるで、神様のような服装で現われたマリを村人たちが見て
「天照す神人だ~」
そう言って、マリを見て急に頭を下げて拝みだした。それを見ていたマリは驚いて
「皆さん、拝んでいる場合ではないですよ」
マリは、見張りから短剣を取って、村人の縄を切ろうとしたが
「神人、この縄は大事な物だ、切らないで、ほどいてくだせ~」
マリは言われた通り、縄を切らないで、一人ずつ、縄をほどいていった。
「あの~村の娘達をなんとか、こちらに引き込みたいのですが、ぴりゃねおじいさん、お願いできますか」
「任せておけ、すぐに盗賊から遠ざけてやる」
「それでは任せましたよ。娘達を引き寄せたら、あそこの銅の鏡を思い切りたたいてください」
「わかった、やってみる」
そう話してすぐに娘たちにたくみに声を掛け、集会所の建物に5人全員呼び寄せることができた。
そして銅鏡を思い切りたたいた。
「ば~ん、ば~ん」
その音を聞いたマリはニコっと笑って
「よ~し、退治するぞ!」
そう言って盗賊達に突撃を開始した。
「もうすぐだ」
「さっきも、そう言ったわよ」
ひみゃこは笑いながらマリを見て
「マリ、あの山の向こうがオイラの村、石森だ。この獣道を歩いて行けばすぐだ」
「わかったわ、それじゃあ、ちょっと見てくるわ、そうだ、ひみゃこの親の名前はなんて言うの?」
「おとうはもう死んじまったけんど、おかあはなちゃね、おじいはびりゃねだ」
「なんかむずかしい名前ね、え~と、なちゃねさんと、びりゃねさんね。じゃあここでいいわ」
ひみゃこは心配そうにマリを見て、
「オイラはこの辺りのこと詳しいけど、マリはさっきいた場所に自分で戻れる?」
「フフフ、大丈夫よ。ちゃんと、目印を付けてきたから、戻れるわ、わたしもおばあちゃんにサバイバル訓練を受けて、数か月、森で一人で暮らしたことだってあるんだから」
ひみゃこは、また、わけのわからんことを言っているなと思い、首をかしげ、
「また、なんかよ~わからんけど、マリ気を付けて」
先ほどの森から、おそらく5キロほど歩いたところで、マリはひみゃこと別れた。
村まではあと2キロほどで着きそうだと思い、周辺を警戒しながら、マリは歩いて行った。
そして、深い森を抜け小山の頂上まできたら、下の方にワラでできた家が広がっていた。
そこは20ほどの竪穴式住居のような家や、高床式の蔵のような建物、25mはある、大きな集会所のようなワラでできた建物もあった。物音をたてず、気配を消して、マリは村周辺を偵察した。そして、村の真ん中で大声でさわぐ、盗賊達がいた。
「ウワハハ、おい、早く、酒を持ってこい」
「はい」
村の娘が慌てて、酒を持ってきたら
「おい、いつまでこんな山ぶどう酒を飲ませるんだ?」
「あの蔵には口噛みの酒があるんだろ、持ってこい」
娘は困った顔をして
「あれは、神聖なお酒です。勝手には持ってこれません」
「なんだ~村の仲間が死んでもいいのか。早くもってこい」
「巫女のひみゃこがいないので、どこにしまったか、わからないんです」
「あ~、だれだそれは、だったらそいつを連れてこい」
「今、でかけていていないのです」
盗賊の頭はその娘を蹴飛ばし、
「おい、お前ら、あの蔵から、酒をもってこい。片っ端から荷物を出せば、そのうちでてくるだろう」
「わかりやした」
手下の男たちが数人蔵に入り、次から次へと蔵の荷物を外に出した。それを見ていた娘は大きい声で泣きながら
「やめてください。村のみんなが、長い時間をかけて作った大切な物ばかりです」
盗賊の頭は娘をにらみ
「まあ、さわぐな、夜になったら、かわいがってやるから、いまはとにかく酒だ」
そんな様子をマリは村の廻りを見ながら偵察していた。盗賊は20人程度で、銃などの武器もなく、弓矢や鉄か銅かわからないが短剣のような物をぶらさげている物がいるくらいで、特に危険な武器は携帯していないようだった。しかし、若い娘は5人ほど、盗賊と一緒にいたが、村の人間が一人も見当たらなかったので、もう少し、偵察を続けた。そして、村の中心にある大きなワラでできた家に盗賊が数名、見張りをしているのを見つけた。そして、その建物の裏に近づき、耳をすました。
「はあ~とんでもないことになったのお~、こんな盗賊が野放しになっているとは、今の王様になってから、災い続きだな」
「倭の30の国をまとめる王様がなにもしてくださらないし、この国は阿波からは、遠いところで、国と言っても、5つの村の集まりでだれも、守ってくれる人もおらんしな」
「まったく、こんなところにまで盗賊が来るようになっちまったな」
「昔は、倭の国の守り人がぎょうさん追って、助けてくれたが、今の王様になった途端、みんな、いなくなっちまったからな」
「びりゃねじいよ。盗賊に、あの蔵の物を全部取られたら、村の者は今度の冬をこせないぞ」
「そうだな。なんとかして、ここから出て、あいつらを追い出さないとな」
家の裏でその様子を聞いていたマリは家の外から小さい声で
「びりゃねおじいさんですか?聞こえますか?」
びりゃねじいは建物の外から聞こえてくる声に驚いて
「誰だ?」
「ひみゃこに頼まれて、村の様子を見に来たマリです」
「ひみゃこが?あの子は無事か?」
「はい、無事ですよ。弟のたっきしもケガをしていますが無事です」
「そうか、2人共、無事か良かった。ひみゃこはこの村の巫女で特別な子だからな」
「マリとか言ったな、女がこんなところに来たら危ない、早くここから逃げたほうがいいぞ」
「いいえ、皆さんを助けます。今から、私が外の見張りを倒します。中に盗賊はいますか?」
「3人、刀を持っておる」
「そうですか。皆さんは動くことはできますか?」
「無理じゃ、全員縄で縛られ身動きできん。村の人はそこにどれくらいいますか?」
「40人ぐらいじゃ、本当はあと10人いたが、盗賊に抵抗して殺されてしまった」
マリは村の地形や家の配置、盗賊の動きを頭の中で整理して、戦術を考えた。そして
「びりゃねおじいさん、これから、少し大声を出して、見張りの気を引いてもらえますか」
「おう、かまわんが、大声を出すくらいならできるぞ」
「では、騒いでください。すぐに助けに行きますから」
マリにいわれたぴりゃねはそばにいる村の人達と大声で騒ぎ出した。
「お~い、縄が痛い、早くほどいてくれ~」
「おれは小便がしてえ~」
「飯をくわせろ~はらぺこだ~」
村の人たちはびりゃねじいさんに呼応するようにみんなで騒ぎ出した。盗賊の見張りは
急に騒ぎ出した、村人に驚き
「お前ら静かにしろ、村の娘達がどうなっても知らんぞ」
3人の見張りは出入り口に背を向け、村人の方に気を取られた。その様子を外から見ていたマリは突撃して見張りの急所を突き、一瞬で気絶させ、盗賊3人は倒れた。そして、たおれた盗賊の後ろから出入り口のあかりがさし、まるで、神様のような服装で現われたマリを村人たちが見て
「天照す神人だ~」
そう言って、マリを見て急に頭を下げて拝みだした。それを見ていたマリは驚いて
「皆さん、拝んでいる場合ではないですよ」
マリは、見張りから短剣を取って、村人の縄を切ろうとしたが
「神人、この縄は大事な物だ、切らないで、ほどいてくだせ~」
マリは言われた通り、縄を切らないで、一人ずつ、縄をほどいていった。
「あの~村の娘達をなんとか、こちらに引き込みたいのですが、ぴりゃねおじいさん、お願いできますか」
「任せておけ、すぐに盗賊から遠ざけてやる」
「それでは任せましたよ。娘達を引き寄せたら、あそこの銅の鏡を思い切りたたいてください」
「わかった、やってみる」
そう話してすぐに娘たちにたくみに声を掛け、集会所の建物に5人全員呼び寄せることができた。
そして銅鏡を思い切りたたいた。
「ば~ん、ば~ん」
その音を聞いたマリはニコっと笑って
「よ~し、退治するぞ!」
そう言って盗賊達に突撃を開始した。
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