平和への使者

Daisaku

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暗躍組織〈完結編〉

96話 伝説の英雄

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「誰だ!」

扉が吹き飛び、ほこりが立ち込める中、そこに少女が立っていた。
アルファ7はその少女をよ~く見て、震えだした。

「また、お前なのか、いつも、いつも、私の邪魔ばかりしやがって」

アルファ7は訳のわからないことを口走った。イブは助けに来てくれたマリの顔を見て、泣きながら、抱き着いた。

「マリ~、会いたかったよ。もうだめだと思って、名前を読んだら、本当に来てくれるんだもの」

マリは、ため息をついて

「だから、一緒に行くって、言ったでしょ」

「ごめんなさい・・・でも、よくここがわかったね?」

「ユウキがあなたのエネルギー波が急激になくなったので、危ないことを教えてくれて、飛んできたのよ」

「ありがとう、もう少しでこいつに殺されるところだった」

アルファ7は妙に動揺してマリに

「なぜ、お前がここにいる、あれから70年は経っているんだ。とっくに老人か死んでいるはずだろ」

マリは首をかしげ

「あなたに会うのは初めてですけど」

「うそ言え、こんな力を持った人間がこの世に二人もいるわけないだろ!」

「何を言っているのか、わからないけど、イブは連れて帰るわよ」

「そうはさせない、伝説の英雄と言われた危険なお前をここから出すわけにいかない、そして、お前達、二人とも、抹殺してくれる」

マリはアルファ7の力を探ったが、人間ではないので、強さがよくわからなかった。

「いいわ、あなたと戦うわ」

「前回はお前にはかなわなかったが、私も同じ過ちは犯さない、でてこい、アルファ77!」

壁に埋め込まれたケースから、マリとそっくりな少女がでてきた。

「どうだ。70年前、お前のDNAを採取して、強化した、人間ベースクローンタイプのアンドロイド、アルファ77だ」

マリとイブは、マリとそっくりというか、見分けがつかないほど似ているアルファ77に驚いた。

「ねえ、わたしは15歳だから、70年前になんているわけないよ」

「うるさい、そんな話し信じられるか、アルファ77こいつらを抹殺しろ!」

ゆっくりと動き出したアルファ77はマリ達を見つめて、狙いを定めた途端

常人の目では追いかけることができない速さで攻撃してきた。イブは早すぎて、何もできず、そこに立っていることしかできなかった。

「バチン!バチン!」

ものすごい音がした。マリは蹴りや正拳を受け止め、交わしながら、防御した。
しかし、想像を絶する強さを前に押され気味だった。

「この程度の応戦は想定済みだ。これからが本番だぞ。アルファ77全開モードだ。
一気に片付けてしまえ」

アルファ77は力をためるポーズをした。まるで、松田松濤館流を操っているようだった。

マリも同じく、松田松濤館流を使い、全力を出せる力をためた。そして、全開の戦いがはじまった。

「ヒュン、ヒュン、バチッ」

とものすごいスピードでの移動と激しい衝撃音が飛び交った。
マリは、気功波も打ちながら、戦ったが相手も同じような攻撃をしてきた。
しばらくして、同等の力同志のぶつかり合いから、徐々にマリが押され始めた。
アルファ7は笑いながら

「ハハハ・・アルファ77の力は無限だ。疲れることはないからな。
これから、少しずつ、弱っていくお前を倒していくだけだ。そして、そのあとはイブを抹殺だ」

イブはあんなに強いマリが、こんな造られたクローンに負けるなんて我慢がならなかった。
私が死ぬのはかまわないけど、私の大好きなマリが傷つき、死んでしまうなんて、
サターン人として許せなかった。
そんな時、アルファ77の正拳がマリのお腹にモロに当たり、マリは
片膝をついて、うずくまってしまった。

「さあ、これで終わりだ、一気に殺してしまえ」

アルファ77がマリの背中に向けて尖った指先を立てて背中を突き刺そうとした時に
イブが飛び出してきた。

「グサッ!」

とても鈍く、やわらかい肉がさされたような、いやな音がした。

うずくまったマリの背中に覆いかぶさるようにイブが倒れた、
そして、マリの背中から生暖かい赤い血がたくさん垂れてきた。
マリは驚き

「イブ!」

マリはアルファ77に胸をさされたイブを見て、震えながら、体を支えた。

「良かった、マリ、ケガしなくて、私達のせいで、あなたを殺させるわけにいかないもの」

胸から血を流しながらも、震える体でイブは立ち上がり、

「サターン人としての誇りを忘れた愚か者よ。マリは絶対に殺させないわ。
変わりに私を殺しなさい。そして、これ以上の虐殺をしないことを命令します」

それを聞いたアルファ7は

「ハハハ、殺す順番が逆になったな、全く、最後の最後まで、偉そうなやつだったな。
お前が死んでしまえば、今ここで何を言おうが誰にも響かないのに、バカなやつだ」

その声を聞き、マリは怒りで頭が爆発しそうだった。
そして、また、おばあちゃんの教えが頭をよぎった。
日本の自宅そばの星空を一緒に見ていた時を

「マリ、おばあちゃんが応援すると、力が出るだろ」

「うん、応援してくれる人がいると力がわいてくる!」

「そうだろ、信じてくれる人がいると力でる。たくさんいるともっと力が出る。
そして、命を懸けてまで信じてくれる仲間がいれば、その命を守るために爆発的な力が出せるはずだよ。そして、その力を一点に集中させることで、信じられないことが起きるんだよ」

マリは、気をためて、拳に力をためて、気功波風雷を討ち放った。
一点に集められた力はその拳から信じられない速さでアルファ77に向かっていき、直撃した。
そして、はるか後方にすっ飛ばされた。

「バカな!」

アルファ77は衝撃波を受けて、体がケイレンして、こわれたオモチャのように動かなくなった。
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