平和への使者

Daisaku

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フランス治安情報局

70話 選ばれた理由

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「間に合ったね」

「早く局長室に行きましょう」

マリ達は急いで局長室に入った。そこにエマが立っていた。

「大将、遅いですよ。皆、2階のミーティングルームで待ってますよ」

「ごめんなさい。ぎりぎりになってしまって、エマさん、国防省からのファイル
打ち出してくれました?」

「はい、私の秘書に頼んで出してもらっています」

エマ相談役はこの局では役員待遇のため、専属の秘書兼運転手が付けられている。

「忙しいところ、すみませんが、大将、あとで相談があるんですけど、ミーティングが終わったら、よろしいですか」

「はい、何でも言ってください」

必要な資料を持って、マリ達は慌てて、2階のミーティングルームまで降りて行き、そこの扉を開けた時にちょうど、14時になった。マリ達が入った途端、皆、立ち上がった。

「それでは、ミーティングを始めます。皆さん着席してください」

皆、席に着いた。このミーティングルームは最大30人程度の人数が使うことができる。だが、まだ、会議テーブルとイスがあるぐらいで、まだ、備品などはなにも置いてない。

「それでは、今、ここにいるメンバーがこの治安情報局の関係者ということになります。まず、はじめに自己紹介をしたいのですが、その前に、この情報局は秘匿性の高い組織になります。
そのため、秘密を口外しないなどの国からの正式な誓約書に皆、サインしてもらいます。情報局役員であるエマ相談役から説明してもらいます」

エマは軽くマリのことを見て、説明に入った。

「それでは、今、皆の机の上に置いてある、誓約書を開いて確認してもらいたい。ここには局員でなく、日本警察や国土監視局の人間もいるが、ここに出入りする以上、全員に内容を理解してもらい、誓約書にサインをしてもらう。内容を見て、サインできないものは、すぐにここから退席してくれ。まあ、ここにいる者は、なぜ、このようなものにサインするのか、だいたいはわかっているとは思うが」

しばらくして、全員がサインをした。エマは少し笑いながら、

「ようこそ、フランス治安情報局へ、たった今から、ここにいる者はこの局の人間になった、
これから、よろしく頼む、それでは、知らないものも、いると思うから、この情報局の歴史やこれからの仕事内容を説明する、机の上にある資料はここで、見るだけで、持ち帰ることはできない」

皆は、かなり年配なのに、テキパキと話すエマを見て、少し驚いた様子で見て、話す内容を聞き漏らさないように集中した顔で、説明を聞いた。

「この情報局は、かつての大戦前に、設立された、フランスの中枢機関だった。しかし、大戦がはじまり、この国が占領されてからは、レジスタンスの集まる場所に変わってしまい、そして、仲間が次から次へと捕まり、処刑され、最後には20人程度のレジスタンスも全員逮捕され、有無を言わさず、処刑されることになり、最後の朝に、皆で神に祈りをささげていた時に男女3人が突然、目の前に現れ、たくさんの人を開放してくれた。
その後、この情報局を復活させ、大戦で、大敗していた国をみるみる、蘇らせ、1年もしないうちに大戦で勝利となり、フランスも今こうして、存在している。
世界も平和になり、50年ほど前に情報局は閉鎖となったが
私はその時の生き残りだ。
私は経験や実績に基づき、この大将に認められ、ここで相談役をやっている。そんな同志達のことを忘れないでほしい。
皆、これから、よろしく」

皆、エマの話を聞いて、驚いたのと、尊敬する気持ちが芽生え、しばらく声も出なかった。

「それでは、今後の仕事についてはユウキさんから説明してもらう」

ユウキがさきほど、エマの秘書からもらった資料を見て説明を始めた。

「それでは、手元にある資料の情報局職務資料を見てください。ここは名前の通り、治安と情報に関することが主な仕事になります。まず、治安ですが、現在、国内では多くのテロ事件や殺人事件、誘拐など、警察や国土監視局などが扱っていますが、ここに記載されている物はすべて、未解決事件になります。また、情報については、フランス国内にどれくらいのスパイが存在しているか、また、外国からの情報操作により、フランス国や企業がハッキングされ、さまざまな物や情報が流失したりしています。フランスでは、この中でこちらで解決できる物を選び、調査、確認して、結果を出してほしいということです。そこで、これから、この資料を15分ぐらい、読んでいただき、解決できそう、もしくは挑戦してみたい仕事を選んで、自己紹介と一緒に一人ずつ回答してください。そして、どの案件を選ぶかは最終的に局長に決めていただきます。それでは資料を見てください。隣の人と相談しても大丈夫ですよ」

カミーユ大尉達はいつも上官から一方的に仕事を押し付けられていて、いつも、この仕事は自分たちの力を発揮できないのではないかと何度も疑問に思ったことがあったため、今回の指示は、とても、効率的で、自分達の能力を最大限に発揮でき、なんだか、ワクワクしてきた。
15分が過ぎ、上官より、一人ずつ話し始めた。

「では、私はエマだ。ここでは役員として相談役をしている。私は、この老体だ。皆のように機敏に動けるわけでもないので、案件の選択は大将にすべて一任する」

「イブよ。私は、異星人で、その星では高貴な存在よ。馴れ馴れしくしないでよ。それと私も仕事はマリに一任するわ。それと、隣にいるベータは私の従者でアンドロイドよ。だから、学校に行けだの、親が心配するなど、変なことを吹き込まないで、特に、そこにいる軍人5人、
聞こえたかしら?」

5人はびっくりした顔で頷いた。

「ユウキ・タチバナです。僕もイブとは違う星から来た宇宙人です。平和への使者のサポートをしてます。平和への使者とは、僕の星で選ばれた、この地球ただ一人の人間で、この世界の人類を滅亡から防ぐことができるとされる救世主になります。マリは地球人の中で唯一の存在です。だから、いくら若いといっても、敬意を持って接してください。僕も仕事はマリに一任します」

カミーユ大尉達は、ユウキさんも異星人なのかと、とても驚いた。

「日本警察のマリ・トビシマの警護官、ヨウコ・マツダ警部補それと」

「タイチ・キサラギ警部補です。我々はここの局員ではないので、仕事の選択権はありません」

「国土監視局のクロード警部補です」

「同じく、ポーラ巡査部長です。地球外生命体イブの監視任務についています。ここのお仕事には関与しません」

「元アベル大臣事務官、アンドレ秘書兼運転手です。エマ相談役の専属です。私も、局の仕事は関与できません。よろしくお願いします」

「次は、カミーユ大尉からお願いします」

「はい、では私から、カミーユ大尉です。 歴史や言語が専門です。このチームの指揮官です」

「ダニエル中尉です。IT関係や機械工学専門です」
  
「ドニーズ中尉です。政治経済専門です」

「アンナ軍曹! 軍で体術の教官をしてました。その他に重火器の取扱いが専門です」

「ベルナール一等兵です。 このチームの補佐と物資等補給担当です」

5人の挨拶が終わった時にカミーユ大尉が

「我々、5人は過去の未解決事件よりも、現在進行形の未解決事件に着目しました。これからも被害がでる可能性があるからです。この資料によると、パリ市内で、若い女性に対して、ナイフで無差別に切りつける事件が発生してます。1年前から、月一度のペースで色々なところに出没してます。この犯人を逮捕しようと考えます。その他にもテロやハッカーによるフランスからのお金の流失など多々ありますが、まだ、ここは、設備も整っていない状況ですし、確実に解決できそうな事件から、対応していきたいと思います」

「わかりました。マリ、局長いかがですか?」

ユウキはマリを見つめた。

「そうですね。基本的にカミーユ大尉のチームしかここにはいませんから、その事件を担当してもらえますか」

「了解しました!」

「私の自己紹介がまだでしたね。私はマリ・トビシマ高校1年生です。この裏の住居棟にイブ・ユウキ・ベータ・葉子さん、如月さんと住んでいます。それと、この情報局の運営資金の管理や、政府との打ち合わせなどを皆さんが働きやすい環境を作るのが仕事です。私は平日の昼間は、ほとんど学校に行っていますので、この情報局はエマやカミーユ大尉のチームに大きな負担をかけるようになります。それと、私達は独立組織にした理由には世界の平和に重きをおいています。外国で緊急事態がおきれば、国外にも頻繁に行くようになりますので、臨機応変に対応願います」

「それでは、以上となりますが、他になにかありますか?」

カミーユ大尉が手を挙げて

「局長、ここは、PCなどインターネットや衛星受信、その他、調査分析に必要な機材など
全くありません。局長室なども含めてこの情報局全体です。また、仕事用車両、銃関係の装備品など、それで、ざっくりですが、ここに必要な物を記載しました。購入してもよろしいでしょうか?」

「はい、構いませんよ。一応、ユウキが明細をチェックしますけど、大尉が必要と思う物は揃えてください。もちろん、プライベートな私物はだめですよ」

「はい、わかっています。局長、おそらく、建物の防犯設備なんかもいれると、170万ユーロ(2億円)はかかると思います。大丈夫でしょうか?」

「はい、大丈夫ですよ。あの~お金のことは、あまり気にせず、いい仕事をできる環境をつくるように皆で知恵をしぼって、よろしくお願いします」

「ありがとうございます」

チーム全員がホッっとした。

「あ、そうだ、防犯設備の件は、どこかに発注するんでしょうけど、あまり、ここを部外者に知られたくないのもあるので、ポーラさんのお父様が大きな警備会社をやっているので、ポーラさんを窓口で進めてくれませんか。こちらも、そうした方が安心なので、いいですよね、ポーラさん?」

「え~、いいんですか。マリさん、うれしい~、父に少しは、私のことを認めてもらえるチャンスだわ。大尉、明日は私非番だから、うちの会社の人間を午後にはつれてくるから、打ち合わせしましょう」

「はい、そういうことなら、ぜひお願いします。ですが、この分野はダニエル中尉が担当しますので彼と相談してください」

「ダニエル中尉、明日の午後、お時間よろしいですか?」

「よろしいですかって、今の自分は時間ならいくらでもありますから、ポーラさんの好きな時間に合わせますよ」

「承知しました」

ポーラはとても嬉しそうな顔で返事をした。

「それと、環境が整ってからですが、政府のサーバーに入れるアクセス権限もいただいてもらえないでしょうか?」

「アクセス権限?」

「はい」

ユウキが隣で

「マリ、それは僕が政府と相談してみるよ」

「それじゃあ、ユウキお願い」

「とりあえず、この情報局の設備が完全になるまでは、少しずつ、事件等をこなしていきましょう。それでは、これで解散とします。また、明日からよろしくお願いします」
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