平和への使者

Daisaku

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セーヴルの老女

63話 レジスタンス

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パリ近郊セーヴルの住宅街、街の中心地から少し離れたこの地域は普段は車や通行人も少なく、とても自然豊かで家や道路など調和がとれた、とても住みやすい場所である。
だが、月曜日の18時、この街のエマ宅付近では、物々しい状態であった。

「クロエ、エマさんはそんな詐欺グループに引っ掛かるほど、ボケちまったのかい。あの人はすごく、頭が良かったのにな~」

「そうなのよ。全く、ご丁寧にこの住所まで教えっちゃって、19時になったら、恐らく、
怪しげな、悪党グループがここに来るはずだから、皆さん、本当に忙しいところごめんなさい」

「全く、おばあちゃんには困ったよね。みんな仕事やアルバイトなんかを切り上げてこんなに集まってくれて、本当、疲れるよね」

そこには、20人近くの近所の人や、知り合いが駆けつけてくれた。その中には、いかにも屈強な人まで呼んでくれて、何が起きても問題ないように、協力してくれた。フランスは今でこそ平和だが一昔前は国を占領されたり、ひどい目にあった経験が語りつがれており、フランス人の結束力や悪い者に皆で対抗しようとする正義の心を強く持っている人はまだまだ健在であった。そんなことになっているとは思わずに今日のマリはチョーご機嫌だった。エマさんやかつての同志の方々のご苦労にほんの少しだけれど、報いることができて、きっと、おばあちゃんがいても、きっと同じことをしただろうな~とエマ宅に向かう車の中でそう思った。

「葉子、悪いわね。私まで、この車に乗せてもらって」

「いいわよ。こんなこともあろうかと、大きい車できて正解だったわ」

「全くイブったら、私の車に乗りなさいって言っても、ユウキだけマリのそばにいて
なんで、私がポーラの車に乗らなきゃいけないの!なんて子供みたいなことをいうから」

「まあ、いいじゃない、こうして一緒に行動した方が、みんなで色々話せるし、楽しいじゃない」

「そうね、ありがとう葉子」

松田マツはマリが能天気な顔で車の窓からパリの街をご機嫌で見ているのを見て少し心配になり

「マリさん、ところで、お聞きしますが、エマに今日のことをもちろん事前に言ってありますよね?」

「はい、もちろんです。エマさんには19時にご自宅に伺うと言ってありますよ」

「いえ、それはさっき聞きましたよ。アベル大臣や大統領の件ですよ」

「え?」

「え?じゃないですよ。まさか、何も伝えていないんですか?」

「はい、まずかったですか?」

「・・・エマは一人暮らしなんですか?」

「いいえ、息子夫婦や孫たちがいます」

「う~ん、マリさん、大臣もそうですけど大統領まで来るんですよ。そこの街、警察やら、ボディーガードやら、大騒ぎになりますよ。おそらくその時間、車はもちろん、通行人だって、自由に通れなくなりますよ」

「あ、それは大丈夫ですよ。お忍びで来ると言ってましたから」

マツはしっかりしているようで、まだ、15歳、まだ、幼いところもあるなと思ったが、
「マリさん、お忍びだろうが、お遊びだろうが、必ず、いろんな警備の人がついてくるんですよ。そこにいる葉子が今日はついてこないでと言って、その指示に従ったことありますか?
国のトップ2ともいえる2人なら、安全確保のため、少なくても数十人の者たちが絶対にきます」

マリはびっくりした様子で

「マツさん、もう今そんなことを言われても、もう着く時間ですから、今となっては
直接言うしかないですよ」

マツはまた、頭をかかえた。

「マリさん、もう着きますよ。20分くらい早いですけど、どうしますか」

「あの~私一人で行って、エマさんに会って、マツさんのいわれた通り、事情を話してきますから、みんなはここで待っててくれますか。たくさんの人で行くとびっくりされてもこまりますから、話をしたら、すぐに戻ってきますから」

「だめです。一人ではいかせませんよ。祥子あなた、せっかく来たんだから、マリさんと
一緒に行ってあげて」

「え~、マリと二人で行くの」

「そうよ。私は車の運転があるから、あなたが行くのよ」

祥子はしぶしぶ頷いた。

「葉子さん、エマさん宅の少し手前で下ろしてください」

「わかりました」

マリは車を降りた、時計は18時40分になっていた。

「え~と、この家みたいだな」

マリ達が家の前にきたら、30人ぐらいの住民が集まっていた。不思議に思ったマリは
集まっている人に尋ねた。

「すみません。何かあったのですか?」

「お嬢ちゃん、これから、とんでもない、詐欺グループがここに来るから、すぐに離れたほうがいいよ」

「詐欺グループ?」

また別の人が

「なんでも、ここに住んでる、エマさんをだまして、お金を巻き上げるみたいだよ。だから、近所のみんなで守ってやるんだよ。そんなきれいな服なんか着てると狙われるから、
悪いこと言わないから、早く、向こうに行きな」

マリはエマさんが何かとんでもないことに巻き込まれたんじゃないかと心配になった。

「マリ、なんかすごいタイミングで来ちゃったね」

「そうね。でも変だよね。エマさんはほとんど今は家から出ないって言ってたのに詐欺グループなんかに会うかな~?まあいいや、とりあえず家に行こう」

マリと祥子はたくさんの人をかき分けて、エマ宅の玄関まできた。家の前で詐欺グループを
待ち受けている人達は女の子がエマの家に行くことはあまり気にならないようだった。

「エマ~相談役いますか~」

玄関の扉が開いていたので、中に入り、大きい声で叫んだ。しばらくして、大学生の孫コンスタンが出てきた。

「どうしたの、こ~んなかわいい女の子二人で、なんかウチに用かな」

な~んか、チャライ男だなとマリは思った。

「エマさん、いますか?」

「なんだ、ばあちゃんの知り合いかあ、ばあちゃんなら、奥にいるけど、今日は誰にも合わせるなって父さんと母さんが興奮してたからな~」

コンスタンを見て祥子がコンスタンにくっ付いて顔を近づけて

「ねえ、私達、ど~してもエマさんに会いたいの、お・ね・が・い」

耳元で祥子がささやいた途端、コンスタンはニヤ~として

「しょうがないな~、こんなかわいい二人にお願いされちゃあ、ちょっと待ってて、今ばあちゃんをリビングに連れてくるから、え~と、どなたでしたっけ」

「マリと言ってくれれば、わかると思います」

「ハイハイ、ちょっと待っててね~」

コンスタンはご機嫌で家の奥に歩いて行った。マリは祥子をじ~っと見て

「お・ね・が・いって何、祥子すごいね、絶対、わたしにはできない、やっぱり祥子は頼りになるな~」

マリは大笑いで祥子を見た。祥子は顔を真っ赤にして

「ど~お、私だってね、いろんなことができるんだから」

マリは祥子の違った一面を見れて、とてもうれしかった。そして、奥からエマが歩いてでてきた。

「大将、わざわざ、こんなところまで来ていただきありがとうございます。こちらにお座りください」

エマはリビングのイスにマリ達を案内した。

「コンスタンもいい機会だ。お前も一緒に話を聞きな」

コンスタンは喜んだ顔をして

「はい、よろこんで!」

といってイスに座った
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