平和への使者

Daisaku

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古代の悪魔

35話 おかしな関係

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「プルルル・・・ガチャ 夜遅くにすまないな、アベルだ。明日の朝、局長に緊急の話があるから、出勤したら、わたしにすぐに連絡するようにしてくれ」


「わかりました。大臣」

アベルは緊急連絡室にすぐに連絡を取り、すぐに寝室のベットに潜り込んだ。

翌朝、国土監視局に局長のポール・グラウンが出勤してきた。昨日の赤い球体騒ぎで局の前にもマスコミがいて、あることないこと、これからの対応について、しつこく聞かれたが、無視をして局内に入っていった。いつも通り、局長室の席に座り、一息ついた時に緊急連絡室の報告官から電話が入った。

「局長、本日、1時24分に国防大臣から連絡があり、出勤したら、緊急ですぐに連絡するように指示を受けております。ただいま、大臣にとりつぎますので、そのままお待ちください」

ポールは相変わらず、緊急の場合はこちらの都合関係なく、取り次ぐシステムはどうも好きになれないと思った。

「おはよう、ポール」

「おはようございます。昨日の赤い球体の件でしたら、まだ、なにもわかっていませんが」

ポールは大臣の聞いてくることを先走って答えた。

「わかっているよ。その件で、局内で調査組織を立ち上げて、原因究明に尽力してもらいたい」

「ですが、大臣、赤い光が飛び回ったぐらいで、特に何の被害も出ていないのに、そこまでする必要があるのでしょうか」

「局長の言いたいことはわかる。急で悪いが、本日10時に重要な情報を持った日本人が二人そちらに行く、有能な職員に対応させてほしい。また、局でわかった情報はすべて、その二人に連絡をするようにしてくれ」

「ちょっと待ってください。大臣、フランス国の情報を日本人に無償で伝えるのですか」

「そうだが、何か問題があるのかね」

「大統領をはじめ、政府の承認はもらっているのですか?」

「それは、私の仕事だ、局長の仕事ではない。こちらは、問題ないように対応しておくから、
しっかりと、情報を伝え、その二人の指示に従うように、これは国防大臣としての命令だ、もし従わないようなら、局長の職を退いてもらうようになる。これは、重大な案件だ。そのことを肝に銘じて対応してくれ」

「・・・・・わかりました。それでは、本日、来られる日本人ですが、名前と年齢、性別などを教えていただけますか」

「マリ・トビシマ女性15歳・ユウキ・タチバナ男性15歳、年齢は若いが、とても重要な人物だ、くれぐれも失礼のないように対応してくれ」

「15歳!大臣、何かの冗談ですか、15歳といえば、高校生ぐらいの年齢ですよ。そんな人間に重要な情報や、指示を仰ぐなど、納得できません」

「ふ~、ポール、そう言うと思ったよ。そこまで言うなら、大統領命令を出してもらう15分ほどしたら、対策室のモニターで連絡するようにする。その時には有能な諜報活動ができる職員も呼んでおいてくれ」

「わかりました」

勢いで話をポールにしてしまった。どうするかとアベルは考えた。でも、なにも頭に浮かんでこない、そして、マツに相談しようと考えた。すぐに秘書に電話を持ってこさせ、日本にいるマツに連絡した。

「アベルですが、マツさんに取り次ぎをお願いする」

電話に出た、執事の黒川はすぐにマツに取り次いだ。アベルの秘書とは大違いの対応をした。

「ベル坊、どうしたんだい。電話してきたとすると、どうやら、局の人たちにマリさんやユウキさんのことを拒否されたのかい」

アベルはドキっとして、

「はい、その通りです。やはり、15歳という年齢が信用に値しないということになり、困りました。わたしは、事情がわかっているので、昨晩はなにも疑問はなかったのですが、
一般の人から見たら、確かに疑問に感じると思います。勢いで大統領から連絡をすぐにさせるといったのですが、この短時間で大統領を納得させることなど私にはできないと思い、連絡しました」

「ベル坊、あんたは相変わらず、詰めの甘い男だね~、昔は自分自身の責任で動くときはあれだけ優秀なのに、やっぱり、お山の大将はあんたには合わないね」

「・・・そんなにいじめないでくださいよ。はっきり言います。マツさん何とかしてください」

「よ~し、一発で大統領を納得させてやる。ベル坊、大統領とすぐに連絡は取れるかい」

「はい、それはもちろんです」

「じゃあ~どうせなら、モニターを使って話した方がいいね」

「今日は、ちょうど閣僚級の会議があり、大統領も近くにいますから」

「わかった、すぐに連絡できるかわからないが、しばらく、大統領と待機していてくれるかい、それと、国土監視局の局長や担当職員なんかにも同時に見れるように手配してくれるかい」

「わかりました。10分以内にはモニターできるよう、待機しています」

マツはこうなることが事前にわかっていた。すでに、1時間前にある重要人物との交渉と確認は取り付けていた。

「ビクトリア、やはり聞いての通りです。すみませんが、フランス大統領に一言、口添えをお願いできないでしょうか」

「マツ、そんなこと、お安い御用よ。でも、私はフランス語はあまり得意ではないから、英語で話させていただくわ」

「ビクトリア、大統領もアベルも国土監視局の人間も英語は得意中の得意です。全く問題ありません」

「そう、なら良かったわ。なんだか60年前にタイムスリップしたいみたいねマツ、昔もこうやって、無茶なことをヤエやマツによく頼まれたわよね。なんだか、若返ったみたいだわ」

「フフフ・・・そうですね。でも、あの時ビクトリアの対応がなければ、今の平和はなかったのだから」

「そう言ってくれるとうれしいわ。そして、今、また世界の平和にほんの少しだけど貢献できることにうれしく思っているわ」

「ビクトリア、10分経ちました、打ち合わせ通り、ご説明をよろしくお願いします」

「わかったわ、繋げてちょうだい」

ビクトリアは女王執務室からカメラを回すように専属の報道職員に指示を出した。

その少し前、フランスでは、

「アベル、どうしたんだ。急にモニタールームに来てくれなんて、あと30分もしたら会議も始まるんだぞ」

「わかっています。ですが、緊急な要件なのです。あと10分ほどしたら、連絡が入りますので、お話を聞くだけでよいですから、ご協力をよろしくお願いします」

「緊急な連絡は誰からくるんだ?」

アベルは、ハッとして、そういえばマツさんから、誰から連絡が来るか聞いてなかったと思ったが、

「見ていただければわかりますで、よろしくお願いします。あと国土監視局の人間も同時にきいてもらいますので、ご了承願います」

「わかった。でもアベル、くだらない人間からの連絡だったら、すぐにこの場を離れるぞ」

「承知しました」

数分が過ぎ、モニターがついた。

「こちら、イギリス女王報道官ルークです。これから、フランス国に対して、重要なメッセージを伝えます。非公式のため、現在、出席されている方は守秘義務が発生いたします。くれぐれも口外されないように願います」

そして、すぐに画面が切り替わり、

「イギリス女王、ビクトリアです。フレデリック大統領お久しぶりですね」

フレデリック フランス大統領はビックリした顔で

「女王、お久しぶりです。急なご連絡で驚きました。本日はいかがいたしましたか?」

「そちらにいるアベル国防大臣から、国土監視局で自分の指示に従わない、愚か者がいると相談を受けまして、出過ぎたこととは思いましたが、ご連絡をさせていただきました」

「アベルの指示に従わない愚か者!まさか、国防大臣の指示に従わないなんて、この国では
ありえないことです。それは誰ですか?」

「今、モニターに映っているポール局長と聞いてますが、」

「ポール、どういうことだ。お前の対応でわざわざ、イギリス女王にまで、ご迷惑をおかけして、立場をわきまえろ!」

フレデリック大統領は大声を出した。ポール局長は大統領やイギリス女王まで、出てきて、驚きと緊張で何も言えなくなってしまった。

「フレデリックそんな大きい声を出さなくてもよろしいですわ。わたくしがご説明いたしますから、先日の世界中のニュースで話題になっている赤い球体の件はご存じかしら」

「はい、存じております。ですが、特に大きな被害もなく、だれかのイタズラではないかと思われておりますが」

「そうですね。そう思われるのが普通かもしれません。ですが、この赤い球体が人類にとって
とても危険なものであることをお伝えします。そして、この危険を回避できる唯一の存在が
日本人マリさん、ユウキさんの二人です。二人とも15歳と若いですが、女性のマリさんは日本国高官としての地位を持ち、その資産は日本トップクラスです。また、フランスを含め、世界5か国での国籍を持ち、あらゆる武道のエキスパートで、恐らく世界でもマリさんに勝てる人はいないでしょう。先日、空手の世界チャンピオンも敗北してます。そのため日本では数人の警察官が24時間体制で警護されているほどの方です。そして、そのマリさんを補佐するユウキさんは世界でも右に出る人がいないほど優秀な頭脳の持ち主です。信じられないのなら、
あらゆる試験・問題を出してみてください。ほぼ完ぺきに解答いたしますよ。このようにわたくしイギリス女王が世界で最も信頼する方です。今後もお二人をバカにするような態度を取るようでしたら、この女王を侮辱するのと同じことです。おわかりになりましたか」

フレデリック大統領はすぐに

「はい、承知しました。女王、わざわざ、ご説明いただきありがとうございます。お二人の日本人の件、私が責任を持って対応させていただきます」

「よかったわ、大統領のその返答がいただけて、大変うれしく思います。本日は貴重なお時間を取らせてしまって、申し訳ありませんでしたね」

「いえいえ、とんでもありません。貴重な情報もありがとうございます」

そして、通信が切れた、そして、その瞬間、大統領も切れた。

「アベル!ポール!お前たちは、イギリス女王をなんだと思っているんだ。国内の恥をさらして、そんなに私をおとしめたいのか!ポール!アベル国防大臣に指示に従わないなら、
お前は解任だ。今すぐ、やめろ」

ポール局長はびくびくしながら

「すみません。大臣の指示に従います」

「これ以上、何かあったら容赦しないぞ、日本から来られたお二人には失礼のないように
対応するんだぞ」

「わかりました」

「それとアベル、お前も女王にこんな恥ずかしいこと相談するな、間抜け、大統領のわたしが
なんのためにいると思っているか、わかっているのか」

「申し訳ありません。今後はこのようなことないように気を付けますので、お許しください」

アベルはマツのめちゃくちゃな対応にビックリしたのと、恐らく、私が連絡してくることを予測して準備していたことに相変わらず、先を読むことにかけては抜け目のない人だと感心した。

「局長、10時に今日、お二人が行くから、しっかりと対応を頼むな」

「はい、わかりました」

局長と同席していた職員は立ち上がって、大きい声で返事をした。
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