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進学と出会い
25話 英雄のはじまり
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試合開始にギリギリ間に合い、ユウキとマツは、戦いの一部始終を武道会館の
入り口そばで見ていた。大介・葉子・祥子の三人の孫たちが次から次へと飛ばされ倒されている姿を目の当たりにして、マツは飛島マリに釘付けになった。
かつて、飛島ヤエに地位や名誉、そして、使い切れないほどの資金をいただき、自分が恩返しすることを懇願したが、すべて拒否され
そんな時、体術について聞かれ、飛島ヤエが興味を示したため、祖父から教わったすべてを飛島ヤエに伝授した。飛島ヤエは抜群のセンスを
持っていたため、そのすべてをわずか5年で習得して、免許皆伝師範の称号を与えたことを思い出した。おそらく、あの時本気で闘ったら、
飛島ヤエには勝てなかっただろうと思ったことをマツは思い出した。
マツはマリの戦う雄姿、そして、飛島ヤエが共に戦った仲間達と共に鍛錬にはげみ、
試合をする時に必ず着用した道着をまた、見ることができたことに震えが止まらないほど感動していた。
そして、あの道着に縫い付けた星は戦いにおいて亡くなった仲間の思いを自分が道着として身に着け背負うことで、飛島ヤエが体も心も誰よりも強くなっていったことを思い出し、マツは涙が止まらなかった。
マリは試合も終わり、自分が倒した三人の具合を一人ずつ確認して、異常がないとわかると、一礼して、スタスタと控室に戻ろうとした。
そこに立ち会わせた、同じ門下の者が5人ほど、審判が3人、救急隊員が医者を含め3人いたが、飛島マリの強さに驚き、誰もマリに近づくことさえできず、ただ、マリが歩いている姿を見ているだけだった。
救急隊員だけは、慌てて倒れた3人を運びだしてはいたが、一体ここで何が起きてしまったのか、まだ、現実のできごととは思えないようだった。
マリは武道会館の出入り口にユウキがいるのを見つけ、軽く手を振り、
「ユウキくん、どこに行っていたの?試合は終わっちゃったよ、みんなケガもないようで良かったわ」
マリはニコニコして、いつも通りの顔に戻っていた。
そんな、マリを松田マツはじ~と見つめて、
「マリちゃん、こちらは松田マツさんだよ」
マリはギロリとマツを見つめて、
「あ~たしか、学校の理事長でしたよね、初めまして、飛島マリといいます」
マツはその姿はもちろん、声までヤエにそっくりなので、また、驚き、泣きながらマリを抱きしめた。
「あの~どうされました?理事長・・・」
しばらくして
「ふ~ごめんなさい。私は松田マツです」
マリは抱きしめられた時に不思議と懐かしい感じがした。
そして、老いてはいるが、マツの眼光や、潜在能力のようなものをすぐに感じ取り、
「あの~理事長、あなたは何者ですか。お年を取られてはいますが、とんでもなく、あなたは、体から、そのとてつもない強さを感じます。本当にあそこで眠っている3人のおばあさまなのですか?」
マリは不思議そうな顔で松田マツを見つめた。
「フフフ・・・やっぱりあなたは姐さんの孫ね、いやそれ以上かもしれない」
「姐さん?」
「マリちゃん、マツはね・・・」
ユウキがマツのことを説明しようとした瞬間、手でユウキのことを遮り、
「マリさん、ここではなんだから、着替えをして、わたくしのお部屋で、マリさんのおばあさまのことを少し話しませんか?」
マリは松田マツに自分の大好きだったおばあちゃんと同じような雰囲気を感じ、
喜んだ顔で
「はい、ぜひ」
「そこにいる黒川に着替えがおわったら案内させるわ」
そう言ってマリは控室に行った。マツは自室に戻る途中、ほんのこの前まで、ヤエさんのことや、松田松濤館流伝承者の件、そんなことが、
中途半端な状態で自分が死んでいくことに、とても悲しい思いでいた。
だが、今日この日に太陽よりまぶしい希望の光に包まれ、そして、マリという、どんな宝石にも例えようがないすばらしい原石に出会えたことを神に感謝した。
マリは着替えも終わり、執事の黒川さんに連れられマツのところへ案内された。案内された
応接室はとても広い空間で各所に植木のような物が置いてあった。
マツは大きなソファから立ち上がってマリを迎えた。また、その横にユウキが立っていた。
「マリさん、お待ちしてましたよ。こちらにおかけください」
「はい」
マリは大きなソファにゆっくりと腰を下ろした。
マツはマリの細かい動作をじっくりと見ながら、
ユウキと共に向かい側のソファに腰を下ろした。
「マリさん、先ほどは武道会館ではうちの孫たちを順番に倒してしまい、見事でした。だいぶ加減してくれたみたいで、助かりました」
マツはマリの動作が本気でないことを瞬時に見抜いていた。マリは少し驚いた様子で
「あの~理事長はどういった方なのですか?
私の動きを見抜くなんて、うちのおばあちゃんみたいですね」
マリは少し笑いながら話した。マツは嬉しそうに
「フフフ・・・、だって、ヤエ、姐さんに松田松濤館流武術を教えたのは・・・・私だもの」
マリはびっくりした顔をして
「本当ですか?」
「私は松田よ、うそなんか言わないわよ」
マリはもっとびっくりした顔をして
「じゃあ、うちのおばあちゃんとお知り合いなんですか」
マツは飛島ヤエのことを思い浮かべながら
「そうねえ、知り合いというか、私達はかけがえのない同士と言うべきかしら」
「おばあちゃんは自分のことは、ほとんど教えてくれなかったので、話が聞けてうれしいです、もっといろいろと教えてくれませんか」
マツはしばらく考えた様子で話し始めた
「わたくしたちは第二次世界大戦中・後と世界をかけめぐり、たくさんの同志たちと
人類が滅亡することがないように必死で働いたわ。そして、完全ではないけど平和な世界に導くことができたわ」
マツはユウキが持ってきた白黒の写真をマリに見せた。
「この写真はみたことあるわよね」
「はい、あります。私が持ってきましたから」
50人近くはいるだろうか、白黒でだいぶ、見ずらいが、顔や姿は判別できた。
「ここの真ん中にいてこちらをギロリとにらんでいるのが、ヤエ姐さんでその右隣にいるのが私、マリさん、驚くかもしれないけど、左にいて笑って映っているのが、ここにいるユウキさんなの」
マリはえっとした顔で写真を見た。よく見るとここにいるユウキと同じ顔だ。
今より少し年は取っているようだが、間違いないと思った。
「ん?ちょっと待ってください。
今ここにいるユウキくんとこの写真に写っている人は同一人物なんですか?」
ユウキは申し訳なさそうな顔をしてマリに
「マリちゃん、ごめんね。いつか話そうとは思っていたんだけど、そうなんだ。僕は人間ではあるが、この世界でいう、不老不死なんだ。
そして、マリちゃんも知ってのとおり、若くも老人にも瞬時に姿を変えられる存在なんだ」
マツはびっくりした顔で
「あら、そんな力もあったの。知らなかったわ」
ユウキは苦笑いをした。
「じゃあ、ユウキくんは、うちのおばあちゃんのことはよく知っているということ?」
ユウキは困ったなと思ったが正直に話した。
「そうなんだ、なにしろ、マリちゃんの前『平和への使者』はヤエさんだったから」
マリはこのぶっ飛んだ話にだいぶ付いていけてなく、しばらく頭の中で整理整頓作業を行った。
「マリさん、飛島ヤエさんは、日本帝国軍情報局長官に若くしてなり、私は副官、この独立した組織は当時の海軍省で密かに作られ、
戦後も各地の調停・同盟・平和会議などに尽力した組織なの。
ヤエさんは若い時に巫女をしていたこともあり、目の前で人に会うと、今、何を考えているのかを見抜き、その人がこれからのどのようになるか運勢のようなものを瞬時にわかり、交渉では誰も姐さんにはかなう人がいなかったのよ」
「姐さん?」
「あら、ごめんなさい。ヤエさんのことはみんな姐さんって普段は呼んでいたの、本人は姐さんと呼ぶなとよく言っていたけど・・・」
「おばあちゃんは昔、巫女だったんですか?」
「そうよ、全く姐さんは、本当に自分のことを話したがらない人なんだから、自分の孫にはそれぐらい話せばいいのに」
入り口そばで見ていた。大介・葉子・祥子の三人の孫たちが次から次へと飛ばされ倒されている姿を目の当たりにして、マツは飛島マリに釘付けになった。
かつて、飛島ヤエに地位や名誉、そして、使い切れないほどの資金をいただき、自分が恩返しすることを懇願したが、すべて拒否され
そんな時、体術について聞かれ、飛島ヤエが興味を示したため、祖父から教わったすべてを飛島ヤエに伝授した。飛島ヤエは抜群のセンスを
持っていたため、そのすべてをわずか5年で習得して、免許皆伝師範の称号を与えたことを思い出した。おそらく、あの時本気で闘ったら、
飛島ヤエには勝てなかっただろうと思ったことをマツは思い出した。
マツはマリの戦う雄姿、そして、飛島ヤエが共に戦った仲間達と共に鍛錬にはげみ、
試合をする時に必ず着用した道着をまた、見ることができたことに震えが止まらないほど感動していた。
そして、あの道着に縫い付けた星は戦いにおいて亡くなった仲間の思いを自分が道着として身に着け背負うことで、飛島ヤエが体も心も誰よりも強くなっていったことを思い出し、マツは涙が止まらなかった。
マリは試合も終わり、自分が倒した三人の具合を一人ずつ確認して、異常がないとわかると、一礼して、スタスタと控室に戻ろうとした。
そこに立ち会わせた、同じ門下の者が5人ほど、審判が3人、救急隊員が医者を含め3人いたが、飛島マリの強さに驚き、誰もマリに近づくことさえできず、ただ、マリが歩いている姿を見ているだけだった。
救急隊員だけは、慌てて倒れた3人を運びだしてはいたが、一体ここで何が起きてしまったのか、まだ、現実のできごととは思えないようだった。
マリは武道会館の出入り口にユウキがいるのを見つけ、軽く手を振り、
「ユウキくん、どこに行っていたの?試合は終わっちゃったよ、みんなケガもないようで良かったわ」
マリはニコニコして、いつも通りの顔に戻っていた。
そんな、マリを松田マツはじ~と見つめて、
「マリちゃん、こちらは松田マツさんだよ」
マリはギロリとマツを見つめて、
「あ~たしか、学校の理事長でしたよね、初めまして、飛島マリといいます」
マツはその姿はもちろん、声までヤエにそっくりなので、また、驚き、泣きながらマリを抱きしめた。
「あの~どうされました?理事長・・・」
しばらくして
「ふ~ごめんなさい。私は松田マツです」
マリは抱きしめられた時に不思議と懐かしい感じがした。
そして、老いてはいるが、マツの眼光や、潜在能力のようなものをすぐに感じ取り、
「あの~理事長、あなたは何者ですか。お年を取られてはいますが、とんでもなく、あなたは、体から、そのとてつもない強さを感じます。本当にあそこで眠っている3人のおばあさまなのですか?」
マリは不思議そうな顔で松田マツを見つめた。
「フフフ・・・やっぱりあなたは姐さんの孫ね、いやそれ以上かもしれない」
「姐さん?」
「マリちゃん、マツはね・・・」
ユウキがマツのことを説明しようとした瞬間、手でユウキのことを遮り、
「マリさん、ここではなんだから、着替えをして、わたくしのお部屋で、マリさんのおばあさまのことを少し話しませんか?」
マリは松田マツに自分の大好きだったおばあちゃんと同じような雰囲気を感じ、
喜んだ顔で
「はい、ぜひ」
「そこにいる黒川に着替えがおわったら案内させるわ」
そう言ってマリは控室に行った。マツは自室に戻る途中、ほんのこの前まで、ヤエさんのことや、松田松濤館流伝承者の件、そんなことが、
中途半端な状態で自分が死んでいくことに、とても悲しい思いでいた。
だが、今日この日に太陽よりまぶしい希望の光に包まれ、そして、マリという、どんな宝石にも例えようがないすばらしい原石に出会えたことを神に感謝した。
マリは着替えも終わり、執事の黒川さんに連れられマツのところへ案内された。案内された
応接室はとても広い空間で各所に植木のような物が置いてあった。
マツは大きなソファから立ち上がってマリを迎えた。また、その横にユウキが立っていた。
「マリさん、お待ちしてましたよ。こちらにおかけください」
「はい」
マリは大きなソファにゆっくりと腰を下ろした。
マツはマリの細かい動作をじっくりと見ながら、
ユウキと共に向かい側のソファに腰を下ろした。
「マリさん、先ほどは武道会館ではうちの孫たちを順番に倒してしまい、見事でした。だいぶ加減してくれたみたいで、助かりました」
マツはマリの動作が本気でないことを瞬時に見抜いていた。マリは少し驚いた様子で
「あの~理事長はどういった方なのですか?
私の動きを見抜くなんて、うちのおばあちゃんみたいですね」
マリは少し笑いながら話した。マツは嬉しそうに
「フフフ・・・、だって、ヤエ、姐さんに松田松濤館流武術を教えたのは・・・・私だもの」
マリはびっくりした顔をして
「本当ですか?」
「私は松田よ、うそなんか言わないわよ」
マリはもっとびっくりした顔をして
「じゃあ、うちのおばあちゃんとお知り合いなんですか」
マツは飛島ヤエのことを思い浮かべながら
「そうねえ、知り合いというか、私達はかけがえのない同士と言うべきかしら」
「おばあちゃんは自分のことは、ほとんど教えてくれなかったので、話が聞けてうれしいです、もっといろいろと教えてくれませんか」
マツはしばらく考えた様子で話し始めた
「わたくしたちは第二次世界大戦中・後と世界をかけめぐり、たくさんの同志たちと
人類が滅亡することがないように必死で働いたわ。そして、完全ではないけど平和な世界に導くことができたわ」
マツはユウキが持ってきた白黒の写真をマリに見せた。
「この写真はみたことあるわよね」
「はい、あります。私が持ってきましたから」
50人近くはいるだろうか、白黒でだいぶ、見ずらいが、顔や姿は判別できた。
「ここの真ん中にいてこちらをギロリとにらんでいるのが、ヤエ姐さんでその右隣にいるのが私、マリさん、驚くかもしれないけど、左にいて笑って映っているのが、ここにいるユウキさんなの」
マリはえっとした顔で写真を見た。よく見るとここにいるユウキと同じ顔だ。
今より少し年は取っているようだが、間違いないと思った。
「ん?ちょっと待ってください。
今ここにいるユウキくんとこの写真に写っている人は同一人物なんですか?」
ユウキは申し訳なさそうな顔をしてマリに
「マリちゃん、ごめんね。いつか話そうとは思っていたんだけど、そうなんだ。僕は人間ではあるが、この世界でいう、不老不死なんだ。
そして、マリちゃんも知ってのとおり、若くも老人にも瞬時に姿を変えられる存在なんだ」
マツはびっくりした顔で
「あら、そんな力もあったの。知らなかったわ」
ユウキは苦笑いをした。
「じゃあ、ユウキくんは、うちのおばあちゃんのことはよく知っているということ?」
ユウキは困ったなと思ったが正直に話した。
「そうなんだ、なにしろ、マリちゃんの前『平和への使者』はヤエさんだったから」
マリはこのぶっ飛んだ話にだいぶ付いていけてなく、しばらく頭の中で整理整頓作業を行った。
「マリさん、飛島ヤエさんは、日本帝国軍情報局長官に若くしてなり、私は副官、この独立した組織は当時の海軍省で密かに作られ、
戦後も各地の調停・同盟・平和会議などに尽力した組織なの。
ヤエさんは若い時に巫女をしていたこともあり、目の前で人に会うと、今、何を考えているのかを見抜き、その人がこれからのどのようになるか運勢のようなものを瞬時にわかり、交渉では誰も姐さんにはかなう人がいなかったのよ」
「姐さん?」
「あら、ごめんなさい。ヤエさんのことはみんな姐さんって普段は呼んでいたの、本人は姐さんと呼ぶなとよく言っていたけど・・・」
「おばあちゃんは昔、巫女だったんですか?」
「そうよ、全く姐さんは、本当に自分のことを話したがらない人なんだから、自分の孫にはそれぐらい話せばいいのに」
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