嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

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89、皇帝視点4

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「ねぇ、父上はいつまでお母様の事を皇后って呼ぶの?お母様のこと、どうして名前で呼ばないの?」


それは…今までそう呼んでいたからだが、その事を言ってもリアムは納得しないだろう。それに、私としては、皇后を名前で呼ぶのもやぶさかではないが、私に名前で呼ばれる事で皇后が不快に思わないかが心配だ。


そう考えていると、今度は皇后が何故私の事を名前で呼ばないのかと聞かれて言葉に詰まっている。


リアムに仲良くしてほしいと言われるが、別に仲が悪いわけではない、と思う。それに、仲良くしたくないわけでもない。


が、だからと言って今すぐ皇后とどうかないたいとは思っていない。ので、皇后と二人で散歩するように送り出さないで欲しかったんだが…。


来てしまったものは仕方ない…。


確か、以前にもこんなことがあった気がするな。
あの時も、私の態度に業を煮やしたアレックスが、皇后に話を聞いて欲しいといきなり頼み込み、夜に散歩をして会話をしたな。


今思えば、あの時アレックスがああ言わなければ、私が彼女を知っていく事も、イザベラの本性を知ることも無かっただろう。


正直、イザベラの話は衝撃的な内容で、父を殺害したイザベラをずっと信じてきた自分が本当に許せなかった。だが、1番許せなかったのが、なんの罪もない彼女に辛く当たったことだった。


どうして私は、彼女の事を知ろうともせずにあんな態度を取ってしまったのか。


彼女と少しでも話していれば、イザベラが言っているような人物ではないと分かったはずなのに。彼女はわがままで横暴な人ではなく、優しさに溢れたとても可愛らしい人だと、すぐに気づけたはずなのに。


あの時の私は本当にどうかしていた。


彼女を知れば知るほど、もっと一緒に過ごしていたい、もっと話しをしていたいという欲望が、こんなにも湧き出てくるというのに。


今も、あれほど避けていたと言うのに、欲望に負けて話しかけてしまう程だ。そして、リアムの要望を叶えるためだと言い訳をして名前で呼んでみようとも試みた。


だが、彼女の名前を口にすれば、何故だか凄く気恥ずかしくなり、最後まで言うことが出来なかった。


正直なところ、彼女の事を名前で呼びたいと前々から思っていた。それに、何度か咄嗟に呼んでしまったこともある。だが、何も無い時に名前で呼ぶのはまだ出来そうにないようだ。


その代わり、口調を少し砕けたものにしてみようか。


と思ったが、これも上手くいかなかった。
今更彼女に対して砕けた物言いをするのは失礼なのではないかと気になって、上手く話すことが出来ない。


私がこういう話し方をすることで、彼女が不快に思うかもしれない。それなら、今のままの方がいいのか…?


なんて考えていると、彼女が話しやすい方でいいと言うので、彼女にどちらが良いかを尋ねてみた。


そうすれば、今までの話し方が彼女を悲しませていたことを知ってすぐに砕けたものへと変える。


イザベラから、プライドの高い公爵令嬢には丁寧な口調で話した方が良い、と言われていたからそうしていたのに…。やはり、イザベラの話は信用するものではなかったと再認識する。


本当に彼女には申し訳ないことをしてきた。
今更謝罪しても遅いだろうが、彼女に謝罪せずにはいられない。アレックスが言うように、今までの事を思えば、本当に離婚を切り出されても仕方がない。


そう思っていたが、彼女から出た言葉は、これから互いを知っていこう、と言う提案だった。


まさかこんな事を言ってくれるとは思っていなかった。今まで散々彼女を傷付けてきた私を許し、これからも共に居てくれようとする事に嬉しさが込み上げてくる。


あんなにも、彼女と会うのを怖がり憂鬱な日々を送っていたのに、彼女の言葉一つでこんなにも幸福な気持ちになれるのか。


これからも、私は彼女と一緒に居れる。
そう思うだけで幸せだ。


願わくば、共にいる中で彼女が私と同じ気持ちになっていいのだが…。


そういえば……アレックスが、こう思う事は相手に好意があるからだと言っていたような気がする…。


もしかして私は、彼女に異性として好意を抱いている…?


いや、ここは問いかけるまでもなく認めよう。


久しぶり彼女と過ごして分かった。どうやら私は、彼女に対し好意を抱いている。だからこそ、彼女に嫌われるのをあんなにも恐れていたんだ。


そう結論が出ると、今までモヤモヤしていた思考がスッキリと晴れ、気付けば彼女の手を取り自分の気持ちを抑えられずに伝えてしまった。


「私は…貴女に恋をしているようです」
「………え、あの、えっと……」


私の告げた言葉に彼女は顔を赤くして分かりやすく動揺している。


「私の気持ちは、貴女にとって迷惑か?」
「え、いや、そういう訳ではないんでけど……なんと言いますか、いきなり過ぎて…はい、あの」


動揺し過ぎて言葉が上手く出てこない彼女も可愛らしいと思うのは、私が彼女に恋をしているからなのか。気持ちを認めてしまえば、彼女の全てが愛おしいと素直に認められる。


だが、彼女を困らせるのは本意では無いので、私の気持ちを押し付けて彼女を困らせるのはここまでにしたおこう。


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