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76、本当に良かった…!
しおりを挟む仕事の合間にお昼寝をしているアイリの寝顔を見てから、まだ眠っているリアム様の顔を見に行く。
私の部屋に来てからもう3日目になるけど、リアム様はずっと眠ったままだ。
「今日もいい天気だよ。起きたらまた一緒にお散歩しようね」
返事がないとわかっていても、目を覚ますきっかけになってくれれば良いなと期待しながら頬を撫でながら話しかける。
今回もまだ目を覚ましてくれないのかな…。
仕事もまだまだ山積みだし、そろそろ仕事に戻ろうかな。
ーーーと、思っていると。
リアム様の瞼が薄く開くのが見えた。
「リアム様!」
「る、び…ごほ、ごほ!」
「大丈夫!?はい、水!ずっと寝ていたから、急に喋ると喉が痛むのかも!ゆっくり飲んでみて」
「あり…と、」
掠れた声でお礼を言って、弱々しい手で私が差し出した水を飲むリアム様を見て、まだまだ心配ではあるけど、目が覚めたことへの嬉しさで涙が出てくる。
「ル、ビア、さま…?」
「目が覚めて、本当に良かった…」
感情が抑えきれずにリアム様を抱き締めれば、身体が一回りほど小さくなったように感じて、さらに涙が出そうになる。
本当に目が覚めてよかった…生きていてくれてよかった…!
「ここは…」
「私の部屋だよ。色々あって、ここに来てもらったの」
「えっと……はは、うえは…?」
悲しそうな顔をしながら聞いてくるリアム様に、なんて答えるべきか悩んでしまう。
リアム様は、ずっと眠っていた原因がイザベラ様だって知ってるのかな?もし知らないのなら、事実を言わない方が弱りきった今のリアム様にはいい気がする。
でも、目覚めたら一緒にいたはずの母上じゃなくて、妹の母親が居たら戸惑うのも当然だし、なんて言えばいいかな…。
「イザベラ様は…今はリアム様と一緒に居ることが出来なくて…。だから、私の部屋に来てもらうことにしたの」
「そっか…母上は…もう僕がいらなくなったんだね…」
「え!?いや、そういう訳じゃないよ!」
どうしよう!
そういうつもりで言ったわけじゃないけど、体が弱ってて心も弱っているはずの子を悲しませてしまうなんて私のバカ!
「違うの、そういうことじゃなくて…」
「ううん、いいんだ…。母上がぼくのっ、ことを、きらい、なの、は、しっ、てた、からっ、」
「リアム様っ、」
途中から涙が溢れてきて、言葉を詰まらせながらも話してくれる姿に胸が痛くなる。流れてきた涙を必死に止めようと目を擦るリアム様を抱き締めて背中をさする。
母親に嫌われているって知りながら、今まで平気なフリをして過ごしていたんだ…。
「はは、うえが、ぼ、くに、なにかっ、うぅっ、」
「無理に話してくれなくてもいいよ。リアム様の話ならいつでも聞かせてもらうから。涙が止まったらまた教えてくれる?」
「う、うぅん」
しゃくりあげながら頷くリアム様の背中をトントンと落ち着くようにゆっくりと叩く。
今までずっと我慢してきたんだろうな…。
こんなに可愛くて良い子をこんなにも悲しませるなんて…。今更ながらにイザベラ様に腹が立ってきた。
嫌々だったとしても、子供を産む選択をしたのはイザベラ様なんだから、親としての責任を果たしたらどうなの!リアム様にはなんの罪も無いじゃない!
別に、私みたいに子供とずっと一緒にいて愛情を注げなんて言わない。だってこの世界では私が普通では無いんだから。だけど、世話を全て乳母に任せたりしたとしても、親子の会話の時間を持ったり、何かを達成出来たら褒めてあげるとか出来なかったわけ?
もしそれも出来なかったとしても、子供が親から嫌われているって感じさせ無いように振る舞えなかったの?
それに、毒を飲ませるって本当におかしいでしょ!
殺すつもりはなかった?だからって毒を盛っていい理由にはならないし!そもそも毒を子供に使う時点で犯罪じゃん!虐待どころの騒ぎじゃないから!
子供はみんな愛される為に生まれてきたの!
確かに、子供とずっと一緒に居ると、言うことを聞いてくれなくて腹が立つ事だって多々あるよ。腹が立って叩いてしまいたい、とか、感情に任せて怒鳴りつけそうになることだってある。
だけど、産んで育てるって決めたのは自分なんだから、せめて子供が悲しんで泣かないように親だって努力する必要があるんじゃないの?
ワンオペとか、色々な状況で追い詰められている人達はともかく、城で生活して乳母だって居る人が、なんで子供を悲しませるの!
亡くなったお母様の事を想う気持ちは否定しないけど、今居ない人よりも、これから長い人生を送っていく子供にもっと気を配れなかったの!?
イザベラ様はリアム様のお母さんだから、そこまで悪くは言いたくないけど、今のリアム様を見ていると文句しか出てこない。
他人の子育てに首を突っ込むなと言われるかもしれないけど、目の前で泣いている子を見てしまえば色々言いたくもなってしまう。
皇帝がイザベラ様に対してどんな罰を与えるのかは知らないけど、その前に私からリアム様のことに対して一言…では済まない言葉を言わせてもらいたくなる。
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