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74、寝ている間に…
しおりを挟むルビアが実はかなり慕われていた事を知ったあとに、アイリと一緒に朝食を取っていると、皇帝の元へ尋ねに行ってくれたミリアナが戻ってきた。
「ルビア様…」
「どうしたの?」
何故か気まずそうに話し出すミリアナに首を傾げる。
「その…傷が痛むため、訪問は避けてほしいとの事でした…」
「そう…。そう言われてしまえば仕方ない。だけど、それほど傷が深いってこと?」
「いえ……私では、詳しいことはよく…」
「うん、わかった。聞きに行ってくれてありがとう」
歯切れの悪いミリアナに追及はしないでおく。ミリアナを見るに、皇帝の傷はそこまで深いと言うわけでも無さそうだし、私は大人しく部屋で傷の治りが良くなるように祈っておこう。
身体が本調子でなければ人と話したりするのも億劫になるのは分かるし、来てほしくないって言われるのも仕方ない。
だけど…訪問を拒否されたことに、少しだけショックを受ける。そして、ショックを受ける自分に驚く。
どうして私は、皇帝に拒否されたくらいで傷付いているんだろう…。
「ルビア様…大丈夫ですか…?」
「うん?うん、大丈夫だよ!傷が痛むなら仕方ないよね。また日を改めてお見舞いに行こうかな」
心配そうに見てくるミリアナに笑顔を取り繕うけど、取り繕っているのがバレているようで、余計に心配されてしまう。
「あの、明日にでもまた伺ってみましょうか」
「ううん、大丈夫。そんなにすぐ痛みは収まらないだろうし」
「ですが…」
「本当に良いの!それより、アイリのご飯も終わったし、お散歩にでも行こうかな」
今日は用意した離乳食を全部食べれて偉いね。なんてアイリに言いながら抱き上げると、ミリアナが何かを言おうとして止め、また口を開く。
「……もう1つお伝えしたい事がございます。ルミリオ陛下から、ルビア様にお願いしたいことがあるそうなのです」
「私に?どんなこと?」
「リアム様をルビア様の部屋で寝かせてほしいとの事でした」
「リアム様を…?」
この部屋に来てくれる事は全然嫌ではないし、むしろ様子が直ぐに見れるから嬉しいけど。どうして急に私の部屋にリアム様を預けようと思ったの?
「ルビア様がリアム様の事を心配されていたのと、リアム様もルビア様と一緒に居た方が幸せだろうからと…」
「……陛下がそう言うのなら、リアム様をこの部屋にお連れして」
私を気遣ってリアム様を預けてくれるのなら、喜んで来てもらいたい。だけど、私のことを気遣ってくれているのは本当なのだろうけど、私と会いたくないからリアム様を私の部屋に移そうと思った、なんて事はないよね?
自分でも考え過ぎかと思うけど、今まで向こうから会いに来ていたのに、こちらから行きたいと行った時に断られたので変な風に考えてしまう…。
最初はあれほど会いたくないと思っていたのに…。
今では昼に散歩をしたり、相談が出来る程に親しくなっていたから、面会を拒否されると、親しくなったと感じていたのは自分だけなのかと思って寂しく感じてしまう…。
でも、面会出来ないほど傷が痛むのかもしれないし、必要以上に落ち込むのは止めよう。
それよりも、今はリアム様がどういう状態なのかを確認して、私に出来ることが無いか探そう。
「…そういえば、イザベラ様は今どうしているの?」
「イザベラ様なら、牢屋の中で静かに過ごされているようです。また、イザベラ様の指示でルビア様に対し不当な行いをしていた者たちは全員尋問を受けており、然るべき対応がなされる予定です」
「全員って…」
城のほとんどの人間が尋問を受けているってことになるんじゃないかな…。
「それって、大丈夫なの…?どこかに人材確保のために要請したりしないといけないんじゃ…」
「それなら安心して下さい。ルビア様が眠られてから、見計らったかのようにクライアンス公爵様が屋敷から使用人達を連れて来てくださったので」
「お父様が…?」
「はい。それをアレックス様が何かあった時の責任を全て負うこと覚悟で、ルミリオ陛下とルビア様の代わりに受け入れを許可されたのです」
皇帝は刺されて倒れていたし、私も気絶するように寝てしまったから、アレックスさんが代わりに対応してくれたんだ。お飾りだったとはいえ、何も出来なくて本当に申し訳ない。
アレックスさんが受け入れてくれたおかげ、私は今もいつも通り過ごせてたんだな。本当に彼には頭が上がらない。
だけど、どうしてお父様は城が人手不足になるという事が分かったんだろう…。
「お父様って、もう帰られたの?」
「いいえ、イザベラ様が犯した罪の証拠集めや事後処理をアレックス様と行われています」
「お父様が自ら?」
「はい。領地で起こった事故などがイザベラ様に関わりがあるそうなので、それについての証拠も探されているそうです」
そういえば、領地で大規模な事故が起きたって言ってたけど、それもイザベラ様が関わっていたのか。
確かに、城に来ることを拒むように起こっていたらしいから、イザベラ様の仕業と言われても驚きはない。だけど、自分の欲望のためにそこまでするなんて、イザベラ様は本当に怖い人だ。
いや、イザベラ様だけじゃなくて、そのお母様もとても怖い人だ。嘘をついてまで娘を皇女にしたかった理由は一体なんだったんだろう。もう知る術はないけど、本当にそこまでする必要があったのか疑問で仕方ない。
ある意味、イザベラ様もカーミラ様の被害者だったのかもしれないな…。
だけど…だからって、今までイザベラ様がしてきた事は決して許せないけど。
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