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68、イザベラの告白2
しおりを挟む城に到着して数日もしない内に、私に対する使用人達の視線がどこか冷ややかな事に気付いた。その理由については、私に気付かず話していたメイド達によって明らかになったわ。
どうやら、使用人達の間では、リナリー様が亡くなった原因はお母様にあると噂されているようで、その娘の私に対していい感情を抱いていないようだったわ。
確かに、リナリー様が亡くなられたのはお母様が城へと向かわれてからの事だけれど、お母様がそんな事をするはずがないわ。お母様はリナリー様に惑わされたゼノン様の目を覚まそうとしただけなのに…。
メイド達の話を聞いて、お母様が手紙に冤罪で処刑されるかもしれないと書いていた理由がよく分かったわ。お母様は事故なんかで亡くなったのではなく、リナリー様を殺した犯人だと疑われて処刑されたのよ。
リナリー様はご病気で亡くなったと新聞に書いていたのに、城内ではお母様を犯人にして処刑したのよ。
お母様はただ私達のあるべき場所に戻れるように、ゼノン様の目を覚まそうとされただけなのに。
お母様だけを悪者にする人達が本当に許せなかった。そして何より、お母様を処刑したゼノン様の事が、最も許せなかった。
愛する人が出来たと言って婚約破棄をさせ、挙句の果てに、元婚約者だったお母様をリナリー様が亡くなった原因を作った犯人に仕立てあげ処刑するだなんて、お母様が可哀想過ぎるわ。
絶対に私がお母様の無念を晴らさなければいけない。そう再認識させられたわ。
お母様の無念を晴らすための第一歩として、私はゼノン様とリナリー様の息子と仲良くなる事にしたの。
彼は、私のお母様が死ぬ原因を作った女の子供で、本来なら私が居るべき皇帝の後継者という立ち位置に居たから、顔を見るのも嫌だった。だけど、お母様の為にも我慢して話しかけたの。
ちょうど私と同じ歳で、互いに母を無くしてすぐの事だったから共通の話題をして簡単に仲良くなれたわ。そうでしょ?ルミリオ。
ふふふ、そのショックを受けた顔を見られただけでも、仲良くなった甲斐があったわ。
もちろん、本気で仲良くなろうだなんて思っていなかったわ。ルミリオと結婚して私が皇后になり、ルミリオを消してしまえば母の悲願は達成出来る。
そして、実家で出会ったギルバートがゼノン様の弟の子供だと言っていたから、彼と結婚し直せば私の地位が揺らぐこともない。そう思ったから、貴方に近付いたの。
私に懐いてくる貴方を見るのは、正直鳥肌が立つくらい気持ちが悪くて仕方が無かったけど、目的の為にはずっと貴方の隣で笑っていたわ。
そして、貴方に近付こうとする女達の悪評を貴方に教えこみ、私以外の女性を信じる事がないようにも教育していってあげたの。
その努力の甲斐あって、貴方は16歳になっても誰とも婚約することも無く、周囲からは私達が恋人関係であると誤解され始めていたわ。
ゼノン様が私とルミリオの婚約を最後まで否定していたせいで婚約出来ずにいたけど、周りからの声に負けて、ゼノン様も私とルミリオの婚約に賛成しようと思い始めていた。
そんな時ーーー。
留学から帰ってきた公爵家の令嬢が現れたの。
その令嬢が現れたせいで、今まで私が積み上げて来た努力が一瞬で無に帰されそうになったわ。本当に忌々しいことこの上ないわ。
ねぇ?ルビアさん?
ルビアさんがルミリオに一目惚れしたなんて馬鹿みたいな事を言って婚約を申し込んだせいで、ゼノン様も、私が居るのに婚約者を探し始めていたルミリオも二つ返事で了承してしまったでしょ?
婚約が成立してしまったせいで、私の計画は大いに狂ったわ。皇后になってから思う様に動けるように孤児院を経営し、私好みの人間まで育てていたというのに、本当に腹が立ったわ。
私の努力を無駄にしないために、騎士見習いとして城にいたギルバートとどうすればいいか相談をして、ルミリオとの子供を作ることに決めたの。
作るためには、私を異性として意識していなルミリオをその気にする必要があった。そして、子供が出来て側室になれたとしても、ルビアさんが居る以上、ゼノン様はルビアさんを大切にして地位が揺らがないように守るだろうと簡単に予想が出来た。
だからーーー。
お母様が遺してくれた薬のレシピを使って、ゼノン様に死んでもらったの。
あら、そんなに顔色を悪くしてどうしたの?ルミリオ?ふふふ、私が殺しただなんて思わなかったでしょ?それに、ゼノン様が毒殺されたなんて誰も気付いていなかったでしょ?
ふふふ、お母様のレシピは凄いのよ。私はお母様が亡くなった理由を知った日から、少しずつゼノン様に薬混ぜていて病を患っているように見せていたのもあるけど、誰も本当の死因には気付かなかったわ。
そしてルミリオ、貴方にゼノン様の死を1番初めに見てもらうように仕組んで、ショックを受ける貴方を優しく慰めてあげれば…簡単に子供が出来たの。
子供が出来て貴方の側室になることが決まった時は、上手く行き過ぎて笑いそうになったくらいよ。ゼノン様が居なければこんなにも簡単にことが進むのなら、最初から殺してしまえばよかった、なんて思ったくらいよ。
その後は貴方も知っている通り、影で私を疎んでいた人達を全員辞めさせ、孤児院で育てた子達を貴族達の養子に迎えさせてから城で採用したの。
そして、貴方にルビアさんの悪評を聞かせ続け、ルビアさんを城で孤立させて追い出すようにしむけていた…。不安を煽り続けて媚薬を手に入れさせ、ルミリオを襲わすようにもした。
そのおかげで、ルミリオは完璧にルビア様の事を避けて、離婚をするのも時間の家だと周りからも噂されるようになった。
だけど、皇女が産まれてからそれが何故か上手くいかなくて…。
もう、なんだか色々と面倒になって…ギルバートにも裏切られて……いえ、裏切られてなんかいないわ………きっと彼は私の元に戻ってくるわ……。
彼が私を裏切るわけがないわ………そうよ……計画通りにギルバートに皇帝の座を用意すればいいの……私の幸せの為にはやらなきゃ行けないの………。
そうよ………ルビアさんもルミリオも殺してしまえばいいの!私の幸せのために、邪魔者はみんな死んでしまえばいいっ、……!?
なに…?
今、私は叩かれたの…?
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