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54、皇帝視点

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彼女のパーティでの様子に居ても立っても居られず、気付けば彼女の部屋の近くの庭まで歩いて行っていた。夜中はアイリも寝ているだろうから、会えるわけはないのに、何故か足が勝手に向いた。


どうせ皇后とは会うことが出来ないのだから早く部屋へと戻ろう。そう思った時に、遠くで皇后が1人で歩いているのが見えた。


なぜ1人で居るんだ!彼女に何かあればどうするつもりだ!城の中とはいえ、必ずしも安全というわけではない。なので、急いで近付き声をかけようとするが、少し青い顔をして考え込む彼女に心配になる。


声を掛ければいつも通りの声で返事が返ってきて安心する。だが、まだ頼りなさげな彼女を部屋まで送りながらリアムの事についての状況を説明する。


説明する途中で、私が彼女の事を疑っていないのかと聞かれるが、彼女がそう考えてしまうのは、今までの私の態度がそうさせたのだろうと気付き切なくなる。


私が彼女を疑っていると思われると、何故こんなにも胸が痛むのか…。


彼女の心が少しでも軽くなれば良いと願いながら話を続け、成り行きで彼女の部屋へとおじゃますることになった。


彼女の周りで手紙について不可解なことが起きていることや、イザベラやリアルに対しての提案を聞いたりした。


そして、彼女が私に恋をしていたと言った時に、自分でも驚くほど心臓の鼓動が早くなった。何故だか顔も熱くなってくる様な感覚で、だけど嫌ではなくて、なんとも形容しがたい感情になった。


だが、その次に彼女が私からの愛をもう求めないと言った時、胸がチクリと傷んだ。そして高揚していた気持ちも一気に落ち着き、喪失感に襲われた。


どうしてそんな気持ちになるのかが理解出来ない。不可解な自分の感情に戸惑いを隠せないが、それよりも彼女の顔を見る事が出来なくなり、足早に退出をした。


退出をする前に、彼女にはして欲しくない誤解を解くために、イザベラとは何も無いことだけは告げた。どうしても彼女にはそんな誤解をしてほしくはなかった。


今までイザベラとそういう関係だと誤解される事は何度もあったが、されたところで問題は無かったので肯定も否定もしなかった。だが、どうしてか彼女には誤解されたくなかった。


最近、自分の行動の理由が分からないことばかりだ。そしてそれは、いつも皇后ーールビアが関わっている時ばかりだ。


彼女はどうしてこんなにも私をおかしくさせるのか。そして、どうして私はそれが不快だとは思わないのか…。


考えても答えが出ない疑問ばかりが頭を占める。


「今はそんな事を考えている場合ではないのに…」


まずは、イザベラを休ませるためにリアムを安全な場所へ移し、誰の手によってリアムに毒を盛ったのかを調査をする。それから、皇后と、彼女の両親の手紙がどこへ消えたのかを調査しなければ。


翌日に皇后から提案された通り、イザベラに安全を確保するためだと伝えリアムを別室へと移動させた。皇后が言った通り、初めはやんわりと拒否されたが、皇后から守るためだと伝えれば、少し考えてから了承された。


やはり母親同士、どう言えば素直に聞いてもらえるかが分かるものなのかもしれないと感心する。


それと同時に、久しぶりに見たリアムの顔が、最近よく見ていた元気に笑う顔ではなく、死んでいるのではないかと心配になるほど静かな寝顔だった。


一体誰が…なんの恨みがあってリアムにこんな仕打ちをしたんだ。絶対に犯人を見つけ出し、死んだ方がマシだと思える程の罰を与えてやる。


頭を撫でても無反応なリアムにそう心に強く誓い、一日でも早く回復させるように医者達に指示を出し、次の事へと行動を移す。


リアムを苦しめた犯人探しと、皇后達の手紙の行方の調査をアレックスに依頼すれば、文句を言いつつすぐに作業に取り掛かってくれる。


翌日になれば、アレックスが手紙のことについて報告をしてくる。思っていたよりも早い報告に驚きが隠せないが、そんな事よりも報告を聞くのが先だ。


「ルミリオ様…あの、冷静に聞いて頂いてもよろしいですか」
「どうした、急に改まって」
「それが、その…かなり衝撃的な事実が分かりまして…」
「そうか、ならすぐに教えてくれ」


そう言うが、アレックスは何かを悩みながらモタモタして全く続きを話そうとはしない。


「私も暇ではないんだ。いいから早く話せ」
「………あの、本当に冷静に聞いてくださいね。取り乱したりとかしないでくださいよ」
「どんな事を言われてもそんな事はしない。だから、早く言え」


アレックスの物言いに苛立ちを感じる。そんな事より早く報告を聞いて解決へと動きたいんだ。


「分かりましたよ…。では、驚かずに聞いてくださいね」


観念したようにアレックスが話し出すが、アレックスが冷静に聞けと言った意味が分かった。



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