嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ

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47、そんな…

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分からないことが多過ぎるけど、情報を得る為に息を潜めたまま二人の会話を聞き続ける。


「本当に…あの男に似ているリアムが憎くて堪らないわ。顔を見るだけで虫唾が走るわ」
「気持ちは分かるけど、計画には皇帝の血筋が必要だから仕方ないだろ」
「分かっているわ…分かっているけど、あの男に似た顔で、私から愛してほしそうに見てくるのよ。本当に…気持ち悪いわ…」


イザベラ様の言葉を聞いて、ものすごくショックを受ける。


リアム様の様子を見ていて、もしかすると親子仲が良くないのかもしれないと思っていたけど…。まさか、母親から嫌われていたなんて、想像もしていなかった。


「あの顔を見る度、叩きたくなるわ」
「身体に傷は付けちゃダメだろ。嫌でも計画の為には優しい母親を演じなきゃ」
「…分かっているわよ。だから人が居る時はちゃんと優しい母親でいるでしょ」


それは、人が居なければ優しい母親では無いってことだよね…。


もしかして、落馬した時に、私がアイリの事を好きかどうか聞いたのは、母親は自分の子供のことが好きなのかどうかを知りたかったから…?


もしそうだったのなら、なんて切ない質問だったのだろう。あの時、私は特に考えずに答えたけど、私がリアム様の事を好きだと言った時に嬉しそうにしていたのは、今まで母親から愛された事がなかったから…?


今すぐにでもリアム様の所へ行って抱きしめたくなる。抱きしめて、私の部屋へ連れてきて、アイリと一緒に眠らせたい。


落馬してから、色んな理由を並べられて会えなかったけど、今のイザベラ様達を見る限り、あれは全て嘘だったんじゃないかと思えてくる。


一体、私が会えていない期間、どういう状態だったんだろう。毒を盛られたと言っていたけど、それも嘘?いや、それは嘘であってほしい。


「貴方との子なら、ちゃんと可愛がれたのに」
「本当かぁ?俺の子にも、毒を飲ますんじゃないのか」
「もう!ふざけないでよ」
「ははは、悪い悪い。けど、流石に毒を飲ませたのは驚いたよ。どうせ外に出さないんだし、あの女がしたって嘘つけば良かっただろうに」


嘘でしょ…。
本当にリアム様に毒を飲ませたの…。


「医者とか呼ばれたら面倒じゃない。それなら、実際に飲ませた方が信ぴょう性も上がるし」
「確かにそうだけど。毒が盛られたって報告してなかったことについては何も言われなかったのか?」
「パーティの準備で忙しそうで心配をかけたくなくて、って泣いたらすぐに納得したわよ、あのバカ」


面白そうに笑いながら言っている"あのバカ"って皇帝の事だよね?いつも皇帝の事を大切に想っています、って態度を取っているのに、あれは全部演技だったってこと…?


「それにしても、リアムの苦しむ顔を見ると、ルミリオが苦しんでいるように見えて楽しくなるわ」
「本当にアイツのことが嫌いだよな」
「当たり前じゃない。だって…………あの男と、あの男の母親のせいで、私のお母様は殺されたんだから…!」


…………え?



皇帝と皇帝の母親のせいで、イザベラ様の母親が殺された…?


どういう経緯でそんな事が起きたのだろう。前皇后陛下は皇帝が子供の頃に亡くなった…んじゃなかったっけ?ルビアの記憶を全て知っているわけじゃないから確かじゃないけど…。


前皇后陛下が亡くなる前に、イザベラ様の母親と何か揉め事でもあったの?それが原因でイザベラ様の母親が亡くなった…?でも、皇帝のせいでもあるらしいしから、イザベラ様は皇帝を憎んでいる?


だけど、だからってどうしてギルバートを皇帝にしようとしているの?それに、私を悪者に仕立てあげようとする意味もわからない。


私を悪者に仕立てあげて、この城から追い出して、イザベラ様が皇后になろうとしている…?


だけど、イザベラ様が皇后になったとしても、皇帝が居るのだから、ギルバートを皇帝にする事なんて出来ないはずだ。


もし、仮に皇帝が亡くなったとしても、リアム様が居る。考えたくはないけど、リアム様に何かがあっても、皇帝の血を継ぐアイリも居るし、皇族の血筋なら、他にも居るんじゃ無いのかな…?だから、ギルバートが皇帝になるのはどうやっても無理だと思うのだけど。


「可哀想なイザベラ…。だけど、もうすぐで俺達の望んだ通りになるさ」
「そうね…だけど、ルミリオがあの女の事を信用し始めたのが気がかりだわ…」


心配するイザベラ様に、ギルバートが優しく頬を撫でる。


「大丈夫さ。そのうち、リアムに毒を盛ったことも、リアムが落馬した原因もあの女のせいだって国中で噂される様になる。そうすれば、アイツもあの女の事をまた疑い始めるさ」
「そう…かしら」
「ああ、絶対に上手くいく。今までだってそうだっただろ?大丈夫、この計画が進めば、君が嫌っている人達は全員消えてるんだ。もう少しの辛抱だ」
「…そうね…そうよね……皇帝も、あの女も、皇女も、全員消してしまえばいいのよ」
「!」


妖艶に微笑むイザベラ様の顔に、背筋に冷たいものが走る。


「皇后が子供を産んでから人が変わったようになったけど、やる事は今までと変わらないさ。今日は色んな貴族の前で疑いの目を向けられるように仕向けたし、計画通りに皇后から引きずり下ろせるさ」
「本当に…長かったわ。あの女が居なければ、こんなに時間もかからなかったのに」

「そうだな…。そろそろ人が来るかもしれない。あまりリアムから離れれば疑われるかもしれないし、早く帰った方がいい」
「そうね。名残惜しいけど、もう行くわね」
「ああ」


そう言って口付けを交わし、2人は別の方向へと人目を避けるように去っていった。別れ際、イザベラ様が何かが入った袋をギルバートに渡し、ギルバートが嬉しそうにもう一度イザベラ様にキスをした。



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