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37、イザベラ様とお話を
しおりを挟むイザベラ様の言葉をそのまま信用していいのか疑わしいけど、リアム様の事を1番把握しているのはイザベラ様なので、彼女に質問するしかない。
「リアム様は、今どのような状態なのですか?」
「リアムは…今、すごく怯えているようで、部屋から出たがらないのです」
「風邪をひいて熱が出ていると、うちのメイドからも皇帝陛下からもお聞きしていたのですが。熱はもう下がったのですか?」
そう聞けば、イザベラ様の眉がほんの一瞬ピクリと動いた。本当に一瞬の事だったので、見間違いかもしれないけど。
「…ルミリオ陛下からも、お聞きになったのですか?」
「はい、リアム様とも一緒にされていた散歩の時間にお聞きしました」
「まだ、散歩を…リアムが参加していないのに、ですか?」
「はい。もしかして、ご存知ありませんでしたか?」
リアム様が一緒に散歩出来なくなったのは寂しいけど、あの時間に散歩するのはアイリの日課になっているので、体内時計を整える為にも同じ時間に行っている。そして、皇帝も同じようで、日課のように毎日同じ時間に散歩にやってくる。
皇帝から謝罪してもらった一件から、互いに偏見を持って接することが無くなったので、友人…とまでは行かなくても、よく話をする隣人、くらいの距離感で話が出来ている。なので、特に拒絶するでもなく、会えば一緒に散歩をしている。
だけど、イザベラ様が皇帝と私達が未だに一緒に散歩をしている事を知らないなんて思いもしなかった。だって、皇帝とイザベラ様は恋人関係で、食事も私抜きでいつも一緒に取っていたはずだ。それに、それ以外でも会って親しくお話していたりするんじゃないのかな。
だったら、皇帝と私達が散歩している事を知っていてもおかしくないと思うのだけど…。
いや…恋人相手に、恋愛感情が無いとはいえ女性と会ってることは言いにくいか。それも、恋人の自分を差し置いて皇后の座を掠めとった人の話なんてするわけないか。
でも、リアム様と私が一緒に皇帝と散歩していた事については何も思っていなかったのかな…。別に、私から誘ったわけでもないし、皇帝と一緒に居れて嬉しい。なんて思ったことは1度もないけど、イザベラ様的に、嫌じゃなかったのかな。
私が逆の立場だったら嫌だけどなぁ…。だって、好きな夫と、可愛い子供が正妻と一緒に居るってことでしょ?うーん…考えただけでも嫌だ。
イザベラ様は嫌じゃないのかな。嫌だとしても言い出せない…とか?なら、今の私の質問って、かなり煽った感じになってしまう!?
いや、私としては、単純に知らなかったんだ。って思っただけなんだけど。もしかしすれば、私の方が最近皇帝と仲良いですけど?そんなことも知らないの?的な感じで聞こえてたりするのでは…。
全然そんなつもりは微塵も無いのに、そういう風に取られて目の敵にされるのは避けたい。ただでさえ、既に敵意?を持たれてるかもしれないのに。
「…もちろん、知っていましたよ」
「え…?あ、そうですか」
よかった、変に誤解されて居なかったようだ。だけど、イザベラ様の取り繕ったような笑顔が気になってしまう。
本当に、誤解されていないよね…?ここで変に、皇帝とは別に変な関係じゃありませんから!とか言ってしまうと、逆に誤解されそうだから、下手に何も言えない。
それに、今は皇帝とイザベラ様の仲がどう、とかよりも、リアム様の様子だ。本当のところ、今のリアム様はどう言う状態なのかが知りたくてここまで来たのに。
「それで、リアム様の状態はどうですか?熱は、下がったのですか?」
「ええ、熱はもう下がりましたので安心してください。それより…ルミリオ陛下と本当に散歩をされているのですか?」
「?はい、そうですが。と言っても、別に約束をして会っているわけではありませんよ」
そこだけは分かってほしい。本当に、ただただ散歩してる途中で出会って、一緒に少し歩いて話して、さようなら。ってしてるだけで、そこには欠片も恋愛的な物はない。なので、イザベラ様が心配する様なことは何もない。
と、言っても、恋人なら少しは勘ぐってしまうのかもしれない…。
今まで、かなり軽率だったかもしれないと反省する。アイリの父親だからと何も気にせず一緒に散歩をしていたけど、イザベラ様を不快な気持ちにさせていたかもしれない。
今後は、皇帝と出来るだけ会わないように気を付けよう。でも、リアム様とも距離を取れと言われたら、それは嫌だなぁ。
「ルミリオ陛下が、ルビア様に対して恋愛感情を全く抱いていない事くらい知っていますので、一緒に散歩をされたくらいで何も思いません。ですので、気にされなくて良いですよ」
「あ、それなら、良かったです」
「はい…?」
イザベラ様の言葉にホッとすれば、イザベラ様の表情が分かりやすく歪んだ。今まで皇帝の事をひたすら追いかけていたのに、今更身を引こうとしているのが怪しいとでも思ったのかな。
でも、私がこの身体に入ってからは、1度も皇帝に自分から近付こうとはしてなかったと思うのだけれど。それに、自分の恋人に近寄ろうとしていた嫌な女が近寄らなくなるなら、普通は喜ぶものじゃないのかな。
それとも、今までの私の態度のせいで、信じられないのかな。信じてもらえなくても、本気で皇帝とどうこうなりたいとかは無いんだけどな…。
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