嫌われ皇后は子供が可愛すぎて皇帝陛下に構っている時間なんてありません。

しあ

文字の大きさ
上 下
23 / 99

23、離乳食を初めてみよう

しおりを挟む





リアム様との散歩に皇帝も参加してくる事が日常となってきた今日この頃…。


皇帝が散歩に参加してくることに最初は戸惑いもあったけど、私に対する態度に敵意や嫌悪感が消えたので、案外一緒に居ても苦痛ではなかった。


それでも、積極的に仲良くなりたいか、と言われればそうでも無い。だけど、リアム様が皇帝と話す時に緊張はするとけど、少し嬉しそうに見えるので、皇帝が散歩に参加する事を拒否しようとは思わなかった。


丁寧な口調で話す所は変わらないけど、最近では皇帝と話す時にあまり緊張しなくなったように見える。親子の仲が少しは良くなった様で良かった。


そんな感じで、毎日散歩をしている私達は、今日は揃ってキッチンへと来ていた。


目的は、もうすぐ6ヶ月になるアイリに離乳食を作ってあげる為だ。


母乳とミルクの混合で進めているので、離乳食はそこまで急がなくても良いけど、離乳食を早く始めた方がアレルギーも少ないと言われているのでそろそろ始めていこうと思う。


リアム様や皇帝が一緒に来た理由は、私自ら作ることに興味があるからだそうだ。貴族の令嬢なら、キッチンに立って料理をする事なんて有り得ない事だから、尚更どんな事をするか気になったのだろう。


だけど、前世の仕事で離乳食も作っていたから心配無用だ。日本ではないから、離乳食に使う材料をどうするか悩んだけど、この国には家畜の餌として米があるらしいので、それを使ってまずは重湯を作っていく。


「ねぇ、それは何?それって食べられるの?」
「それは鳥が食べる餌では無いのですか?」


リアム様と皇帝の質問してくる表情が似ていて笑ってしまう。リアム様は見た目も皇帝とよく似ているから余計に面白い。


皇帝から謝られてから、なんだか皇帝があまり人と接したことがなくて、人どう接したらいいか分からない子供にしか見えなくなった。


なので、皇帝からの言葉にイラつくことはもう無くなった。それに、イラつかせてくるような事もあまり言われなくなったので、余計に皇帝に対して悪い印象はもうほとんどない。


それに私としては、アイリとリアム様に危害を加えられなければ何でもいい。皇帝はリアム様とアイリの父親ではあるけど、私とは関係性が夫婦なだけで、他人だと割り切ってしまえば尚更何も思わない。


「これは、お米って言うんだよ。皇帝陛下の言った通り、この国では鳥の餌にされてるけど、別の国では人間も食べている穀物なんだよ。リアム様も皇帝陛下も、良ければ召し上がってみますか?」
「いいの?じゃあ、食べたい!」
「私も…余っているのなら、いただきます」
「分かりました」


今作っているのはアイリの為の重湯なので、別に鍋を出してお米を火にかける。流石に重湯の残りのドロドロの米を食べさせるわけにはいかないからね。


ついでにもう1つフライパンを出してソーセージを炒めて、その炒めた油でスクランブルエッグを作る。やっぱり米にはおかずがあった方が良いよね。


「ルビア様凄い!」
「…手馴れていますね。まさか、貴女にこんな特技があったとは知りませんでした」
「料理が出来たとしてもする機会があまりありませんからね…あはは」


私が料理をする姿を見て、リアム様と皇帝が感心するように見てくるが、前世では料理として初歩的なことをしただけなので、これだけで褒められると反応に困ってしまう。


ソーセージとスクランブルエッグをお皿に盛り付け、重湯とお米が炊けるまでの間、食器を用意していく。


そして、先に出来た重湯を適温に冷まして、キッチンの端でマーガレットと一緒に待っていてもらったアイリに持っていく。


「アイリ、重湯が出来たよー。ちょっとだけ口に入れてみようか」


マーガレットの膝の上に座るように抱いてもらい、アイリの口へと重湯を入れる。そうすれば、口をモゴモゴと動かす。


「食べた!アイリ、美味しい?」


アイリが口を動かすのを見て、リアム様が興奮したようにアイリを見る。


「どうだろうね?でも、嫌な顔はしなかったから、多分不味いとは思っていないと思うよ」


モゴモゴと口を動かす姿はなんて可愛いのだろう。ちゃんと口を動かして偉い!流石私の子!何をしてても可愛い!初めての離乳食を動画で取れないなんて…この世界はどうしてこんなにも私を苦しめるの…!


「僕も舐めてみていい?」
「うん、いいよ」


心の中で動画を取れないことに嘆きながらも、重湯に興味津々のリアム様に重湯を別のスプーンですくって渡す。


「…なんだこれ、初めて食べる味だけど、あんまり味が無いね」
「離乳食の初期は、こういう味があまり無いものから始めるんだよ。じゃないと、まだミルクしか飲んだことがない赤ちゃんがしんどくなっちゃうからね」
「そうなの?」
「そうなのですか?」


横で聞いていた皇帝も混ざって聞いてくるので、皇帝には赤ちゃんの内臓が未発達のため消化不良を起こしたり、かなり身体に負担をかけてしまうことを説明する。


「なるほど…。アレルギーの件と言い、皇后は本当に物知りですね」
「いえ、そんなことありませんよ。食べ物の知識以外はほとんどありませんから。例えば、皇后としての振る舞いとか仕事とか…」


なんちゃって…と少し冗談っぽく言おうと思ったのに、皇帝の眉間にシワが寄ったのを見て口を閉じる。


最近少しは距離が縮んで来たと思ったけど、流石に自分の仕事を放棄している事を笑って言うのは良くなかったか…。そのせいで、恋人のイザベラ様が私の仕事を肩代わりして忙しくしてらっしゃるのだから、尚のこと気に触ったかな。


そう自分の発言を心の中で反省していると、皇帝は思ってもみないことを言ってくる。


「皇后が仕事を拒否した理由は、仕事内容が分からなかったからですか?」
「え…?」


いや、決して内容が分からないから断ったのではない…と思う。だって、記憶の中の私は、仕事内容を聞く前にしなくていいと伝えられていたはずだから。私は1度だって、自分から断った事は無いはずだ…。


「イザベラから貴女が仕事をしたくないと言っていると聞きましたが、まさかそう理由だったとは知りませんでした」
「えっと…」


どういう事だ?私はそんな事を言った覚えはない。それに、前の私はイザベラ様の事を嫌っていたから、イザベラ様にそんな事を言うとは思えない。何がどうなっているんだろう?


それとも、私の記憶違い?記憶と言っても、全部思い出せるわけじゃなくて、大雑把な記憶しか思い出せない。それに、今分かっている記憶も、この城に嫁いできた時からのだけだし。


「分からないのなら、イザベラに教えてもらうのはどうでしょうか?きっとイザベラなら快く教えてくれるでしょうから」
「そう…ですね。アイリがもう少し大きくなってから考えてみます…」
「イザベラに伝えにくい場合は、私から伝えますので、いつでも言ってください」
「お気遣いありがとうございます」


そうお礼は言ってみたものの…。


なんとも釈然としない。私の記憶違いかもしれないけど、そうじゃなければ、何故イザベラ様が嘘を付いてまで皇后の仕事をしたがったのだろう。


いや、もしかすると、私が幼くて皇后の仕事を全う出来ないと思って、親切心で仕事を肩代わりしてくれたのかもしれない。だって、あの気が弱そうで嘘も付けなさそうな人が、私から仕事を奪おうだなんて思わないはずだ。


だから、きっとこれはイザベラ様が好意でしてくれたことに違いない…と、思いたい。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗死にかけて前世の記憶が戻りました。側妃? 贅沢出来るなんて最高! と思っていたら、陛下が甘やかしてくるのですが?

藍川みいな
恋愛
私は死んだはずだった。 目を覚ましたら、そこは見知らぬ世界。しかも、国王陛下の側妃になっていた。 前世の記憶が戻る前は、冷遇されていたらしい。そして池に身を投げた。死にかけたことで、私は前世の記憶を思い出した。 前世では借金取りに捕まり、お金を返す為にキャバ嬢をしていた。給料は全部持っていかれ、食べ物にも困り、ガリガリに痩せ細った私は路地裏に捨てられて死んだ。そんな私が、側妃? 冷遇なんて構わない! こんな贅沢が出来るなんて幸せ過ぎるじゃない! そう思っていたのに、いつの間にか陛下が甘やかして来るのですが? 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜

白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます! ➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【だって、私はただのモブですから】 10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした―― ※他サイトでも投稿中

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します

ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」  豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。  周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。  私は、この状況をただ静かに見つめていた。 「……そうですか」  あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。  婚約破棄、大いに結構。  慰謝料でも請求してやりますか。  私には隠された力がある。  これからは自由に生きるとしよう。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...