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「俺は神みたいな遠い存在じゃなくて、エマとはもっと近い存在になりたいんだけど?」
「ファ!?」


ま、また耳にダイレクト吐息アタックされた!?
くぬぅ~!あの夜以降されてなかったから油断した!


忘れた頃に耳を狙うなんて、流石元遊び人…。
緩急をつけて女性を籠絡させていくんですね!
お見逸れしました!


「ふふ、久しぶりにエマが赤くなったね」
「おほん、そろそろイチャつくのを止めてもらえますか」
「あ、そういえば居たね、君。俺のエマと親しそうだけど、一体誰なの?」
「怖い怖い怖い!めちゃくちゃ睨まれてるんですけど!俺はただの元同級生ですよ!」


にこやかに笑うエリオット様を見て、アル君が引きつった顔をしながら後退していく。


うーん。多分睨んでるんじゃなくて、太陽の光が眩しくて目を細めてるだけだと思うけどな。
だからそんなに怖がらなくてもいいのにな。


「ふ~ん。俺のエマがお世話になっていたんだね」
「あ、いえ、全然。少し話したくらいなので」
「ちょっとアル君!あの熱く(推しについて)語り合った日々を少し話したくらいって酷くない?」


あんなにも毎日の様に互いの推しについて語り合ったのに、アル君にとってはそうでもなかったってこと?
アル君が推しのコンサートに行った感想を10日連続で聞いた事だってあったのに!
アル君と私は同士だと思っていたのに!
それなのに、少しだなんて…!


「ちょ、お前、エマ!一旦黙れ!空気読めよ!俺を殺す気か!!」
「え?私がアル君の事を殺そうと思うわけないよ。唯一(推しについての)愛を語り合える人にそんなことするわけないでしょ」
「あい…?」
「だぁー!もう!お前本当に黙れ!マジで黙れ!この誤解製造機が!」


誤解製造機?なんか語呂がいいな。
今度機会があれば是非とも使わせてもらいたい。
じゃない、なんでアル君はあんなにも慌てているんだろう?


「ねぇ、エマ。彼とどういう関係なのかな?」


あれ?エリオット様なんだか機嫌が悪い?
あ!そういえば訓練に夢中で休憩の時に10時のおやつを出すの忘れてた!
山道ランニングの後に休憩時間があったのに…私って本当にポンコツメイドだ…。


「すみませんエリオット様、明日はおやつを忘れないようにしますね」
「え?なんでおやつ?それよりも俺は、彼の事を知りたいんだけど?」
「アル君の事ですか?彼は、アルフォード………さんと言って、私の元同級生です」
「おい、絶対俺のファミリーネーム忘れただろ…」


普段あだ名で呼んでると咄嗟に出てこないよね!
なにかの流れで名前と全く関係ないあだ名で呼ぶことになった人とか、本気で名前忘れちゃうしね。
くまモンって呼んでたけど、あの子の名前なんだっけ?みたいなね。


「アルって、愛称だったんだ。ふーん。で、この男と愛を語り合うってなに?どんなことを話してたんだよ」


さっきよりも声のトーンが大分低くなった。
どうやらエリオット様は相当お腹が空いているみたいだ。
昼食時は私の分も食べてもらおう。


「そうですね…。アル君は主に、というか、常にネージュ=タブラ二ー様について愛を語っていましたね」
「そう、ネージュ=タブラ二ーについて…っ、は?」


久しぶりに見たエリオット様のキョトンとした表情はとてもお可愛らしゅうございました。(眼福)


「ちょっと待って…」


エリオット様は持っていた剣を捨てて、額に手を乗せる。
少し考える素振りをした後、エリオット様はゆっくりと口を開く。


「つまり、2人は人気演奏家グループに所属するネージュ=タブラ二ーについての愛を語り合っていたってことなのか…?」


厳密にはアル君だけだけど、本人の目の前で、私は貴方のことについて語っていました。なんて言えないから、そういう事にしておこう。


「はい、そうです」
「そっか。アル君だっけ?学校でエマと仲良くしてくれていたみたいだから、今度ネージュが単独で行うコンサートのチケットをお礼として贈るよ」
「え、あ、え?あ、有難く頂戴致します」


さっきと打って変わって満面の笑みを浮かべたエリオット様を見て、アル君が困惑気味に私にチラチラと視線を送ってくる。


きっとお腹の減り具合が限界に達して空腹感が無くなったんだろうな。
そのことを察した私は、アル君に向かってサムズアップをした。


「???」


さらに困惑されてしまった…。


アル君察しが悪いよ。
そんなんだから、学校生活で顔が良いのに告られることすらなかったんだよ。


ま、顔が良くてもエリオット様程では無いですけどね!
なんせ私の推しは完璧ですから!


「なんかわからんけどムカつく顔してるな…」
「おい、お前達!そこで何している!訓練中に女の取り合いでもしてるのか!!」
「げ…」
「あっちで違う騎士に絡んでたのに、もう来たのか」


ブチ切れた教官登場にアル君は心底嫌そうに、エリオット様は面倒くさそうに声を漏らした。




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感想 4

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みんなの感想(4件)

sanzo
2024.12.07 sanzo

面白いですね〜!


イッキ読みして途中で終わってる事に気付き、
「えっ!?」
なんてこった!

続きが読みたいので、宜しくお願いします🙇

ポンコツ鈍感エマが可愛いけど、当て馬スパダリ(まだダーリンでは無い)との攻防も良いですね✨️

取り敢えず、母と妹もどうにかしないとだし、先は長いかな〜

解除
めぐ
2024.04.20 めぐ

エマが可愛くて一気読みしちゃいました!
続きが気になるので再開お願いします!!

しあ
2024.04.20 しあ

コメントありがとうございます。
エマを可愛く思っていただけて嬉しいです!
出来れば来月中に再開出来るように頑張ります…!

解除
有希ママ
2024.04.06 有希ママ

と〰️っても天然で優しいエマ、可愛い~❤️
続きがとても気になるので、再開お願いしまぁ~す✨

しあ
2024.04.06 しあ

コメントありがとうございます!
楽しんでいただけて嬉しいです😊
直ぐにとはいきませんが、出来るだけ早く再開できるように頑張りますので、お待ちいただけると嬉しいです😅

解除

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