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しおりを挟む「思ったよりあっさり飲んだね…。まぁ、いいんだけどさ。切り替え早いな」
「切り替えの速さには自信がありますから!」
浪費癖がある母親と妹が次々と作る借金を目の当たりにしていたら、悲観するよりもまず働こう。って切り替えていくしかなかったもんね。
それのおかげか、結構色んなことをすぐに割り切れるし、気持ちを切り替えて行こうってなるからあまり落ち込んだりとかしなくなったかな。
なんて答えると、エリオット様が何故かまた頭を撫でくれる。
「今日の晩飯、エマの好きな物にしようか」
「?」
どうして急に?
今日は私の誕生日とかでもないんだけどな?
そもそもエリオット様は私の誕生日なんて知らないだろうから、誕生日だったとしてもこんなことを言われるとは思わないし……本当にどうしたんだろう?
「よし!これでようやく全員揃ったな!では、次の訓練へ移るぞ!」
5kmを走りっていた人達が全員ゴールへと到着したみたいだ。
私達は1位、2位でゴールしたから、それなりに休憩が取れたけど、今やっとゴールした人はほとんど休憩が無くて辛そうだな。
ホント、この教官は鬼畜だなぁ。
たまたまかもしれないけど、ゴール最下位の人がイケメンだった時は、いつも休憩なしで次の訓練に移る気がするな。
「次は剣術稽古だ!2人1組になって打ち合え!負けた方は罰として素振り500回だ!」
500回…次の日筋肉痛辛そうだなぁ。
そんな事よりも、私ぼっちなのですが…。
2人1組って言われたからエリオット様と一緒にさせてもらおうと思ったのに、そんなの出来るわけないだろって断られてしまった。
その後も別の人に声を掛けてみたけど、困ったように笑って断られてしまった…。
これは、前世で感じた疎外感そのもの!
クラスメンバーが奇数なのに、体育の授業で2人1組になって、と言われてバブられるやつ!
うわぁ…今世ではみんな仲良くしてくれたから、まさかハブられるなんて思っていなかった…。
でもそうだよね…急に訓練参加したぽっと出と一緒に組みたくなんてないよね。
「良かったら、俺と組むか?」
このままよくある、先生と組む。なんてことになるのか、と落ち込んでいると、お釈迦様が垂らした蜘蛛の糸のような神々しさで話しかけて下さる方がいた!
今、私はカンダタの気持ちがよく理解出来た!
この蜘蛛の糸、掴まずしてどうする!
「ありがとうございます!是非とも組ませてください!って、アル君?」
「よ!いつも遠目から見てて何となく似てる気がしたから話しかけてみた。やっぱりエマだったのか」
「うん、久しぶり。よく私だって分かったね」
「見覚えあったし、何よりルバーム様を見る目がガチだったからな」
エリオット様ガチ勢だから私だったと気付くなんて、さすが同士!
アル君は学園生活で唯一親しくしていた同級生だったんだよね。
仲良くなったきっかけは、どちらにも推しがいたということ!
アル君はガチ恋勢ではあったけど、人の推し活を否定することも無く、推しに対して互いに(一方通行で)熱く語り合った仲なのだ!
そんな同士がまさかここに居るなんて驚きだ。
「アル君は、卒業してからの推し活はどう?」
「まぁまぁかな、彼女の演奏会には毎回行ってるし、最近は花束を直接渡せる仲になったんだぜ!」
「そっかぁ、じゃあもう見てるだけじゃなくなったんだね。おめでとう」
「おう!けど、お前の方がオシカツ頑張ってんじゃないのか?推しのメイドとか凄すぎだろ」
それは私も感じてること。
私、優遇され過ぎでは!?
けど、せっかく頂いた機会を活用しなければ勿体ないので、このポジションはクビになるまで辞めるつもりはありません!
「どうやってメイドになんてなれたんだよ」
どうやって…。
「度々美味しいB級グルメを献上していたから、かな」
「びーきゅうぐるめ?ってのはよくわからんけど、美味い飯か…差し入れに持って行ってみるか…」
うーん…アル君の推しは年上だし、有名なフルート奏者だからB級グルメでお近付きになれるかは疑問だな。
勝手なイメージだけど、フルート奏者って、なんだか気品漂ってお淑やかな人って感じがする。
だからそんな人がB級グルメを食べてくれるかは謎だな。
けど、アル君が楽しそうだから放っておこう。
「それより、打ち合うなら全力で行くね」
「おう!安心しろ、お前相手だし手加減するからさ」
「ありがとう。そうしてもらえると助かるよ」
本当は手加減なんていらないって言いたいけど、負けたら素振り500回なので、慎重にいかないとね。
「「お願いします!」」
刃のない剣を構えて、いざ、尋常に勝負!
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