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しおりを挟む「なれるなんて思っていません!ただ、少しでも教官のような強い心と身体を手に入れたいと、日々訓練を見させていただいて思ったのです!」
「ほぉ?」
気分良さそうに片方の眉毛を上げた。
もう一押しかな?
「お願いします!少しの間だけでも私の夢を叶えさせていただけませんか!素晴らしい筋肉をお持ちの教官の元で、訓練を受けさせていただきたいのです!」
「ふん、俺に近付くなど到底無理だとは思うが、少しの間だけなら許可してやろう」
「ありがとうございます!」
やった!これで身体が動かせて、推しの訓練を間近で見られる!
「言っておくが、女だからと言って容赦はしない。俺の訓練に着いてこられなければ、直ぐに訓練をやめてもらうからな!」
「承知致しました!全力で着いていきます!教官!」
さぁ、他の人と同じ様に訓練に参加するぞ!
と意気込んで振り向くと、何故か周りから『マジかよ…』と言いたげな顔で見られる。
どうしたんだろう?やっぱり女の私が訓練に参加するのは抵抗があるのかな。
「ねぇ、あの男みたいにごっい身体が好きなわけ?」
「はい?私は今も昔もエリオット様の様な細マッチョがどタイプですが?」
どうして筋肉の好みなんて聞いてくるんだろう?
そして素直に答えたら片手で口を覆って横を向くのは何故?
「私の筋肉の好みに何か問題がありましたか?」
「いや、ない…。けど今のは不意打ち過ぎる…」
なにがだろう?
とりあえず私の筋肉の好みに問題はないってことでいいのかな?
「おい、そこ!イチャついてないで訓練を始めるぞ!」
「はい!教官!」
ビシッと敬礼すれば、満足そうに頷かれる。
よし、今から身体を存分に動かすぞぉ!
「ちょっと待って、本気で参加するつもり?冗談抜きでエマには耐えられないかもしれないんだぞ」
「その時は素直に訓練を止めます。でも、出来る所まで頑張ってみようと思います!」
「そう…エマがそう言うなら俺からはもう何も言えないな。無理だけはするなよ」
「はい!」
えへへ、エリオット様に心配されちゃった。
エリオット様と一緒に走れるなんて夢見たい。
山道を5kmくらい走らされているからか、涼しい顔をしていても汗が頭から流れてきてる。
そんなエリオット様の横顔は芸術的な程美しい。
カメラisどこ!
「エマは全然疲れて無さそうだね」
「それはエリオット様もですよね?」
「そうだけど、俺は元々それなりに鍛えてるし、男だからこれくらい問題ない。だけどエマはなんでそんなに余裕そうなの」
「私もそれなりに運動していたからだと思います」
寮から街に行く時は節約のために馬車を使わず走っていったり、バイトで力仕事をしていたりしていたからかな。
「運動で山道走れるようになるものなの?」
「どうでしょう?他の人は分かりませんが、私は出来るみたいです」
「そう、君っていつも俺の予想を軽く超えていくよね」
それってエリオット様の日常生活に驚きを与えられてるってこと?
推しの日常に変化を与えられるって凄いことじゃない?
「ふふふ、光栄です」
「なにが?よく分からないけど、楽しそうだね」
「それはそうですよ、だって訓練している間もエリオット様を間近で見られるんですから!」
「…………」
「あ、ちょっと待ってください!どうして急にスピードをあげるんですか!」
「ちょっと今は無理」
「なにがですか?」
今まで私に合わせて走っていてくれたのかな…。
全然追いつけない!足の長さの違いでこんなにも差が開くなんて…!
足の速さには結構自信があったのに、ここまでの差を広げられると落ち込むな。
私の足が遅いせいでエリオット様の顔も見れなくなったし…。
いい機会だから、この訓練で足を鍛え直そう!
エリオット様に置いていかれないように走れるように頑張ろう!
エリオット様を追いかけながらゴールすれば、エリオット様がタオルと水を渡してくれる。
嘘でしょ!?推しが私にタオルと水をくれた!?
「おつかれ」
そして労うように頭を撫でてくれる。
ふぉぉおおおおお!私を殺すつもりですか!?
最近ボディータッチは多いけど、こういうシチュエーションは漫画でよく見ていたからテンションが上がる!もう、キュンキュンしちゃう!
「このタオルと水筒は家宝に致します」
「大袈裟過ぎない?喜んでもらえたのは素直に嬉しいけどさ。取っとかないでちゃんと水分補給しなよ」
「…わかりました」
「なんでそんな渋々飲むのさ…」
だって、エリオット様が渡してくれた水ですよ!?
これを永久保存しなくてなんとする!
推しからもらったものを飲むなんて、私には出来ない!
「俺からもらったからって、そんな大切に取っておく必要ないだろ?一緒に街へ行った時は普通に飲んでたしさ」
「あ、それもそうですね。せっかくエリオット様と同じものが飲めるのですし、水を保存して観賞用にするよりも、今この瞬間の思い出の方が貴重ですね。飲みます!」
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