当て馬役推しの私は、彼の幸せを切に願っています……が、この状況はどういうことでしょうか!?

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「でも、私がどう思ったかより、その想い人に質問される方が良いと思うのですが?」
「うん、だからしたんだよ」


え、私に質問する前に既に想い人に質問していたの!?
行動が速い!流石私の推し!


だけど、どうして私にも第一印象を聞いたんだろう?
エリオット様は結構人からどう思われているかを気にするタイプなのかな?
私もそれなりにエリオット様とは仲が良くなったから質問されたのかな。


マンガではヒロイン以外には無関心キャラとして描かれていたのに、実はどう思われているか気になるタイプだったとは………可愛いな。
さらに推せちゃう!やっぱり公式が最大手!
新たな一面を見れてどんどん沼にハマっていく…。


「ところでエマ」
「は、はい、なんでしょうか」


また思考を飛ばしていたらいつの間にかエリオット様が近い!


さっきまで腕を伸ばせば届いた距離に居たはずなのに、今は手を伸ばさなくても触れられる距離にいる。
そして、顔が段々と近付いてくる。


何だこの状況は…!


「夜なのにドアを簡単に開けるなんて、危機感が足りないんじゃないか?」
「危機感…ですか?」
「ドアを開けた相手に襲われる可能性だってあるんだよ」
「そんな、私相手に襲う人なんてこの屋敷に居るとは思えませんよ」


それに用意して頂いた部屋は、なんとエリオット様の部屋の隣!
なぜこんな恐れ多い場所に部屋を用意して頂けたのかは分からないけど、次期当主の隣部屋なのだから、セキュリティが強化されていて不審者なんて入って来られないはず。


「本気でそう思ってる?」


な、何故だろう…。
口角が上がっているのに笑っているように見えない。
それに、どうして更に私に近付いてきているのですか…!


「どうして逃げるの?」
「それは、エリオット様が近付いてこられるので…」
「行き止まりだね」


後ろに下がっていくと、背中が壁に着く。
おかしいなぁ、こんなこと前にもあった気がするな。


そうそう、こうやって壁に追い詰められて、逃げないように両腕で壁ドンされて…。


「あ、あの、顔が少し近い様な気がするのですが…」
「うん、そうだね。近付けてるからね」


何故!?


「エマは危機感が足りなさ過ぎる」
「そんなことはないですよ…?」
「異性の俺を部屋に上げてるのに?それもこんな夜遅くに」
「それは…だって、エリオット様ですし…」
「それってどういう意味?」


どういう意味って…。


「俺になら何されても……良いってこと?」
「!?」


み、耳!
唐突に耳元でそんなイケボやめて!
心臓に悪過ぎる!


それにどうしてそんなに色気が出てるんですか!
割と真面目に口から心臓が出そうなんですけど?
お風呂上がりのいい匂いに包まれて酔いそうなんですけど…。


というか、もしかして私が使わせてもらったものと同じ石鹸?匂いが似てる…。


うわぁ、マジか!推しと同じ匂いとか興奮するわ!
きっといいお値段のものなんだろうけど使わせてもらえたことに感謝を…!


「…………こんな状況で拝まれたのは初めてなんだけど」


はっ!しまった!
思わず手を合わせて神に祈りを捧げてしまった!
そういえば私、壁ドンされてましたっけ…。


「今までの子達はこれで顔を赤くしてたのに、エマには全然効果なしか……なんか凹むかも」
「え、あ、違うんです!」


どうしよう、私の思考がまたトリップしてしまったせいで推しを落ち込ませてしまった!


「ちゃんとドキッとかしましたよ!しましたけど、それよりもエリオット様のお風呂上がりの香りが良くてドキッとした事を忘れてしまったと言いますか…あの、他の人なら全然顔を赤らめていたと思いますから大丈夫です!」
「なにが大丈夫なんだよ」


それは私も分かりません。
だけど、私みたいに思考がトリップしない人なら100%顔を赤らめて堕ちていたと思いますよ!
あの一途なヒロインだって顔を赤らめてましたしね!


「エマじゃなきゃ意味ないんだよ…」
「はい?何か言いましたか?」
「別に」


いや、絶対何か言いましたよ。
だけど聞いても答えてくれないんだろうな。
なんて思っていると、エリオット様の身体が離れていく。


「冗談はこのくらいにして。今後一切、夜に訪問してくる人を部屋に上げちゃダメだからね」
「それは、エリオット様もですか?」
「…………それは、時と場合による」


その、時と場合ってなんですか…。
エリオット様なら無条件で部屋に入ってもらってもいいってわけじゃないんですか?


「とにかく、女性が簡単に男を部屋に入れるなってこと。夜に男を入れるってどういう意味かわかってんの?」
「えっと…一応意味は理解しておりますが?」


夜に男女がすることなんて1つ。
だけど、それは結婚していたり恋仲であったりする人達の話であって、私には関係ない事だと思うんだけど。
それに、相手は雇い主のエリオット様なんだから入出を断る理由なんて無いよね?


「………マジか」


あれ?手で頭を押さえて呆然としている…?
その表情をしている意味は分からないけど、そんな顔も絵になる。まさに眼福。頼むから誰かカメラを作ってくれ!切実に!


「エマの感覚がおかしいだけ?それとも俺が男として意識されて無さ過ぎ…?」
「あの、どうかされました?大丈夫ですか?」
「いや、あんまり大丈夫じゃないかも………おやすみ、今日はもう寝るから」
「あ、はい。では、お部屋までお送りしましょうか?」


隣の部屋だけど。


「いや、エマにそんなことはさせられないから。それより戸締りはしっかりして寝てね」
「はい、承知しました…」


どうしたんだろう…。
少し落ち込んでいるように見えた気がしたけど、何があったんだろう。


最近のエリオット様はたまに感情の起伏が激しくなる気がすな。何か悩み事でもあるのかな?
明日のお茶はリラックス効果のあるカモミールティーにしてみようかな。


あ、でもエリオット様は自分が用意した茶葉しか飲まないから、私が用意したものは飲んでもらえないかもしれないな。





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