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「ありがとう、そこに置いといて」
「かしこまりました」
書類から目を離さずにお礼を言われ、指示された場所にお茶を置く。
メイド相手にお礼を言ってくれるなんて神かな?
バイトで貴族令嬢方のお茶会のお茶汲みをした時はいつも存在自体無視されたのに…!
やっぱり推しは最高の人間だ!人として本当に出来てる!
そんな人の下で働くことが出来る私は幸せだなぁ。
推しの仕事している姿が見放題でお金までもらえるって好待遇すぎるよね。
でも、何もせずにこうやって控えてて良いのかな?
お茶会でバイトした時は、お茶を淹れたりケーキを取り分けしてそれ以外は待機。
だったけど、じっとしているのが性にあわなくて自ら志願して厨房の手伝いに入ったりしていたなぁ。
エリオット様が真剣に書類を読んでいる姿を絵姿にして部屋に飾りたいくらい見ていて眼福!なんだけど…。
正直待機しているだけなのが辛い!
推しを眺められるのは幸せだけど、お仕事ならなにか作業が欲しい!
前世が社畜だったからか、貧乏貴族に生まれて8歳からバイトを始めて忙しなく働いていたからか、待機してのんびりお仕事が辛い!
いや、忙殺されるよりもゆったり構えている方が身体的にも精神的にもいいとは思う。
だけど、何もせずに仕事中に推しを眺めて喜んでいるのは罪悪感がすごい…。
なにか仕事を下さいって聞いてもいいのかな。
でも頼まれても無いのに自分から雇用主に言いに行くのって失礼だよね。
用があれば呼ぶよ。って感じだろうし。
だけどなぁ…ものすごく手持ち無沙汰。
主に呼ばれるまでは傍で控えて待て。世のメイド様方は本当に凄い。今更分かったけど、私ってメイドに向いてないな。
「ねぇ…」
「はい。なんでしょうか」
メイドに向いていない事に気付いた直後にエリオット様からお声がかかる。
「ちょっとこっちに来て」
「はい」
ちょいちょいっと手招きされたのでエリオット様の隣まで近付いていく。
「どうされました、っわ!」
御用は何か聞こうとすると、突然腕を引っ張られて体勢が崩れる。
床に倒れる。そう思って手を着こうとするけど、床に手が触れることはなく、代わりに背中に温かいものが触れる。
「え?」
これは一体どういうことだ?
倒れると思って目を閉じて開ければ、何故か私はエリオット様の膝の上に居ました。
いやいやいやいやいや!意味がわからん!
どうして私が推しの膝の上に!?
それも後ろから抱えられるような形で座ってるの!?
「あの~これは一体どういう状況でしょうか?」
「なんか百面相してたから、言いたいことがあるなら聞こうと思って」
働く人の意見を聞こうとするなんて、エリオット様は良い上司だ。って、そうじゃない!
「あの、話を聞くだけならこの体制になる意味は無いと思うのですが…」
「これは俺がしたいからしてるだけ。気しないで」
いや、気になるに決まってるでしょ!
俺がしたいからって何!?
そのセリフはヒロインが困ってて助けた時にお礼を言われて返す決めゼリフでしょ!なのになんで私に言ってるの!?
正直推しシーンを生で聴けて幸せ以外の何物でもないんですけどこの状況のせいで素直に喜べないんですけど!
推しの膝に座って背中がピッタリ胸板にくっついちゃって心臓バクバクなんですけど!汗が出てきたけど私汗くさくないよね?推しに臭いとか言われたら軽く死ねるんですけど!
汗で前髪がおでこにピッタリくっ付いて恥ずかしいし!お願いだから離してください!
「それで、何考えてたの」
テンパりまくって意味がわからなくなってる私と違って、私を抱えながら書類仕事を再開させたエリオット様はいつも通りの口調で聞いてくる。
テンパってるのは私だけ!?
何故そんなに普通に作業がこなせるんですか!
元遊び人ならこんな事朝飯前ですか。そうですか。
というか、私なんかに書類見えるようにしちゃダメでしょ。コンプライアンスに関わってくるよ。
前世と違って情報の取扱は緩いけど、国家に関わる書類とかもあるみたいだから取扱には十分注意しないと!
それにしても見にくい資料だな。
もっと表とか入れれば見やすくなるだろうに。
ちょっと、ここ計算間違ってるじゃん。大きい数字の方は分からないけど1桁代で間違ってるって。
エリオット様も気付いたのかメモ用紙に数字書いて計算し始めたし、二度手間!効率悪!
「表計算ソフトとまでは言わないから、せめて電卓があれば…」
「デンタク?ってなに?」
「へ!?」
まずい、声に出てたみたい!
目立ちたくないから前世の知識は極力人前で話さない見せないを徹底していたはずなのに、こんな所でボロを出してしまうなんて…。仕事効率を真面目に考えた私のバカ!
「かしこまりました」
書類から目を離さずにお礼を言われ、指示された場所にお茶を置く。
メイド相手にお礼を言ってくれるなんて神かな?
バイトで貴族令嬢方のお茶会のお茶汲みをした時はいつも存在自体無視されたのに…!
やっぱり推しは最高の人間だ!人として本当に出来てる!
そんな人の下で働くことが出来る私は幸せだなぁ。
推しの仕事している姿が見放題でお金までもらえるって好待遇すぎるよね。
でも、何もせずにこうやって控えてて良いのかな?
お茶会でバイトした時は、お茶を淹れたりケーキを取り分けしてそれ以外は待機。
だったけど、じっとしているのが性にあわなくて自ら志願して厨房の手伝いに入ったりしていたなぁ。
エリオット様が真剣に書類を読んでいる姿を絵姿にして部屋に飾りたいくらい見ていて眼福!なんだけど…。
正直待機しているだけなのが辛い!
推しを眺められるのは幸せだけど、お仕事ならなにか作業が欲しい!
前世が社畜だったからか、貧乏貴族に生まれて8歳からバイトを始めて忙しなく働いていたからか、待機してのんびりお仕事が辛い!
いや、忙殺されるよりもゆったり構えている方が身体的にも精神的にもいいとは思う。
だけど、何もせずに仕事中に推しを眺めて喜んでいるのは罪悪感がすごい…。
なにか仕事を下さいって聞いてもいいのかな。
でも頼まれても無いのに自分から雇用主に言いに行くのって失礼だよね。
用があれば呼ぶよ。って感じだろうし。
だけどなぁ…ものすごく手持ち無沙汰。
主に呼ばれるまでは傍で控えて待て。世のメイド様方は本当に凄い。今更分かったけど、私ってメイドに向いてないな。
「ねぇ…」
「はい。なんでしょうか」
メイドに向いていない事に気付いた直後にエリオット様からお声がかかる。
「ちょっとこっちに来て」
「はい」
ちょいちょいっと手招きされたのでエリオット様の隣まで近付いていく。
「どうされました、っわ!」
御用は何か聞こうとすると、突然腕を引っ張られて体勢が崩れる。
床に倒れる。そう思って手を着こうとするけど、床に手が触れることはなく、代わりに背中に温かいものが触れる。
「え?」
これは一体どういうことだ?
倒れると思って目を閉じて開ければ、何故か私はエリオット様の膝の上に居ました。
いやいやいやいやいや!意味がわからん!
どうして私が推しの膝の上に!?
それも後ろから抱えられるような形で座ってるの!?
「あの~これは一体どういう状況でしょうか?」
「なんか百面相してたから、言いたいことがあるなら聞こうと思って」
働く人の意見を聞こうとするなんて、エリオット様は良い上司だ。って、そうじゃない!
「あの、話を聞くだけならこの体制になる意味は無いと思うのですが…」
「これは俺がしたいからしてるだけ。気しないで」
いや、気になるに決まってるでしょ!
俺がしたいからって何!?
そのセリフはヒロインが困ってて助けた時にお礼を言われて返す決めゼリフでしょ!なのになんで私に言ってるの!?
正直推しシーンを生で聴けて幸せ以外の何物でもないんですけどこの状況のせいで素直に喜べないんですけど!
推しの膝に座って背中がピッタリ胸板にくっついちゃって心臓バクバクなんですけど!汗が出てきたけど私汗くさくないよね?推しに臭いとか言われたら軽く死ねるんですけど!
汗で前髪がおでこにピッタリくっ付いて恥ずかしいし!お願いだから離してください!
「それで、何考えてたの」
テンパりまくって意味がわからなくなってる私と違って、私を抱えながら書類仕事を再開させたエリオット様はいつも通りの口調で聞いてくる。
テンパってるのは私だけ!?
何故そんなに普通に作業がこなせるんですか!
元遊び人ならこんな事朝飯前ですか。そうですか。
というか、私なんかに書類見えるようにしちゃダメでしょ。コンプライアンスに関わってくるよ。
前世と違って情報の取扱は緩いけど、国家に関わる書類とかもあるみたいだから取扱には十分注意しないと!
それにしても見にくい資料だな。
もっと表とか入れれば見やすくなるだろうに。
ちょっと、ここ計算間違ってるじゃん。大きい数字の方は分からないけど1桁代で間違ってるって。
エリオット様も気付いたのかメモ用紙に数字書いて計算し始めたし、二度手間!効率悪!
「表計算ソフトとまでは言わないから、せめて電卓があれば…」
「デンタク?ってなに?」
「へ!?」
まずい、声に出てたみたい!
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