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しおりを挟む謝って許されることかは分からないけど、誠心誠意謝罪しよう。
「ルバーム様へのジュースをタダにしてもらおうとしてすみませんでした!私の家が貧乏だったのでタダという言葉につい喜んでしまったせいでルバーム様のプライドを傷付けてしまって申し訳ありませんでした!!」
「………………は?」
あれ?
勢いよく頭を下げて様子を伺っていると、頭上から困惑したような声が聞こえてくる。
「なんで俺がそんな事でプライドが傷付くんだよ…」
「え…違いましたか?」
「むしろ何でそうだと思ったんだよ…。俺そこまで心狭くないつもりだけど?」
怒っていた原因が予想していたものとは違った事に驚きが隠せない。
だけど、それなら理由はなんだったんだろう。
考えても分からないことは素直に聞くのが1番。
「では、何が気に入らなかったんですか?」
「結構歩いたから喉が渇いたな。せっかく買ったんだから飲もうか」
あからさまに話を逸らされたー!
なぜ!?これじゃあ何に怒っていたのか分からないんですけど!
「ほら、エマも一緒に飲もうよ」
くっ、理由は知りたいけど、きらめく笑顔でジュースを渡されれば何もかもどうでも良くなって追求なんてで出来なくなる…!
「ありがとうございます!」
推しの笑顔に負けて、こちらも笑顔でジュースを受け取ってしまう。
でも負けたっていい!何故なら推しが私に笑顔を向けてくれるから!
「ああ、美味しい~」
推しに笑顔で渡してもらったからいつもの何倍も美味しい。
「悔しいけど…美味い」
どうして悔しがっているんだろう?
「でも、傷んだものとはいえ、よくハウスフルーツなんて手に入るね」
「ああ、それはクラウスさんの知り合いに貴族の方がいるので融通してもらえるみたいです」
「よく知ってるね…あいつのこと」
あいつ?
なんとなくだけど、この人はクラウスさんの事が嫌いなのかな?あまりクラウスさんと話していないはずなんだけど、生理的に苦手だったのかな。
「あれ?エマちゃんどうしたの?かっこいい人なんか連れて、デート?」
急に声を掛けられて声の方を向けば、花屋の一人娘マリアが興味津々でこちらを見ていた。
「ちょっと、違うよマリア!私は道案内してるだけ!」
「え、そうなの?なら私が狙ってもいいの?」
「いいわけないでしょ!」
見るからに上流貴族な彼に本気で言い寄ろうなんて思ってはいないだろうけど、私が居るから軽口を言ってくるマリアに冷や汗が出る。
この人は私のような貧乏貴族と違ってふざけて良い方じゃないんだから!場合によっては不敬罪になって捕まるから!
「あの、私どうですか?」
って、普通に話しかけちゃってるし!
心の広い方だから即打首とかはないと思うけど流石に気軽過ぎるよ!
「ちょ、」
「ごめんね。俺は心に決めた人がいるから、君がどんなに魅力的でも彼女以外は愛せないんだ」
止めようとすると、本人が直々に返事をしてマリアを魅了する。
「へ、あ、は、はい!」
わかる。分かるよマリア。正面から笑顔を見たら意識飛びそうになるよね。それに、ここではこんな風に優しく話す男性も少ないから余計にハートを撃ち抜かれたんだよね。
だけど残念マリア、彼の心の中にはまだヒロインという大きな存在が胸の中を占めていてるから新たに恋をしようとなんて考えていないと思うよ。
まぁ、そうじゃなかったとしても平民のマリアに可能性はほぼ無いと思うけどね。もちろん私も。
「あ、あの!うちで売っている花なので良かったらもらって下さい!」
「いいの?君みたいに可憐で可愛い花だね、ありがとう」
「そ、そんな!良かったらお店にも来てください!お待ちしてます!エマ、絶対連れてきてね!ジョンもクルトもエマが男の人連れてるって騒いでたからまた行ってあげて!じゃあね!」
「え、ちょっと」
「それでは、失礼します」
「ああ、花をありがとう」
突然現れて嵐のように去っていった…。
それに、照れながらもしっかりと店の事まで伝えていくなんてちゃっかりしているな。
流石、売上の女神マリアという二つ名は伊達じゃないな。
なんてマリアの後ろ姿を見送ってると、ポンと肩に手を置かれる。
「で、ジョンとクルトって誰?」
「ひっ!ど、どうしたんですかルバーム様」
何故だろう、笑顔なのに全然笑っているように見えない。
どうして問いつめられるよう目で見られているの。
「いいから、ジョンとクルトって誰なの」
今度は無表情。
知ってる?美人の無表情ってかなり怖いんだよ?
いつもは無表情ながらも温かさはあるんだけど、何故か今日は全然温度がないな。
私、また何かしちゃった…?
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