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しおりを挟む異性として気になる…?
誰が誰を?
私がクラウスさんに?
「いや、ありえませんよ」
ありえなさ過ぎて思わずチベットスナギツネのような顔になってしまう。
「だってあの人、結婚して子供もいますし、口を開けば2人の惚気話しかしないんですよ?バイト中ずっと妻子の話ばっかりで、私をバイトに雇った理由も妻子の話をちゃんと聞いてくれそうだから、ですしね」
「じゃあ、あの男を特別に想ってたりは」
「しません!絶対にありえません!」
それに私はクラウスさんの奥さんと子供さんとも仲が良い、むしろ2人との方が仲が良い。
なのでクラウスさんに対して本当に何も思っていない。
強いて言うなら、仕事の同僚のような感じで気楽に話をさせてもらえて付き合いが楽な人、かな。
「そう…ならいいや」
「そう、ですか…」
何がいいのだろう?
そもそも質問の意図はなんだったんだ?
よく分からないけど、とりあえずーー。
「手を離してもらってもいいですか?少し痛くなって来たので…」
「あ、悪い!つい、強く掴みすぎた」
推しに掴まれるなんて恐悦至極なのですが、流石に痛みには耐えられなかったです…。
すみません、私の推しへの愛が思ったよりも強くなくて…。
多分青アザにある程度のものだけど、そんな痛みに耐えられずに推しに離してほしいなんて、私はどれだけ堪え性がないんだ。
「すみません…」
「なんでエマが謝るんだよ。俺に余裕がなかったせいでこんな事になったんだから、俺のせいだろ」
「いえ、そんな!これくらいすぐ治りますから気にしないで下さい!」
お、推しが落ち込んでいる!
それも私が原因で!こういう時どうすればいいの!?
「嫁入り前の女性に怪我させといて気にしないのは無理だろ」
「嫁入り前って…確かにそうですけど、別に残るようなものでも無いですし、残ったとしてもこれが原因で結婚を拒否する様な人ならこっちからお断りなので問題ありませんよ!」
「いや、問題あるだろ。エマの家に縁談持ってくるところなんて訳ありが殆どだろうし、傷があっても良いなんて言う奴は絶対ろくな奴じゃないから」
うっ…それは否定できない…。
メリットの少ない貧乏なウチに縁談を申し込もうなんて人は少ないだろうし、傷物でもいいなんて言う人は余計に何か裏がありそう…。
「責任は取るから」
「いえ、そんなに責任を感じられることは無いですよ!最悪結婚しないという選択肢もありますから!」
「それはエマの両親か許すの?」
「…………いえ、無いですね」
絶対に許さないだろう。
両親は私の結婚を機に貧乏貴族から抜け出す事しか考えていないし、最悪かなり年上のアブノーマルな人に嫁ぐ可能性も無きにしも非ず。
「なら、俺が責任取るから」
「いやいやいや!待って下さい!ただ手首を少し掴まれたくらいで結婚に響くようなものにはなりませんから!なので大丈夫です!」
私も少し最悪な結果を考えてしまったけど、今まで色んなバイトを経て散々怪我をしてきたから分かる。
これはあとが残らない!
なので責任を取っていただく必要も無い!
それに推しにそんな事をさせてしまうなんて申し訳なさ過ぎる!
「…いや、責任取るに決まってるだろ。ほら、手を貸して」
「え…?」
手を再び掴まれたかと思うと、掴まれた部分が暖かくなり痛みが引いていく。
あ、なるほど。
責任取るって、跡が残らない様に魔術で治療するってことだったのか。
冷静に考えればそうだよね。
真剣な顔で言われるから、責任取って結婚するって意味なのかと勘違いしてしまった自分が恥ずかしい。
「どう?まだ痛んだりする?」
「あ、いえ!もう元通りです!ありがとうございます!」
「いや、元々は俺のせいだから感謝される必要は無いんだけど…どういたしまして」
どういたしまして。と言いながら小さく笑うのいい!
いつもは大人びた表情だけど、笑うと年相応になるのはとても良い!可愛い!
なんだか今日は色んな推しの表情が見れて幸せだなぁ。
お店を出る時は珍しく不機嫌そうな顔をしてたし…。
「あ、さっきはすみませんでした」
彼の笑顔で一瞬忘れそうになっていたけど、クラウスさんとのやり取りで不快な思いをさせてしまった様なので謝罪しておかないと。
「なんでエマが謝るんだよ。謝るなら俺の方だろ」
「そんな事はありません。私がルバーム様の気持ちも考えずにクラウスさんと話をしたせいで不快な思いをさせてしまったのですから」
「俺が、何に怒ってたのか気付いていたのか…?」
やっぱり怒っていたんだ!
どれだけ気さくだったとしても、貴族と平民という立場は変わらない。だからこそ、平民から施しを受けるなんて許せなかったんだろうな。本当に申し訳ないことをしてしまった…。
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