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「ここのスペシャルサンドが前に食べて頂いた物で私のイチオシメニューなんですけど、こっちの野菜サンドもソースが野菜の味を引き立てていてすごく美味しいんですよ!」
「へぇ、じゃあ今度は野菜サンドを食べてみようかな」
「承知致しました!」


推しが食べてみたいと言っているのなら頼むしかない!


「おばちゃん!野菜サンドとスペシャルサンド1つずつ!」
「あいよ。今日はサラダオマケしとくね」
「やったー!いつもありがとうねおばちゃん!」
「エマちゃんにはいつも手伝ってもらってるからね。すぐ包むから彼氏と待っときな!」
「ちょっ、おばちゃん!彼氏だなん」
「仲良いんだ」


て彼に失礼にも程がある!と言おうとする前に言葉を遮られてしまって完璧に否定しきれなかった。
でも、推しに話しかけられれば何を置いても返事をしなきゃと思うのがファンと言うもの!(個人の感想です)


「そうですね。あの人は1人でお店をしているんですけど、たまに腰の調子が悪くなるみたいなので時間がある時は手伝いをしたりしていたんです。なので、そういう事もあって結構可愛がってもらっているんです」
「エマがここで売ってたりしてたの?」
「はい」


少し驚いた顔をする彼に笑顔で返事をする。
彼の知っている貴族令嬢なら、サンドウィッチを自身で販売するなんてありえないんだろうな。


だけど、私の家はなんと言っても貧乏!
お小遣い稼ぎにお針子したり色々とバイトをしていたので販売の手伝いになんの抵抗感もない。
むしろ、前世でコンビニとか販売のアルバイトも掛け持ちでしていたことがあるので接客は結構得意だったりする。


「ふーん。知ってたら買いに来てたのに」
「へ?ルバーム様がですか!?そんな!言っていただければいつでもお持ちしましたよ!」
「どこにいるかも分からないエマにどうやって頼めば良かったんだよ」
「あ…」


そうですよね~。
学校にいた時は顔を合わせないように隠れていたし、名前だって卒業パーティで伝えたばかりですもんね…。


「野菜サンドとスペシャルサンドお待たせ~!」
「ナイスタイミングおばちゃん!」
「うん?なにがだい?」
「いや、こっちの話、ハハハ。じゃあ、これおかn…」
「代金はこれで、お釣りは取っていて下さい」


救世主のように現れたおばちゃんに代金を渡そうとすると、私より先に彼がおばちゃんにお金を渡してしまう。


「そんな!悪いです!ここは私が出しますよ!」
「一緒に来たのにエマにお金を出させるわけないだろ」
「でも…」
「こういう時は、男に格好つけさせるもんなんだよ。では、サンドウィッチいただきますね。行くよ」


私のおでこを人差し指で優しくツンっとつついてからサンドウィッチの袋と私の手首を掴んでスマートに店を出る彼に、何も言えずに見とれることしか出来ない。


店を出る時に後ろでおばちゃんが「良い彼氏じゃないか!また次も二人で来な!」って言ってくれているけど、彼氏でもないし多分次なんてものもないよ。
そう言いたいけど、今は何も言えない。


だって…。


推しにおでこツンって!!!!
おでこツンってなに!?
ちょっと拗ねたように言うのが可愛かったんですけど!!!
てか、あのセリフってヒロインにも言っていたセリフじゃない!?なんで私なんかに!?


ヒロインだけに言うセリフじゃないの?
それとも、お金を出そうとする女性には須らくそう言っている?


よく分からないけど、ヒロインの疑似体験が出来て幸せでした!!この記憶があれば誰と結婚しても幸せな人生を送れような気がしてきた!
ありがとう推し!やはり貴方は私の生きる希望です!!


「ちょうどベンチがあるから、あそこに座って食べ……って、なんでそんな輝いた目で俺の事見てるんだよ…」


おっと、推しからのファンサ(自己解釈)で舞い上がって見つめ過ぎた。
そのせいでかなり引かれてしまったみたいだ。
だけどそんな事はどうでもいい!
だって今日を過ぎれば推しと会うことなんて無いだろうから!


 「あ、次におばちゃんに会った時は、ちゃんと彼氏では無いと否定しておくので安心して下さ……イタッ!」


え?何故か今度はデコピンされたんですけど!?
え?え?え?私何か気に触ること言った!?
次じゃ遅すぎるんだよ!って事?


「次じゃなくて今からすぐに否定してきますね!」
「いや、いいから!」
「え、でも…」
「はぁ…もういいよ。いいからサンドウィッチ食べるよ」
「?分かりました」


彼氏の事を否定するよりもサンドウィッチを食べる方が大事なの?お腹が空いているのかな?


そういえば、私が持って行ったものは少し量が多いかなと思ったものでも全部食べてくれていたみたいだし、彼は見た目によらず食いしん坊キャラなのかもしれない。



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