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「お嬢様!お嬢様!!起きて下さいませ!お嬢様!」
「んんん?なぁに?」


昨日は遅かったから今日は久しぶりに昼まで惰眠を貪ろうと思っていたのに、メイドのエイミーによってか叩き起される。


「今何時?」
「もう朝の10時でございます!」
「んー、ならあと2時間寝かせて…」
「いけません!早く起きて支度をなさってくださいませ!」


支度ってなんの?
今日は何も予定はなかったはずなんだけど。


「お客様がお見えです!」
「え?私、誰とも会う約束なんてしてないはずなんだけど」
「そんなことを言われても現に来てらっしゃいます!今は旦那様が御相手されてますから急いで下さい!」


約束してないんだから今は会えないって追い返せないの?
それとも、おい返せないような相手?
わざわざお父様が相手をしてくれてるならその可能性は高いけど、そんな高貴な方が私になんの用?


「急いで下さい!」
「はーい…」


誰かは分からないけど、起きないともっと面倒なことになりそうだし早く支度をしてお客様に会いに行きますか。


「お待たせいたしました。エマ=グランテでございます」
「エマ!やっと来たか!ははは、申し訳ありません。どうやら娘は昨日のパーティが楽しかったのか夜寝付けずに起きるのが遅くなってしまったようで、な!」


痛い。
緊張してるのか分からないけど、いつになくテンションが高いお父様が私の肩をバシバシ叩いてくる。


別に夜寝付けなかったから起きなかった訳では無いんだけど、ここで素直に惰眠を貪っていた、なんて言ったらお父様がストレスで禿げるかもしれないので話を合わせておくか。


「そう…」
「ふーん。昨日のパーティ、そんなに楽しかったんだ?」
「え!ル、ルバーム様!?どうしてここに!?」


お父様の話に同意する前に話を遮られてしまったが、聞き覚えのある声に思わず声が裏返りそうになる。


な、何故に推しが我が家に!?
なにゆえそんなに良い物でもないソファに座ってらっしゃるの!?お客様って、もしかしなくても推し?
推しが寝起きで見れるなんて、それなんてサービス??
いや、もう何が何だかわからんのですが!?


それに…お父様がいるからかいつも私といる時と違って爽やかに微笑まれていて寝起きの目には眩しすぎるのですが!!


「それでは、娘も来たことですし私はこちらで失礼致します」
「わざわざお相手いただきありがとうございました」


ちょっとお父様!私が来たからって出て行くの早過ぎない!?それに、何故だかエイミーまで居なくなってるんですけど!未婚の娘と未婚の男性を一緒にしていいんですか!?
未婚で変な噂が立てば結婚しずらくなるんですけど!?


「とりあえず、座ったら?」
「え、あ、そうですね。それでは、失礼致します」


私以外居なくなったからか、彼はいつも通りの無表情になって話し方も少しぶっきらぼうになる。
そんな彼のいつも通りの態度を見てこちらも冷静になる。


私と彼では釣り合いが取れなさ過ぎるから、変な噂が立ったとしてもきっとデマだって思われるよね。
それなら別に焦る必要なんて無いか。


「それで、一体どうして私の家に来たんですか?」


もう会えることは無いと思って居たから、正直推しに会えるのは嬉しい。
だけど、どうして家まで訪ねてきたんだろう?
私たちの関係は食べ物を渡して受け取るだけの関係性しかなかったはず。間違っても家に招いたりする関係ではないはずなのに…。


「あ!もしかして、サンドウィッチのお店などを知りたくて来てくれたのですか!」
「え…?」


手紙で伝えるって言ったけど、手紙を待てないほど知りたかったのか!そっかそっかぁ、そんなに気に入ってもらえたなら渡した甲斐があったって物よ!


「ちょっと待ってくださいね、今場所とおすすめのメニューを書きますから!それと、他のお店もでしたっけ?」
「え、あ…まぁ、いいか」
「?何か言いました?」
「いや。それより、書いてもらうより実際に案内してもらえた方が嬉しいんだけど。だから今から案内してくれない?」
「今からですか?いいですよ」
「いいんだ…」


もちろんですよ!今すぐ知りたいほど食べたいなら行くしかないよね!
少しでも推しの役に立てるのなら何処へだって案内致しますよ!


「もちろんですよ!他にも、知りたい場所があれば言ってください!もう卒業したので用事なんて結婚についての事だけですし、いつでも言ってください!」
「ふーん。そ。じゃあ、お願いするよ、エマ」
「!」


不意打ちの推しからの名前呼びは心臓に悪い!
心臓がドキってしたんですけど!?
案内するって言ったけど、よくよく考えたらこれって2人でお出かけってことては…デー………いや、これ以上深く考えることはやめよう。


とりあえず、推しとまた同じ空間に居れる喜びを噛み締めよう!!

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