当て馬役推しの私は、彼の幸せを切に願っています……が、この状況はどういうことでしょうか!?

しあ

文字の大きさ
上 下
10 / 32

10

しおりを挟む



「何?そんなに俺の顔見て」
「やっぱりルバーム様はイケメンだな、と思っていただけです」
「っ、」
「大丈夫ですか!?」


突然足がもつれそうになったので慌てて彼の体を支える。


「大丈夫。ちょっと石に躓いただけだから」
「そうなんですか?どこも怪我とかしていませんか?」
「別に何ともないよ。それより、曲が終わったな」
「そうですね。ありがとうございました」


リードのおかげで人生初めてミスせずに踊りきれた!
そんな記念すべき初めてを推しと踊れたなんて、私は今日が命日なのかもしれない。


学校に通った3年、食べ物を渡し続けた約1年。
毎日推しを見て幸せを感じた日々だった。
そして、卒業パーティでは踊ってもらえて、きっと私は一生分の運を使い果たしたと思う。


だけど、この日々があったからこそ、これからの人生を乗り越えていけそうだ。


「あのさ、あんたって俺が落ち込んでないと会いにこないの?」


ん?何故今そんなことを聞かれているんだろう?
落ち込んだ時以外に話しかけるきっかけもないし、私みたいなモブに絡まれるのは面倒だと思うから会いに行かなかったんだけど…。
それに彼は学年問わずモテてるからよく女子に話しかけられていて忙しそうだし。


「魔術大会の後から全然姿見せないし、学校で探してみても全然見つかんないし。俺避けられてんのかと思ってた」
「え!さ、避けてなんてないですよ!私の方は毎日ルバーム様の事見てましたし!」
「なら、なんで話しかけてこなかったんだよ」
「それは、きっかけがなくて…」
「きっかけとか無くても挨拶するとかあるだろ」


まぁ、そうなんですけど。
私的には何も無いのに推しに話しかけるって結構ハードル高いんですよ!
というか、なんかちょっと怒ってる?
知り合いなんだから挨拶くらいしろよってこと?


いやいや、推しであるのもそうですし女子に囲まれてる中に挨拶しに行くとか無理ゲーですよ!
私が食べ物を持って行ったり出来たのは、彼が1人だったっていうのが1番大きいんですからね!


「花火の時は普通に渡しに来ただろ」
「うっ…」


私の心の声を見透かしたように言われて言葉につまる。


「あの時は…人は居ても学校じゃなかったので…。あ!あ!料理が冷めますし!一旦食べませんか!?」
「……あんた、話逸らすの下手過ぎるだろ」


それは否定出来ない…。


「ま、今回は見逃してあげる」


今回って、卒業したらもう会うことがないのにそんな言い方をするなんて、私に気を使わせないようにしてくれているのかな。


「そういえば、あんたの名前教えてよ」


お皿からつまみながら彼が私に名前を聞いてくる。


そういえば、花火大会の後も1度も名乗っていなかったな。
どうせ今日でお別れだし、たいした名前でもないけど、最後だから名乗らせてもらおうかな。


「エマ。エマ=グランテです」
「エマ…どこにでもありそうな名前だな」
「よく言われます」


どストレートに思ったことを言ってくるな…。
どうせ私はモブだからどこにでもありそうな平凡な名前なんですよ。
見た目も平凡だから、名前負けするような名前じゃなくて良かったとは思っているけどね。


「で、エマは今後どうするの?」
「!?」


いきなり名前呼びですか!?
推しから名前呼びされると思わなくて心臓がドキってしたんですけど!危うく不整脈を起こしかけるところだった!


私はこんなにも焦ってるのに、彼を見れば何ともないような顔してるし。
流石、ヒロインに会うまでは来る者拒まずのプレイボーイ。
女の子の名前呼びなんて慣れていますか。 そうですか…。


「…今後って、卒業してからのことですか?」
「うん…。俺はさ、卒業したら直ぐに父親の補佐として働くことが決まってるし……………あと、婚約者が出来るかも…」


彼の家は確か、騎士団を取りまとめる家系だっけ。
言いにくそうに言ったけど、貴族なら婚約者が出来てもおかしくないよね。むしろ、卒業してから出来るのは遅い方か。
ヒロインへの恋心が断たれた今、女遊びも止めて家の将来のためを考えて婚約者を作ろうと決断したのかな。


ヒロインへの失恋の傷がもう癒えたのかは分からないけど、どうかお相手は彼の見た目だけじゃなく、中身もしっかり理解して互いに一緒にいて幸せだと感じれる様な人でありますように。
今日限りで彼に会うことが出来なくなる私は、心の中でそう祈っておこう。


「エマは?」
「私も、同じ様なものですね、私もそろそろ婚約…というか結婚しろと言われている…」
「は?結婚?どういうこと?」
「ど、どういうことと言われましても…」


何故かいつもの興味無さそうな返事ではなく、弾かれたようにこちらを向く彼に動揺してしまう。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

婚約破棄から~2年後~からのおめでとう

夏千冬
恋愛
 第一王子アルバートに婚約破棄をされてから二年経ったある日、自分には前世があったのだと思い出したマルフィルは、己のわがままボディに絶句する。  それも王命により屋敷に軟禁状態。肉塊のニート令嬢だなんて絶対にいかん!  改心を決めたマルフィルは、手始めにダイエットをして今年行われるアルバートの生誕祝賀パーティーに出席することを目標にする。

モブ令嬢は白旗など掲げない

セイラ
恋愛
私はとある異世界に転生した。 その世界は生前の乙女ゲーム。私の位置は攻略対象の義姉であり、モブ令嬢だった。 しかしこのモブ令嬢に幸せな終わりはない。悪役令嬢にこき使われ、挙げ句の果てに使い捨てなのだ。私は破滅に進みたくなどない。 こうなれば自ら防ぐのみ!様々な問題に首を突っ込んでしまうが、周りに勘違いをされ周りに人が集まってしまう。 そんな転生の物語です。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

邪魔しないので、ほっておいてください。

りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。 お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。 義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。 実の娘よりもかわいがっているぐらいです。 幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。 でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。 階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。 悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。 それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!

王宮勤めにも色々ありまして

あとさん♪
恋愛
スカーレット・フォン・ファルケは王太子の婚約者の専属護衛の近衛騎士だ。 そんな彼女の元婚約者が、園遊会で見知らぬ女性に絡んでる·····? おいおい、と思っていたら彼女の護衛対象である公爵令嬢が自らあの馬鹿野郎に近づいて····· 危険です!私の後ろに! ·····あ、あれぇ? ※シャティエル王国シリーズ2作目! ※拙作『相互理解は難しい(略)』の2人が出ます。 ※小説家になろうにも投稿しております。

最後の思い出に、魅了魔法をかけました

ツルカ
恋愛
幼い時からの婚約者が、聖女と婚約を結びなおすことが内定してしまった。 愛も恋もなく政略的な結びつきしかない婚約だったけれど、婚約解消の手続きの前、ほんの短い時間に、クレアは拙い恋心を叶えたいと願ってしまう。 氷の王子と呼ばれる彼から、一度でいいから、燃えるような眼差しで見つめられてみたいと。 「魅了魔法をかけました」 「……は?」 「十分ほどで解けます」 「短すぎるだろう」

【完結】何回も告白されて断っていますが、(周りが応援?) 私婚約者がいますの。

BBやっこ
恋愛
ある日、学園のカフェでのんびりお茶と本を読みながら過ごしていると。 男性が近づいてきました。突然、私にプロポーズしてくる知らない男。 いえ、知った顔ではありました。学園の制服を着ています。 私はドレスですが、同級生の平民でした。 困ります。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

処理中です...