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ひゅ~~~ばーん!


名前を発すると同時に花火が上がり、私の声はかき消されてしまった。


これも神の意志か?
モブの私が主要キャラに名乗る必要なんてないと神が言っているのかもしれない。


彼も花火の音で声がかき消されてしまうのが分かっているからか、聞き返して来ない。


ただ、無言のまま2人で花火をみあげる。


綺麗だなぁ。
魔術花火は前世の花火と違って、打ち上げられて空で形作った物が動くからなんだかとても不思議な感覚になる。


今も、うさぎの形をした花火が夜空を跳ね回って消える。
そして、花火が消え終わる間際に地上に光の玉を落としていく。


なんでも、その光の玉を持っていると恋愛成就するのだとか…。


本当かどうかは知らないけど、こういうジンクスは恋する乙女達には人気なようで、光の玉が落ちていくであろう場所に女性達がすごい勢いで急いで移動しているのが見える。


確か、ヒロインも光の玉を手に入れようと頑張って、結局手に入れらなかったんだっけ。
でも、ヒロインはそんなものが無くても好きな人と結ばれるから大丈夫なんだよねぇ。


この花火の話でも、光の玉を取ろうとして転びかけて、片思い中の先生の上に倒れて事故チューしちゃうんだよね。
そのキスをキッカケに、先生がヒロインへの気持ちを段々と抑え切れなくなってくるんだよね。


きっとそんなイベントが今頃どこかで起こっているんだろうなぁ。


隣で何を考えているか分からない凪いだ表情で花火を見上げている彼が、もしそのイベントが起こっていることを知ったらどう思うんだろう。
元々はヒロインと花火を見る予定だったはずなのに、よく分からないモブの私なんかと花火を見ることになって、今どんな気持ちなんだろう。


私が考えた所で分からない事だけど、今後ヒロインと結ばれることはなくても、彼には良い人と結ばれてほしいな。


花火を流れ星に見立てて願い事でもしてみようかな。


エリオット = ルバームが心から愛し合える人と幸せになりますようにーー。


手を合わせて心の中でお願いすると、頭上にあった花火の光がなんだか落ちてくるような気がする。


段々と近付いてくる光を見ていると、頭にコツンと小さな衝撃が走る。


「、」
「ふ、」


声も出さずに頭を押さえるのと、隣で吹き出すような音が聞こえる。


「く、くくく、ふふ、」


え、なんかめちゃくちゃ笑われているんですけど…。
というか、マンガでもこんなに笑ってるところ見たことないんですけど!
なんでこんなに笑われてるの?


「ひ、光の玉を頭で受け止める人、は、初めて見た、くく、」
「え?光の玉?」


もしかして、さっき頭に当たったのがそうなの?
だとしても、頭でバウンドして落ちたから受け止められなかったな。せっかくこっちに落ちて来たなら受け止められればよかったのに。


「はい、これ」
「これって…」
「地面に落ちる前に掴んどいたの」


あんなに笑ってたのに落ちる前にキャッチしてたなんて、流石ハイスペック当て馬キャラ!
でも、これは彼が掴んだものなんだから、私がもらうわけにはいかないよね。


「あんたの頭に当たったんだし、これはあんたのでしょ」
「確かに頭には当たりましたけど、最初に掴んだのはルバーム様なので私は受け取れません」
「いや、俺もこういうの持つ趣味ないからあんたが受け取ってよ」
「でも、これを持っていれば恋愛成就するそうですよ?それなら、私なんかが持つよりルバーム様が持っていた方がいいと思います」


たとえヒロインと結ばれなくても、その先にきっと新たに愛する人と出会えるはずなので!


「その言い方だと、俺に想い人が居るのを知ってるみたいだな」
「え、いや、そんなつもりで言ったわけではないですよ!?」


一応私は彼がヒロインの事を好きということを知らない設定なのでさっきの発言は良くなかったかもしれない!
彼に隠している様子はないけど、やっぱり誰かの事が好きとかそういう事は知られたくないよね。特に思春期の学生なら特に!


「ルバーム様は素敵な人なので、そういう方には幸せになっていただきたいなと思っただけで、別に他意はなくてですね…えっと…」
「ふっ、別に焦んなくてもいいよ。あれだけあからさまにテアルナと何かあった時に食べ物持って現れるんだから、あんたが俺の気持ちに気付いてるのは分かるよ」
「え、あ…」


確かに、あんなにあからさまな時しか現れないなら気付くか…。
それ以外は極力顔を合わせないように隠れていたしね。


「別に、彼女への気持ちは隠してる訳じゃないから、君が知っていたとしても気にしないよ。だから、そんな気まずそうにするなよ」


ぶっきらぼうな言い方だけど、私が気まずくならないように気を使ってくれる。
彼はヒロイン以外に興味が無いけど、ちゃんと周りにも気を使う優しい人なんだよね。


そういうところも、本当に好きで推せるポイントなんですよね!



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