当て馬役推しの私は、彼の幸せを切に願っています……が、この状況はどういうことでしょうか!?

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私の前世は日本という国に住んでいた地味な女性会社員だった。日々の楽しみと言えば、恋愛経験が全くない私に恋愛のドキドキを提供してくれるマンガやゲームに浸ること。


自らが恋愛しなくても毎日がトキメキの連続!
そして、私にいちばんトキメキを与えてくれたのが【身分なんて関係ない!貴方が好きなんです!】という名の先生×生徒のカプ漫画!


これが本当に私の中でヒットだった!
舞台は中世ヨーロッパ風の魔法が使えちゃうファンタジーな世界。そんな世界で魔法学校に入学したヒロインが先生に一目惚れをしてアプローチをかけまくり、先生と両片想いになりジレジレ…そしてヒロインと先生の家の格が違い過ぎることも二人の交際に大きく立ちはだかってくる。
さぁ、2人は最終的にどうなるのか!?


一難去ってまた一難、2人の気持ちが近付けば近づくほど何かしらの障害が立ちはだかってくる王道恋愛ストーリー。


毎回新刊が出るのがどんなに待ち遠しかったか…。


王道ストーリーということもあって、最終的には2人がハッピーエンドを迎えるのは分かっていた。
わかっていたけど、やっぱり続きを読まずには居られない作品だった。


だけど、私が新刊を待ち望み続けたのは続きが気になるだけじゃない。私が待ち望み続けた一番の理由は!
人生の最推しを見たかったから!


私の推しは残念ながらヒーローでは無いけど、ぶっちゃけヒーローよりもカッコイイ!
ヒロインになにかあれば駆けつけ助ける。だけど、恩着せがましくしたりもせず、ただただ好きな人のために何かをしようとする素敵な人。


そして、そして!!
私はなんと!!!


そのマンガの世界に転生しているのだった!!!


いや、どういうことだよ!
と、転生したことに気付いた当初はかなりパニックになったし、この先どうするの!?なんて思っていたけど…。


人間は環境の生き物。
生活していれば案外気持ちも落ち着いて、なんなら原作のヒロインと同じ学校の同じ学年だと言うことを知って推し活までちゃっかり始めちゃってるくらいだ。


因みに、私の推しというのはヒロインの想い人ではなく、逆にヒロインの事を想っている当て馬キャラ!


彼は元々遊び人で、女はみんな見た目や地位に弱いバカだけだと思っていた。だけど、その考えは家が格下な先生を一途に想っている主人公と会ってそれが覆される。
その後、自分の考えが正しいと証明させるためにヒロインにアプローチするけど逆に惚れてしまい、ヒロインに振り向いてもらおうと頑張るけど、両片思いだけど立場的に一緒に入れなくて落ち込むヒロインを慰めるポジションに結局は収まってしまう。


メインイベントは途中まで一緒だけどいいとこはヒーローに持っていかれて1人寂しく過ごすことになるんだよね…。


そんな当て馬役の彼に、私は惹かれてしまった!


いや、むしろ彼がヒロインとくっついてよ!と何度思ったことか!


惚れてからは常にヒロインファーストの考え方だし、困ってる時は必ず助けてくれて、更に欲しいと言ったものはどんなに苦労しても手に入れて渡してあげる!しかも、渡す時には「たまたま見つけただけだから」なんて、気を使わせないようにそんなこと言っちゃうし!


これを推さずしてなんとする!
一部のファンからはストーカーとか、頑張り過ぎて逆に怖いとか言われていたけど。


惚れた女にとことん尽くして何が悪い!
それに、彼は別にストーカーしてた訳じゃなくて、学校で会った時にヒロインの表情を見て何かあった事に気付いてただけだし!ちゃんと1歩引いてヒロイン見守ってたでしょうが!


まさに今みたいに!


今だって、年に1度開催される魔術花火大会にヒロインが想い人の先生と一緒来られないから彼が付き添いできたのに、花火が始まる直前に先生が現れてヒロインを連れて行ってしまったから1人でポツンと空を見上げているんだよ!


恋愛マンガならよくある展開だってわかってるけど、残された当て馬キャラの悲しそうな表情よ…。


連れて行かれたヒロインが嬉しそうな顔をしていたから引き止めることも出来なくて、ただただ虚しく笑って空を見上げるしかない彼の表情が胸にくる。


今日は好きな人と花火が見れることを楽しみにしていただろうに、直前になっていなくなっちゃうんだもんね。
辛いだろうな。


そんな辛さは何をしても無くならないだろうけど、美味しいものを食べれば多少は気分も良くなるはず!


だから私は、彼の隣に行ってそっと屋台で買った焼き鳥を差し出す。


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