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ただいま。
しおりを挟む同窓会から数週後、元いじめっ子達の旦那さんが務めている会社が次々と倒産や経営不振に陥ったとニュースで報道されていた。
その全ての会社はフィン達が買取り、働いていた人達を全員再雇用したらしいけど。
何をやったんだフィン…。
私はてっきり、ロンがしたみたいに旦那さんの会社と取り引きを止めるだけだと思っていたのに。
風の噂では、元いじめっ子達のほとんどが離婚を要求されたとか何とか…でも何故か離婚した人は一人もいないらしい。
「俺達この世界で結構人脈あるんだ」
王子スマイルで言うフィンの後ろで他の3人は満足気に頷いている。
なんともえげつないことをする人達だ…。
私の元パーティメンバー…もしかしてこの国を牛耳ってる?
流石、魔王を倒しただけあるわ。
でもそんなすごい人達が今は、築53年の1LDKの狭い部屋で肩を寄せながら座っているだよね。
因みにここは私の家です。
「ジュナは狭い部屋のが落ち着くって言ってたけどよぉ。流石にこれは狭すぎじゃねぇか?」
1番ガタイのいいスタングが文句を言ってくるけど、私だって言いたいことがある。
「それは皆が毎日揃ってここに来るからでしょ…。ここは一人部屋なんだから、成人男性4人もいれば余計に狭くなるに決まってるでしょうが」
来るなとは言わないけど、1人で来るとかバラけてきて欲しい。と言ったけど、抜け駆けされるからとかよく分からないことを言って全員に拒否されたんだよね。
「ねぇ、ジュナは今の仕事楽しい?」
どうして急にそんな質問?
「ん~楽しくはないけど、生活する為に働いてるって感じかな」
「なら、もし俺達の世界にまた行けて、そこで何不自由なく暮らせるってなったらどうする?」
「あっちの世界かぁ…」
あっちの世界で何不自由なく暮らせるのはいいかもしれない。
「でも、あっちは生活するには不便なことが多いしなぁ…。あと、貴族の人達も…」
いじめっ子達が可愛く見えるほど陰湿で面倒くさい人達ともう二度と関わりたくないし。
「貴族なら黙らすから大丈夫だよ。それに」
「生活の水準でしたら、こちらと変わらないものを保証致しますよ」
「そうなの?それなら、行ってみるのもいいかな」
どうせ行くことは出来ないだろうけど。
なんて思っていると、4人がおもむろに立ち上がる。
「もう帰るの?」
「はい。ジュナさんの意思確認が出来たので今からあっちに帰るんですよ」
「あっち?」
「おう、俺らの国にな」
「え?え?」
流石に冗談だよね?
向こうに行くにはあちらから呼んでもらわないといけないはずだし…。
「とりあえず、全員会社を辞めることを報告しておかないとね」
「そうだな、それと忘れ物はねぇか?」
「大丈夫ですよ。ちゃんとマジックバッグに目欲しいものは入れておきましたから」
マジックバッグ…?
それってこっちでも使えるものなの?キールさんや?
「まぁ、来ようと思えば来れますし、とりあえず行きません?」
え、来ようと思えば来れる?
私が帰るのもなんか大変そうだった記憶があるんですけど、そんな海外に行くノリで行けちゃうの?
私の困惑をよそに、キールが巨大な魔法陣を展開して行く。
いやいや、もうどこからツッコめばいいのか分からないんだけど…。
「さて、ゲートは作れたので行きましょうか」
「え?え?」
「さぁ、俺の手を握って」
「え、うん…」
困惑し過ぎて素直に手を握ってしまう。
手を握り返されて、ゲートへと導かれる。
現代でこんなファンタジーなことってあるの?
フィン達が会社起こして社長をしていた事も驚きだけど、現代で魔法使ってる方が驚きだわ。
「うそ…」
そして戻ってきちゃったよ異世界。
ここがどこの山かは知らないけど、空に火を吹きながら飛ぶ鳥なんて現代にいるわけが無い。
「一体どうやって…?」
「ジュナさんが帰ったあと、僕達でめちゃくちゃ頑張ればって異世界に行く方法を見つけたんですよ」
「僕達と言っていますが、ほとんど私に丸投げだったじゃないですか…」
「だって魔術のことならキールだろ?ま、それよりもジュナがこっちに戻ってこれて良かったぜ!」
「そうだね。おかえり、ジュナ」
ここはただいまと言ってもいいのかな…?
でも、みんなその言葉を期待しているようだし、正直なところ私もこっちに来れて嬉しい気持ちはある。
だから。
「ただいま」
そう笑顔で言えば、みんなの顔が明るくなる。
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