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これで終わりです。
しおりを挟む「父上!俺と愛するディアを辱めたこの女を早く罰してください!」
「っ、黙らんか!この馬鹿者が!お前の言動の方が余程我が一族を辱めておるわ!」
「ち、父上…?」
まさか叱られるとは思っていなかったのでしょうね、驚愕して殿下の目が最大限に見開かれているわ。
国王陛下も流石に堪忍袋の緒が切れてしまったみたいですわね。穏やかな方ですのに、今は烈火のごとく怒ってらっしゃいますわ。
「そもそも、この大事なパーティーで婚約者に恥をかかせようとするとは何事だ!それも、今までお前のことを支えてくれていたエレノア嬢になんという仕打ちだ…!」
「し、しかし、父上…」
「黙れ。それに、そのディアとかいう娘との不埒な言動はなんだ。この恥さらしが!」
「ち、ちちうえ…」
実の父親から恥さらしと言われたことが余程ショックだったのか、殿下はガクリと項垂れてしずかになる。
「王位を継承する可能性が低く、兄らと歳が離れているからと甘やかした私の罪か…」
怒りが少し落ち着き冷静になられた国王陛下が懺悔する様にポツリと呟く。
そしてその後私の方へと目線を移す。
「愚息との婚約破棄を認めよう。そして、ここにいる皆が証人だ。今宵より、我が国の第3王子は王家から廃嫡とする!」
「なっ、」
「その娘と共に過ごすなり好きにすると良い」
「そんな!父上!」
「私を父と呼ぶな……。皆の者、パーティーの邪魔をしたな。残りの時間、どうか楽しんでくれ」
縋るように呼ぶ殿下を無視して国王陛下は杯を持ち上げ乾杯をする。
無視された殿下は床に顔がくっつきそうなほど絶望していらっしゃるわ。お隣にいるディア様も手で顔を覆いながら涙を流されていて……本当に哀れだわ。
私もここまでするつもりはありませんでしたが、貴方達がパーティーなんかで私と婚約破棄をしようとしたからいけないのよ?
こんなところでしなければ殿下も廃嫡になどならなかったでしょうし、ディア様も人の婚約者を誘惑した卑猥な女性として周知されることもかったでしょうに。
貴方達が行動を起こさなければもっと静かに穏便に婚約破棄を申し立てるつもりだったのですから。
けれど、今それを言っても後の祭りですわね。
私としては、好きでもなく、むしろストレスを与え続けられた能無し殿下と婚約破棄出来ましたし、開発していた魔道具の性能を沢山の方に見て頂けたので大満足で最高のパーティーですわ。
最後の最後で今までの恩を返していただいたのかしら。
おそらくそんな意図はなかったでしょうが、有難いことですわ。
「ふふふ」
「楽しそうですね、エレノア様」
思わず笑い声が漏れてしまうと、そばに居る執事が笑みを浮かべながら声をかけてくる。
「ええ、長年の苦労が報われてこれ程にもなく晴れやかな気分ですわ。それより、いつまで執事の姿を続けられるおつもりですか?」
「パーティーは苦手だからね、出来れば終わるまでこの姿でいたかったんだけど……そうもいかなくなったね」
肩をすくませながら砕けた口調で話し出す彼は、掛けていた眼鏡を外す。
そうすれば、どこにでもいる茶色の髪色は王族しか持って生まれない白金に変わり、冴えない顔は歩けば誰もが振り返る美しいものへと変化していく。
「いつ拝見しても、その認識阻害メガネは素晴らしいですわね。ここまで人の認識を歪めることが出来るのですもの」
「これは私が発明した中で一二を争うほどの傑作だと自負しているよ」
先程までの冴えない執事姿から本来の姿になった彼がパチンと茶目っ気にウィンクする。
その姿に周りがざわつき始める。
「まさか…あの方は…」
「あまりパーティーには参加しないと聞いていたのに…」
「まさかこんなところでお目にかかれるとは…!」
彼のこの姿を見れば誰だって驚きますわよね。
なんと言っても、この方は次期国王かと噂されていたこの国の第2王子、アラン様なのですから。
ですが、アラン様は国を収めることよりも魔道具を開発することに興味があられたので、そうそうに王位継承権を放棄されて今では立派な魔道具研究所の所長としてお仕事されていますわ。
「ほらね、こうなるからあまりこういう場には出たくないんだよ」
「アラン様は人気ですので仕方ありませんわ」
「私はもう王位継承権を放棄しているというのに…」
「そのお顔と魔道具研究所の歴代最年少所長という肩書きがありますから仕方ありませんわ」
「私はただ好きなことが出来れば良いだけなんだけどな…」
うんざりしたようにため息をつかれますが。
「それならば、いつものように本来の姿に戻らずに過ごされれば良かったのではありませんか?」
「私もそうしたかったんだけどね。愚弟のおかげでチャンスが巡って来たからこうするしかなかったんだよ」
「チャンス…ですか?」
姿を戻す必要のあるチャンスとは、それは一体どのようなチャンスなのかしら?
アラン様の言葉に頭を傾げていると、突然アラン様が目の前に跪き私の手を取られる。
「アラン、様…?」
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