1 / 7
茶番が始まりました。
しおりを挟む「エレノア!お前とは今ここで婚約を破棄する!」
あら、この国の第3王子である私の婚約者が国の重鎮方が集まるこのパーティーで何やら始めたようですわ。
婚約破棄だなんて、ここに居る方々が嬉々として話題にしそうな話ですわね。
「婚約破棄、ですか。今ここでその話をされると言うことがどう言うことか理解なさっておられるのでしょうか?」
「当たり前だ!」
フンと鼻で笑ってらっしゃいますが、きっと理解されてはいないのでしょうね。
私と殿下の婚約は国王陛下がお決めになったもの、それを理由もなしに婚約を解消どころか破棄など出来るわけがありませんわ。
いえ、もしかすると殿下にはあるのかもしれませんわね、婚約破棄が出来ると思った理由が。
例えば、パーティが始まる前から隣にいらっしゃる女性とか…。
「エレノア!お前の悪事は全て知っている!これを話せばここに居る者達はお前が俺の婚約者に相応しくないと確信するだろうな!」
「自信満々に仰られていますが、それはありえない話ですわ」
「はっ、そうやって余裕ぶっていられるのも今のうちだ!」
余裕ぶっているのではなく、本当に余裕があるだけなのですが、悪を打ちのめす正義という立場に気分が高揚して冷静に周りの状況が理解できないようですね。
この婚約破棄の茶番に付き合わされた方々が不憫ですわ。
せっかくのパーティですのに、楽しむ前からよく分からないイベントが始まりましたものね。
それも、始めたのが第3王子なので国王陛下がいる手前無視はできませんし。
商談の話をしたい方もいらっしゃるでしょうに、本当に申し訳ないですわ。
「その呆れた表情を止めろ!いつもいつもお前は俺のすることなすこと否定しやがって!一体何様のつもりなんだ!」
何様と言われましても、間違った事をすればそれを窘めるのが婚約者の役目ですわ。
そもそも私が殿下の婚約者に選ばれたのも、殿下が無鉄砲過ぎてストッパーが必要だと判断されたからですのに。
「今日という今日はお前の悪事を暴き、二度と俺に生意気な口を聞けないようにしてやる!」
「それは、なんといいますか…頑張ってくださいませ」
きっと無理でしょうけど。
「くっ、その顔だ!その顔!その俺をバカにした顔がムカつくんだ!立場を弁えろ!」
「私は十分弁えているつもりですが」
「嘘をつけ!弁えているのなら俺にそんな不遜な態度は取れるわけがないだろ!そしてここに居るディアに酷い事をするはずがないだろうが!」
そう言って守るように隣に立つ、ディアと呼んだ女性の前に出てくる。
彼女は確か、殿下に気に入られた伯爵家のご令嬢でしたか。
その方が何故私に対して怯えたような表情をするのか分かりませんわね。
「ひどいこと、とは一体どのようなことでしょうか?」
「あくまでしらを切るつもりか……。まぁ、いいだろう。お前の悪事はここで私がしっかりと暴いてやる!」
特に暴かれるものはありませんが、婚約破棄騒動に巻き込まれた方達に少しでも楽しんで頂けるように聞いて差しあげましょうか。少しは社交界の面白ネタとして役立つでしょうし。
「それで、私はなにをしたのでしょうか」
「白々しい。お前はここに居る愛しのディアが私と共にいる事に嫉妬し陰で虐めていただろ!」
「虐めるとは、具体的にはどのように?」
「ふん、では皆の者聞くがいい!この女がしてきた数々の暴挙をーーー」
鬼の首をとったかのように罪状を読み上げていらっしゃいますが、どれも全くもって身に覚えがありませんわね。
それどころか、彼女と言葉を交わしたこともありませんし、殿下と共にいられても全くもって興味がありませんわ。
受け取っていただけるのなら今すぐにでも譲って差し上げたいくらいですのに。
彼のどこに惹かれたのか私には全く理解できませんわね。
あの様に恥ずかしげもなく人の証言だけを信じて、あたかも私が罪を冒したかのように言うさまは滑稽を通り越してもはや哀れですわ。
この場にいらっしゃる方々は私がそのような事をする筈がないとご存知の方ばかりですのに。
そんなにも自らの愚かさを沢山の方に周知したいのでしょうか。理解致しかねますわね。
今まではこのように愚かな姿を人々に見せないように私が頑張ってきたと言うのに、自らさらけ出すなんて本当に救いようがありませんわね。
「どうだ!言い逃れなど出来ないだろ!」
ようやく罪状を読み上げ終わったのですね。
よくここまでありもしない事を並べられましたね。その事に関しましては素直に感心しますわ。
「一応聞いてやる。申し開きはあるか?」
殿下は勝ち誇ったように仰っていますが、申し訳ありませんが貴方の思う通りにはさせてあげられませんわ。
いえ、一部は殿下の思った通りになるかもしれませんわね。
443
お気に入りに追加
1,440
あなたにおすすめの小説
このままだと身の危険を感じるので大人しい令嬢を演じるのをやめます!
夢見 歩
恋愛
「きゃあァァァァァァっ!!!!!」
自分の体が宙に浮くのと同時に、背後から大きな叫び声が聞こえた。
私は「なんで貴方が叫んでるのよ」と頭の中で考えながらも、身体が地面に近づいていくのを感じて衝撃に備えて目を瞑った。
覚悟はしていたものの衝撃はとても強くて息が詰まるような感覚に陥り、痛みに耐えきれず意識を失った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
この物語は内気な婚約者を演じていた令嬢が苛烈な本性を現し、自分らしさを曝け出す成長を描いたものである。
【完結】自称ヒロインに勝手に断罪されそうなので完膚なきまでに叩きのめしました。愛しの婚約者は渡しませんよ?殿下から愛されているのは私です。
夢見 歩
恋愛
━━━━━━━━━━━━━━━
「マリンセント様、
ルーズ様を解放してください!!!
愛のある結婚をするべきです!
あたくしがルーズ様を幸せにします!」
一体何なのでしょう。この小バエは。
わたくしの婚約者である
トワイライト国の第一王子
ルーズベルト様の腕に纏わりついて
ギャーギャーと喚いております。
勘違いしないでください。
愛されているのは貴方ではなく
私ですよ?愛のある結婚?
私と殿下は愛し合っています。
二人の仲を切り裂こうとする
貴方のことは絶対に許しません。
お覚悟はよろしくて??
━━━━━━━━━━━━━━━
婚約破棄はしません。
相思相愛すぎて他人が
入り込む余地はありません。
婚約破棄からの幸せも
ひとつの形として素晴らしいです。
ですが、今作は自称ヒロインに
当て馬になってもらいました。
自称ヒロインに救いはありません。
※カクヨム様にも掲載中です。
※続編希望が多ければ追執致しますのでぜひ感想をお寄せください!
本当に妹のことを愛しているなら、落ちぶれた彼女に寄り添うべきなのではありませんか?
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアレシアは、婿を迎える立場であった。
しかしある日突然、彼女は婚約者から婚約破棄を告げられる。彼はアレシアの妹と関係を持っており、そちらと婚約しようとしていたのだ。
そのことについて妹を問い詰めると、彼女は伝えてきた。アレシアのことをずっと疎んでおり、婚約者も伯爵家も手に入れようとしていることを。
このまま自分が伯爵家を手に入れる。彼女はそう言いながら、アレシアのことを嘲笑っていた。
しかしながら、彼女達の父親はそれを許さなかった。
妹には伯爵家を背負う資質がないとして、断固として認めなかったのである。
それに反発した妹は、伯爵家から追放されることにになった。
それから間もなくして、元婚約者がアレシアを訪ねてきた。
彼は追放されて落ちぶれた妹のことを心配しており、支援して欲しいと申し出てきたのだ。
だが、アレシアは知っていた。彼も家で立場がなくなり、追い詰められているということを。
そもそも彼は妹にコンタクトすら取っていない。そのことに呆れながら、アレシアは彼を追い返すのであった。
ここはあなたの家ではありません
風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」
婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。
わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。
実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。
そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり――
そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね?
※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
妹に全てを奪われた私、実は周りから溺愛されていました
日々埋没。
恋愛
「すまないが僕は真実の愛に目覚めたんだ。ああげに愛しきは君の妹ただ一人だけなのさ」
公爵令嬢の主人公とその婚約者であるこの国の第一王子は、なんでも欲しがる妹によって関係を引き裂かれてしまう。
それだけでは飽き足らず、妹は王家主催の晩餐会で婚約破棄された姉を大勢の前で笑いものにさせようと計画するが、彼女は自分がそれまで周囲の人間から甘やかされていた本当の意味を知らなかった。
そして実はそれまで虐げられていた主人公こそがみんなから溺愛されており、晩餐会の現場で真実を知らされて立場が逆転した主人公は性格も見た目も醜い妹に決別を告げる――。
※本作は過去に公開したことのある短編に修正を加えたものです。
妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません
編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。
最後に取ったのは婚約者でした。
ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。
許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?
風見ゆうみ
恋愛
ネイロス伯爵家の次女であるわたしは、幼い頃から変わった子だと言われ続け、家族だけじゃなく、周りの貴族から馬鹿にされ続けてきた。
そんなわたしを公爵である伯父はとても可愛がってくれていた。
ある日、伯父がお医者様から余命を宣告される。
それを聞いたわたしの家族は、子供のいない伯父の財産が父に入ると考えて豪遊し始める。
わたしの婚約者も伯父の遺産を当てにして、姉に乗り換え、姉は姉で伯父が選んでくれた自分の婚約者をわたしに押し付けてきた。
伯父が亡くなったあと、遺言書が公開され、そこには「遺留分以外の財産全てをリウ・ネイロスに、家督はリウ・ネイロスの婚約者に譲る」と書かれていた。
そのことを知った家族たちはわたしのご機嫌伺いを始める。
え……、許してもらえるだなんて本気で思ってるんですか?
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる