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茶番が始まりました。

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「エレノア!お前とは今ここで婚約を破棄する!」


あら、この国の第3王子である私の婚約者が国の重鎮方が集まるこのパーティーで何やら始めたようですわ。
婚約破棄だなんて、ここに居る方々が嬉々として話題にしそうな話ですわね。


「婚約破棄、ですか。今ここでその話をされると言うことがどう言うことか理解なさっておられるのでしょうか?」
「当たり前だ!」


フンと鼻で笑ってらっしゃいますが、きっと理解されてはいないのでしょうね。
私と殿下の婚約は国王陛下がお決めになったもの、それを理由もなしに婚約を解消どころか破棄など出来るわけがありませんわ。


いえ、もしかすると殿下にはあるのかもしれませんわね、婚約破棄が出来ると思った理由が。
例えば、パーティが始まる前から隣にいらっしゃる女性とか…。


「エレノア!お前の悪事は全て知っている!これを話せばここに居る者達はお前が俺の婚約者に相応しくないと確信するだろうな!」
「自信満々に仰られていますが、それはありえない話ですわ」
「はっ、そうやって余裕ぶっていられるのも今のうちだ!」


余裕ぶっているのではなく、本当に余裕があるだけなのですが、悪を打ちのめす正義という立場に気分が高揚して冷静に周りの状況が理解できないようですね。


この婚約破棄の茶番に付き合わされた方々が不憫ですわ。
せっかくのパーティですのに、楽しむ前からよく分からないイベントが始まりましたものね。
それも、始めたのが第3王子なので国王陛下がいる手前無視はできませんし。
商談の話をしたい方もいらっしゃるでしょうに、本当に申し訳ないですわ。


「その呆れた表情を止めろ!いつもいつもお前は俺のすることなすこと否定しやがって!一体何様のつもりなんだ!」


何様と言われましても、間違った事をすればそれを窘めるのが婚約者の役目ですわ。
そもそも私が殿下の婚約者に選ばれたのも、殿下が無鉄砲過ぎてストッパーが必要だと判断されたからですのに。


「今日という今日はお前の悪事を暴き、二度と俺に生意気な口を聞けないようにしてやる!」
「それは、なんといいますか…頑張ってくださいませ」


きっと無理でしょうけど。


「くっ、その顔だ!その顔!その俺をバカにした顔がムカつくんだ!立場を弁えろ!」
「私は十分弁えているつもりですが」
「嘘をつけ!弁えているのなら俺にそんな不遜な態度は取れるわけがないだろ!そしてここに居るディアに酷い事をするはずがないだろうが!」


そう言って守るように隣に立つ、ディアと呼んだ女性の前に出てくる。


彼女は確か、殿下に気に入られた伯爵家のご令嬢でしたか。
その方が何故私に対して怯えたような表情をするのか分かりませんわね。


「ひどいこと、とは一体どのようなことでしょうか?」
「あくまでしらを切るつもりか……。まぁ、いいだろう。お前の悪事はここで私がしっかりと暴いてやる!」


特に暴かれるものはありませんが、婚約破棄騒動に巻き込まれた方達に少しでも楽しんで頂けるように聞いて差しあげましょうか。少しは社交界の面白ネタとして役立つでしょうし。


「それで、私はなにをしたのでしょうか」
「白々しい。お前はここに居る愛しのディアが私と共にいる事に嫉妬し陰で虐めていただろ!」
「虐めるとは、具体的にはどのように?」
「ふん、では皆の者聞くがいい!この女がしてきた数々の暴挙をーーー」


鬼の首をとったかのように罪状を読み上げていらっしゃいますが、どれも全くもって身に覚えがありませんわね。
それどころか、彼女と言葉を交わしたこともありませんし、殿下と共にいられても全くもって興味がありませんわ。
受け取っていただけるのなら今すぐにでも譲って差し上げたいくらいですのに。


彼のどこに惹かれたのか私には全く理解できませんわね。
あの様に恥ずかしげもなく人の証言だけを信じて、あたかも私が罪を冒したかのように言うさまは滑稽を通り越してもはや哀れですわ。


この場にいらっしゃる方々は私がそのような事をする筈がないとご存知の方ばかりですのに。
そんなにも自らの愚かさを沢山の方に周知したいのでしょうか。理解致しかねますわね。


今まではこのように愚かな姿を人々に見せないように私が頑張ってきたと言うのに、自らさらけ出すなんて本当に救いようがありませんわね。


「どうだ!言い逃れなど出来ないだろ!」


ようやく罪状を読み上げ終わったのですね。
よくここまでありもしない事を並べられましたね。その事に関しましては素直に感心しますわ。


「一応聞いてやる。申し開きはあるか?」


殿下は勝ち誇ったように仰っていますが、申し訳ありませんが貴方の思う通りにはさせてあげられませんわ。
いえ、一部は殿下の思った通りになるかもしれませんわね。


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