婚約解消された私は醜い公爵令息と婚約することになりましたが、今の方が断然幸せです。

しあ

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新しい婚約者様

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「お嬢様!」


庭で花を眺めていると、メイドが慌てたようにこちらへと走ってくるのが見える。


あんなに急いでどうかしたのかしら?


「先程王城から遣いが来られて、今すぐこちらをお嬢様にお渡ししてサインを頂けと仰られまして…。とても急ぎのようでしたので、急ぎお持ちさせて頂きました」
「王城から?一体何かしら…」


王城という事は、私の婚約者である第2王子のルーファス様からかしら。
手紙を受け取って中身を確認する。


「まぁ…」


内容をまとめると、殿下が真実の愛を見つけられたので婚約解消をして欲しいとの事、そして婚約者が居なくなる私にはワーズス公爵家の一人息子と婚約しろ。という事が書かれていた。


ここにサインをするという事は、この内容に納得して従うと言うこと。
婚約というのは家と家が交わすもので、当人達の意思は尊重されない。


ですが、今は幸いお父様が出かけられてる。
そしてこちらの書類はお急ぎとの事。


ここにサインをすれば、私は王家から開放される。
あの辛い王妃教育も、退屈な王妃様の自慢話も、ルーファス様のご機嫌取りももうする必要も全て無くなる。


そのような書類、サインするという選択肢しかありませんわ!


お父様はお叱りになるかもしれませんが、王家の代わりに同じ公爵家との繋がりが持てるのですからおそらくお咎めもあまりないでしょう。


「なんということをしたんだ!お前は!」


思っていたよりもお父様はお怒りになられました。
おかしいですわね。お叱りどころか喜んでいただけるとまで思っていたのですが。


「お前はワーズス公爵家の息子がどんな人物か知っているのか!?」
「とても聡明な方だと伺っておりますわ」
「それだけじゃない!お前も耳にしたことがあるだろう。彼の容姿のことを」
「実際にお会いしたことがありませんので正確なことは分かりませんわ」


社交界ではよく噂になっておりますが、実際にお会いしたことがありませんのにどうとは申し上げられませんわ。


確か噂では、とても醜く彼を見た方は全員顔を歪めて顔を背ける。でしたか…。
ですが、私は見た目だけで中身が何も無い婚約者よりも、見た目は関係なく聡明な方の方がずっと良いと思うのです。


「もうサインをしてしまいましたので、今更取り消すことは出来ませんわ」
「お、お前はなんて事を…!婚約解消をされ、あんな男とお前が結婚したとならば、私は良い笑いものになるぞ!」
「先の事はまだ分かりませんわ」
「っ、お前の顔などもう見たくもないわ!今すぐ荷物をまとめてワーズス公爵家にでも行ってしまえ!」


婚約して早々に屋敷を訪ねるのは失礼では無いかしら。
でも、こうなったお父様は意見を絶対に曲げないでしょうから、駄目元で生活出来る場所を提供していただけないか伺ってみましょうか。
それが無理でしたら、どこかに宿を取るしかありませんわね。


そうも思って不躾にも訪ねさせて頂いたのですがーーー。


「まぁ、わざわざ御足労いただきありがとうございます。言ってくださればこちらからお迎えに上がりましたのに」
「お坊ちゃまは今書斎にいらっしゃいますのでご案内致しますね」
「は、はぁ、ありがとうございます」


なんでしょう。思っていたよりも皆さん好意的に歓迎して下さるので呆気に取られてしまいますわ。
誰も私の事を邪険に扱わず、とても優しい笑顔で荷物を持ってくださったり丁寧に接してくださいます。
元婚約者の家ではこれとは真逆のものでしたので驚きが大きいですわ。


「お坊ちゃま、ご婚約者のエリーナ=マルクス様がいらっしゃいましたよ」


案内してくれたメイドがノックをして私の事を伝えてくれる。


「お坊ちゃま~」


返事がないのでもう一度ノックをしてくれる。
だけど返事はない。


「申し訳ありません、どうやらお坊ちゃまは何かに没頭しているようで私の声が届かないようです」
「そうですか」


邪魔をするのは悪いですし、今日はどこかへ泊まってまた出直した方がいいですわね。


そう思っていたのですが。


「返事がありませんので入りますよ」
「え…」


メイドがなんの躊躇いもなく扉が開け、慣れたようにズンズンと中へ入っていく。
そして地べたに本を何十冊も積み並べたその中心でずっしりと座って本を読んでいる方に向かって声を上げる。


「お坊ちゃま!またこんなにも散らかして!」
「うわっ!な、なんだ、サラか…」
「なんだじゃありません!お坊ちゃまにお客様ですよ」
「お客…?」


メイドのサラさんに子供のように叱られた方が顔を上げる。



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