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三章 8歳(未発見ダンジョン探索開始?)

途中までは良かったんですよ?途中までは・・・

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お母様に首根っこを掴まれて引き摺られながら
スタンピードのボスの所へ連れていかれます。

「なるほど、この魔物ですか。
 先に血を抜いてしまいましょうか。
 傷をつけるので、エルできますね?」

「あい、わがりまじだ」

少し首が締まっているので、おかしな声になってますね。

「では、足の方に傷を入れてきます」

そう言ってお母様は私を下すと、
スタンピードのボスの後ろ脚の方に歩いていきました。
まさかお母様がこんなに早く到達するとは思っていませんでした。
もっと時間かかると思ってたのに・・・

そんなことを考えていると、お母様がエルダートレントを切った時に使った剣を取り出し、
さくっと傷をつけていました。

「エル、血抜きをお願いします」

お母様に言われたので血がだらだら出ている下に穴を掘ります。
そして魔物に手を当てて血をどんどん流していきます。
これ、最近加減が難しいのですよね。
ちょっと魔力を込めすぎると噴水が起こるのですよね。
・・・

血抜きが完了しましたので、お母様にお願いします。

「お母様、終わりましたので解体をお願いします」

「はい、丁寧に血抜きされていますね。
 これだけ出来れば上出来です」

「ありがとうございます!」

やった褒められました!
いえ、此処で気を抜いて浮かれていてはいけません。

「ふむ、エル成長しましたね。
 何時もですと、これで浮かれて淑女らしからぬ行動を取りますが、
 今回はそれが無いので問題ないでしょう」

あぶねぇ、罠が仕掛けられていました。
心臓はバクバク言ってますが、表情を変えずにいると
お母様が微笑みながら頭を撫でてくれました。

「はい、よく我慢できました。
 成長しましたねエル。
 では、防壁内部に運べるように解体してしまいますので、
 後でどういう状況だったのか報告をお願いします」

「お母様、判りました。
 解体お願いします」

そういえば、お母様にこうやって撫でられるの久しぶりかも。
訓練や勉強ばかりであまり親子の時間取れてませんでしたが、
皆でお茶をしたりする時間を持ちたいですね。

そんなことを考えていると、いつの間にか後ろにおっちゃんが居ました。

「なあ、お嬢の母親って言ってたが、大丈夫なのか?
 傷を入れていたから切ることは出来そうだが・・・」

「大丈夫です。
 お母様は最強ですから」

胸を張りながらおっちゃんに答えます。

「ん~・・・お嬢がそう言うなら大丈夫なんだろうが・・・
 今日連れてきた新人の女より細そうな腕を見るとな~」

「ふふん、その目をしっかり見開いて見ていると良いですよ。
 お母様の凄さが判りますから。
 と言っても、こういう解体は初めて見るのですが」

「じゃあ、よく見させてもらうぜ。
 お嬢の言い方だと参考になるかはわからないが、
 何かあったらついて行くことになる上の人の実力を知るのは大事だからな」

そんなことを話してると、お母様が魔物を触りながら見上げ

「本当に外傷が全くありませんね。
 綺麗な状態です。
 流石に肉はどうか判りませんが、この外皮や角で様々な装備品が出来そうですね」

そう言いながら、少し離れたかと思ったら変わった形状の刀を軽く振り切ります。
魔物の首の下から後ろ足の間までスパッと切れていました。

「きちんと血抜きされていますね。
 内臓や中の洗浄は後回しにしましょうか」

そう言うと魔物の周りを歩きながら、軽く刀を振っていきます。
振るうたびに足、頭が落ちていきます。
正直魔物に当たっているように見えないのですが・・・
おっちゃんの方を伺うと、唖然としていますね。

お母様が魔物を一周回って戻ってきました。

「やはり状態が素晴らしいです。
 もし素材が残るようでしたら、我家で買い取りたいですね」

「なら余った素材は買い取ってもらって、
 今回の参加者と此処の防衛をされている方々に振舞ってあげていただけませんか?
 私達だけでスタンピードを解決したとはいえ、私達が前に出ることが出来たのは、
 此処に駐留する方々や討伐者の方々が控えているという安心があってのものですから。
 此処にお母様がいらっしゃるという事は、我家への連絡も迅速に行われたという事ですし」

「ふむ、特別手当を支給するつもりではいましたが、
 それでは討伐者の方々に分配されませんね。
 エルの言う通り、その方向で進めましょう。
 ただ、余りを買い取りとなると時間が掛かってしまうので、
 一先ずあの辺りの魔物を買い取って皆に分配しようかと思いますが、いいですか?」

「はい、彼方も討伐者の方に運搬してもらって、
 報酬として渡すつもりでいましたので、大丈夫です」

「では、彼方の方の魔物は魔法の袋に詰めていきますので、
 エルとアレッサも一緒に来てくれますか」

そう言って、お母様から魔法の袋を預かります。
魔法のバッグと違って、口がかなり広く、広げるとかなり大きそうですね。
ただ、渡されるとき

「その袋に入れると見せかけて、時空魔法の倉庫に収めてしまいなさい。
 素材はまたエル所有のダンジョンで受け渡しをしましょう」

と囁かれました。
おお、なるほど、これなら隠せそうですね。

「判りました。
 じゃあ、えと・・・あれ?・・・あ!ガルフ様方はお母様が解体したその魔物を
 防壁の中へ移動してもらえますか?
 召喚した魔物を使ってもらって構いませんので」

「・・・お嬢、俺の名前今忘れてなかったか?」

おっちゃんがジト目で見てくる。

「な、何をおっしゃられているのか判りませんわ。
 お、おほほほ」

皆の視線が私に突き刺さります。
また嫌な汗が流れて、少し目の端に汗が出てきますが、平常心です。
へいじょ・・・お母様?笑顔で私の頭を持ってどうし・・・あ---!
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