魂つなぐ転移世界 ~私の平穏は何処なのでしょう?~

蒼劉

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一章 ~6歳(勉強中ですよ)

”しゅくじょ”になるために

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魔法についての話が終わって、
アレッサの入れたお茶を飲みながら休憩していると

「あっとそうでした。
 本当はまだ早いのですが、大人の記憶があるという事で
 淑女教育も進めていこうという話になっております」

アレッサが死刑宣告をしてくる。

「ア、アレッサ?
 初耳なのだけど。
 さも今思い出しましたって感じで言ってるけど、絶対違うよね?
 何で今言うの?」

「心外ですね。
 話しの切りが良いので伝えただけです。
 そこに深い意味はありませんよ?」

くっ・・・絶対伝えたら逃げると思われている。
良いでしょう!前の世界の記憶があるという事を生かして
淑女教育なんてあっという間にクリアして見せましょう!
ふっふっふ、記憶持ちでしかも様々な体験をした私に死角はありません!

「エル様、何か自信に満ち溢れた表情をされていますね。
 大丈夫ですか?」

「ふふん、私にかかれば淑女教育なんてぱっと終わらせて見せますよ」

「・・・本当に大丈夫ですか?」

「何でアレッサはそんなに不安そうなのですか!?
 普段の私を見ていたら判るでしょう!?
 全く、心外ですね・・・私の何処が淑女らしくないのですか」

「・・・あ、奥様」

「ひぅっ!?ご、ごめんなさい!
 い、いえ!?わ、私何もしてません!
 今日は走り回ったり、出したもの置きっぱなしにしたり、
 メイドの尻尾に飛びついたりはまだしてな・・い・・・です?」

自分の座っていた椅子の陰に隠れながら言ったけど、
お母様は見当たらない。

「・・・本当に大丈夫ですか?」

「アレッサ!?だ、騙しましたね!?」

「エル様?淑女淑女」

「・・・こほん・・・アレッサ?騙すのは酷くありませんか?」

「失礼いたしました。
 エル様より淑女らしい行動が取れるという、お言葉をいただきましたので、
 信じて試させていただきました」

「・・・そ、それは申し訳ありません。
 取り乱してしまいました」

くっ、完全に遊ばれてる・・・

「では、エル様は淑女とはどういった方を言うか判りますか?」

「ぇ?あ、え・・・れ、礼儀とか正しいマナーを心得ている人でしょうか?」

「そうですね、それもあるでしょう。
 他にはありませんか?」

「ぇ?他?ん・・・と、優雅で落ち着いたイメージがありますね」

「そうですね、他にはどうでしょう?」

「うぇ!?他に?」

「奥様をイメージしていただければよいかと思うのですが」

「え?お母様・・・ん~・・・
 お説教したり・・・お父様とラブラブしたり・・・お説教したり・・・
 魔物討伐とかに出かけたり・・・お説教したり?」

「・・・奥様にはしっかりとお伝えしておきます」

「えぁ!?ご、ごめんなさい!
 アレッサ~、お母様には言わないでぇ・・・」

「はぁ・・・他にはありますか?」

「・・・うぅ・・・降参ですぅ・・・教えてくださいぃ」

前の世界の記憶ぅ、仕事しなさいよぉ。

「淑女というのは
 清潔感があり、いつも身だしなみが整っていること
 当然部屋をきれいにするという事も大事になりますね。
 常に穏やかで、動作はゆっくりと、ふわりとした優しい笑顔であること。
 礼儀作法を身に着けており、優しく丁寧な言葉遣いをし、お礼と謝罪がきちんとできること。
 あとは字が綺麗であることですね。
 字が綺麗という事は心が綺麗で、教養があると思われますから」

・・・ま、前の世界の記憶・・・役に立つ所あるかしら・・・
既に前の世界の記憶、ぼっこぼこにされているのだけど。

「この場ですとクラリスが一番のお手本だと思います。
 こういった場ですので、言葉遣いは少し崩れてはいますが、
 見苦しくありませんし、所作はとても綺麗です。
 教師として来た際も身嗜みも清潔感があり、この場にふさわしい服装でした。
 書類も見させていただきましたが、字もとても綺麗でしたね」

「ありがとうございます。
 アレッサもとても綺麗ですよ」

・・・なんか置いてけぼりにされてる気がする。
完全に上位者の会話ですね。
あ、そういえば

「私だと言葉遣いってお嬢様言葉になるのですか?
 何とかですわ~とか笑うときはオーホッホッホみたいな?」

「何とかですわ~はまだしも、その笑いは何なのですか?」

「えと、前の世界でのお嬢様を書いた本とかだと、こんな笑い方だったから」

「流石にそういう笑い方は下品になるので、ありませんね。
 恐らくそういう笑い方となると、相手を見下すとか
 そういった人物ではありませんでしたか?
 人に不快な思いをさせるような言葉遣い、行動は問題です」

ですよねぇ・・・
これって前の世界の記憶があるのってマイナスなんじゃ・・・
もう前の世界の記憶はダウンして、まったく起き上がってこないのだけど。

「まず、エル様が淑女として行動する際に意識することは
 走り回らない、笑い転げない、尻尾を見てもテンション上げない、
 お礼と謝罪をきちんとするでしょうか。
 マナーや礼儀はこれから覚えていきましょう」

・・・そこまで出来てませんか・・・
これは前の世界の記憶に対する死体蹴りでしょうか。
もう前の世界の記憶はピクリとも動かないんですけど・・・
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