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プロローグ

さよなら?行ってきます?

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どうするかな・・・
戻ってこれないことを考えても仕方ないし、逆で考えるか。

もし戻れるとして、何が気になるか・・・

う~ん・・・戻って来て・・・
あまり時間が経過してなかったら・・・また移送して貰えば良いか。
じゃあ、気にするのはある程度時間経過して戻ったときか・・・
気になるのは両親のお墓ぐらいか?
すごい時間が経過してたら、どうなってるか判らないよな・・・
う~ん・・・なら、暫く管理してもらえればいいのかな。
暫く・・・おじさん、おばさんにお願いするぐらいしかできないか。

『伝えていませんでしたが、この移送では戻ってきた際に、
 以降の生活を保障するだけの金額を私から支給させていただきます。
 具体的な金額については、その時にもよりますが、
 今後働かなくても、それなりの生活出来る程度の金額になると思います。
 また、戻ってきた後のサポートは私が担当します』

「さっきもマザーが精一杯という事を聞いたけど、
 金銭面でもとなると・・・すごいな」

きっと時代が変わるぐらいの期間帰ってこなかった場合を想定しているんだろうな。

『言い方は悪いですが、生きるか死ぬかの実験となってしまいますので・・・』

「あ~・・・確かにそうだな」

そっか・・・体験と違って生死がかかってるとそうなるか。

「そういえば、体験での俺の収入ってどうなったんだ?
 アルバイトのお金だけ貰って、そっちの方忘れてた」

『そうですね。
 それもお伝えしないといけないことでした。
 聡介さんは人があまりやりたがらない条件で入ってましたから、
 かなりの金額になっているはずですよ』

「あまりやりたがらないって・・・
 リアルじゃないにしても浮気とかになりたくないってので、
 恋人同士になったりはなしって条件で体験入ってたからか?
 ・・・まあ、もうそんな縛りは関係はないが。
 でも、この体験って全部マザーが進めてきてた気がするんだが?」

『・・・さて・・・何のことですかね?
 聡介さんに合うものを選んでいただけですが。
 っと金額でしたね、先日の体験はまだ未定ですが、
 今現在ですと2億円程度になっているようです。
 冤罪で死亡した物語や、女性化した物が精神面での研究材料として買われていますね』

「2億?すげぇな・・・アルバイトのような立場で得られる金額ではないな」

よっぽどな贅沢をしなければ、半生以上仕事せずに生きられそうな金額だ。
ただな~・・・2億とかあっても、今の状況じゃ何も使い道が思いつかないんだよな。
寄付って言ってもな~・・・

あ、そうだ
「その金は他人に渡すことって出来るか?」

『はい、聡介さんのお金ですので、好きなように差配できますよ』

なるほど。
これで両親のお墓の管理、この時代に戻ってこれた場合を考えて自宅の管理を
おじさん、おばさんにお願いできるかな。
流石に数十年とかは無理だろうけど・・・それは仕方ないしな。
さて、これで心残りはなくなるのか?
だとすると・・・第二の人生って考えたら、ちょっとワクワクしてくるな。

「じゃあ、振込をお願いしたいんだが。
 あ、税金とかかかるんだっけ?そっちも考慮した形で」

『判りました。
 では、どちらに振込を行いますか?』

おじさんに・・・と思ったが、戻ってこれないことを考えると
裏切られはしたけど、佳澄にも世話になったしな・・・元々佳澄の為に稼いだものだし。

おじさん、佳澄の口座に振り込んで欲しいことを伝える。
『はい、名前・連絡先の情報から個人特定できましたので振込を行いますが・・・
 よろしいのですか?』

「ん?何がだ?」

『いえ、浮気をしていた彼女ですよね?
 そちらの方に振込を行うというのは・・・』

「ああ、裏切られたとはいえ、両親が死んだときに世話になったしな。
 まあ手切れ金みたいなもんだ」

『・・・わかりました。
 幾ら振り込みますか?』

「おじさん、佳澄それぞれに1億ほど振り込んどいてもらえるか」

『・・・判りました』

戻ってこれても支給される金もあるから、
体験で設けた全額振込でも問題ないだろ。
もし即支給で無くても自分の口座分は残るから、流石に生活に困ることは無いだろう。

よし、覚悟はできた。

「マザー、繋がりを利用せずに魂の移送をお願いしてもいいか」

『繋がりを利用せずにですか?
 戻ってくるリスクが増加しますし、何の設定もできませんが・・・』

「ああ、構わない」

『・・・提案したのは私ですが、本当によろしいのですか?』

「ああ、問題ない。
 あ、おじさん、おばさんと・・・一応友人連中や佳澄にもメッセージ投げとくか」

『わかりました。
 では、準備が出来たら中央に来ていただけますか』

「了解」

おじさんとおばさんに急な仕事が入って当分帰れないこと、
佳澄には隣にいた男と幸せになって欲しいとメッセージを入れておく。
佳澄にメッセージを送ったことで、終わったんだなと思うと脱力感が体を占める。
暫く深呼吸をしながら、体と心を落ち着ける。
・・・

暫く瞑想して十分に心を落ち着けた後、バベル中央制御室へ向かう。

バベル中央制御室に着くと、
『そのまま、お入りください』
マザーの声が聞こえると同時に扉が開いたので、そのまま中へ進む。
部屋に入って中を確認すると、中央に物々しいカプセルが幾つか鎮座していた。

「体験のカプセルに似た感じだけど、かなり重厚な造りだな」

『はい、体のパラメータを色々計測することがありますし、
 聡介さんの体を厳重に保管する必要がありますので』

「そうか・・・
 じゃ、後はよろしくな。
 もし俺を訪ねてくる人が居たら、ある程度事情は話しても構わないから」

そう言いながら、カプセルに入る。

『わかりました。
 では、新しい人生を楽しんで、必ず帰ってきてくださいね』

「まあ・・・帰ってこれるか判らないけど、楽しむことにするよ」

カプセルが閉まる。

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

マザーが何か言った気がするが、意識が沈んでいく俺には聞こえなかった。
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