神様に癒しをお願いしたら旦那様がもふもふでした

Keina

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番外編

ワンちゃんの子育て

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「あ、あの・・・陛下・・・。
その・・・。
ずっと、そのお姿でお過ごしになるのですか・・・?」

大会議室の上座の大きく立派な席に座るシリウスは書類を見る目を止めて、大臣たちの顔をちらっと見てからまた書類に目を通す。
「その恰好とは?」
気の無いように答え、書類をペラペラとめくり、さらさらと修正箇所を書き込む。

「で!ですから!その!!」
別の大臣が席を立って、話に割って入る。

「しっ!!!
静かにしろ!
ラフィが寝てるだろ!見えないのか!」
シリウスが眉間に皺を寄せ、鋭く睨む。

「・・・で、・・・ですから・・・見えてますが・・・。」
王の迫力に蚊の鳴くような声で大臣はしゅんとし、耳も尻尾も可哀そうなくらい垂れている。

「陛下皆さんは、その抱っこ紐にラフィリア様を寝かせたまま御政務なさるのか?と聞いているんですよ。」
シエルが震えて涙目の大臣たちが気の毒になり助け舟を出す。

そう、今のシリウスの格好は立派な王の装束が一気に台無しになるくらいの、ピンクにフリフリの抱っこ紐をかけ、そこにふわふわのドレスを着た可愛らしいラフィリアが寝ている、子守スタイルなのだ。

大臣たちから見たらいつも迫力のある恐い存在の王が、フリフリピンクの抱っこ紐で子守をしているのだ、大変混乱しているのもうなずける。

「こんなに可愛らしくすやすや寝ているのに起こすのも、もったいないし。
目が覚めた時一人だったら可哀そうだろう?」
そう言ってラフィリアの顔を優しく見つめる。

「金の髪に紫の光沢、長いまつげにピンクのふっくらとしたほっぺ、こんな小さく可愛い子を一人にして攫われたらどうする?!」
シリウスが大事そうに抱きかかえ、尻尾を膨らまして警戒する。

「皆様申し訳御座いません。陛下は大変心配性で。
多分に浮かれすぎてネジがどこかに行っているのだと・・・。
しばらくしたら戻ると思いますので・・・。」
傍らに立っているセバスが辛辣なことを言いながら頭を下げる。

「セバス!失礼な!
私は出来うる限りラフィに安心してもらおうと思ってだな!」
シリウスの反論をセバスはぴしゃりとした口調で遮る。

「絶対!!!目が覚めたらラフィリア様に怒られますよ。
絶対です!」
セバスは目を細めて予言する。

「え?!!
そ、そうであろうか・・・??」
シリウスが不安げな顔になり耳も自信なさげになる。

「私もラフィリア様がお怒りになるのに一票です。」
シエルは悪戯そうな顔で言い渡す。

「え?!
そうだろうか?」
会議室の大臣たちにシリウスが目を向けると、大臣たちは目が合わぬように、さっ!と目を逸らす。

「え・・・・・。」
シリウスが顔を青ざめていると、抱っこ紐のラフィリアがもぞもぞと動き出す。

 お!起きてしまわれた!!!

皆が心の中でシンクロしたように叫ぶ。

小さく可愛い欠伸をして、ラフィリアが目をこする。
「う?
~~~~~~ん!」
ぱちりと開いたラフィリアの眼に心配そうなシリウスの顔が映る。

「わんちゃん。
おはよう~~。」
寝ぼけ眼で可愛く微笑む。

「ラフィ~~~~!!おはよう!!
よかった~~~!怒ってない!」
シリウスが尻尾をぶんぶん振りながら抱きしめる。

「ん~?なんのこと・・・?」
そこでようやくラフィリアが、抱っこ紐の中で寝てる事、シリウスに抱っこされていて、周に心配顔の威厳のある大臣が集まり、そしてここが会議室であることが瞬時に理解できた。

「き、きゃ~~~~~~~~~~~~~~~!!!!」

 は、恥ずかしい!!恥ずかしい!!あり得ないあり得ない!!!
 なにこれ??!!
 なにこれ~~~~~~!!!
 ワンちゃんのバカ!!!!!

ラフィリアが心の中で大声で叫ぶ。
そして最後に。

「ワンちゃんのバカ~~!!」

実際にそう言って、恥ずかしさで顔を真っ赤にして、シリウスをにらむ。

シリウスはショックで頭が真っ白になって固まってしまう。

「これは陛下が悪いですよね。
さ、ラフィリア様、こちらにご朝食のご用意が御座いますので、私と行きましょうか。」
そう言ってセバスが抱っこ紐からラフィリアを抱き上げ、すたすたと立ち去る。

会議室の扉を開けセバスはにっこりと笑いながら、
「ネジ、早く見つけないと、嫌われてしまいますよ。」
と言って脅して扉を閉めた。

「~~~~~~~~~~~!!!
し、シエル~~~!!
ラフィに嫌われたかな?!嫌われてしまっただろうか??!!」
シリウスはいつもの厳しさが見る影もなく崩れ落ちている。

「私なら3日は口をききませんね。」
シエルがにっこりと笑いながら追い打ちをかける。

ショックを受け耳も尻尾もペタンとなり、涙目の王を大臣たちは必死に慰めた。



もちろん、二人は夜にはすっかり仲直りしていたのだけれど・・・。
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