神様に癒しをお願いしたら旦那様がもふもふでした

Keina

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王様とお姫様

35・暖かい午後

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「シリウス様の王都までの勝利の凱旋はそれはもう素晴らしかったのですよ!」
シエルが満面の笑みでラフィリアに話す。

魔術師団の最高顧問のシエルはまあるい耳をご機嫌にぴこぴこ動かす。
これはシエルのご機嫌の最上級であることをラフィリアは知っていた。
この話はもう何回聞いたか分からない。

「シリウスはかっこよかった?!」
それでもこの話はラフィリアのお気に入りの話でもある、満面の笑みでニコニコ聞き返す。

「それはもう!かっこよかったですよ!!
王都に戻る頃には背の高い立派な青年になっていましてね!
国民の中では小さな王子だったと思っていたのに、かっこいい青年になり魔窟のドラゴンを倒したんですから!
それはもう凛々しく馬に乗るお姿に国中が熱狂したものですよ。」

「ふふふ、今でもシリウスはかっこいいもんね!」
馬に乗ったシリウスはピシッと背筋が伸びて、とってもかっこいい。
大好きなワンちゃんを褒められるのはとっても誇らしくなってしまう。

「ラフィリア様も大分大きくなられましたね。」
シエルはにっこりと思いを馳せるように目を細める。

「全然まだまだ小さいままだけどね。」
8歳になって幼児ではなく、子供っぽくはなったが、この世界にいると自分が酷く鈍間に感じるのだ。
私が5歳の時に生まれた子供は、もう成人している。

大きくならない自分を寂しく思う事があるのだな・・・。
異世界8年目でもまだまだ慣れることは無い。

「焦ることはありませんよ。
ラフィリア様が人間である御蔭で、この国はあれから沢山助けられているのですから。」
シエルが優しく微笑む。

シエルは時々私を見る時、遠くの誰かを見ているような顔をする。
その理由はとても大切なものなのだろうと、なんとなくわかるから、私は聞けずに居るのだけれど・・・。

「それにラフィリア様の飛び切り可愛い姿を沢山見れるのは、とっても嬉しいです!」

シリウスが耳をピコピコさせて言った途端、扉がバタン!と乱暴に開く。

「ラフィ~!またここに居た~!!」
扉を開けた主、耳をペタンとしているシリウスがちょっとだけ尻尾を振って立っている。

「シリウス!」
私が言うが早いか、シリウスがギュッと私を抱きしめて抱き上げる。
耳をペタとさせて、いつものすりすりをしてくるので、私もギュッとシリウスの首に抱き着きすりすりを返す。

私が大分大きくなったとはいえ、まだまだ抱っこスタイルを止めてくれそうにない。
目の前にある凛々しい顔が特別優しい顔で微笑む。

本当にこの抱っこは心臓に悪い。
こんなの照れてシリウスの肩にかかった毛皮に顔をうずめるしかない。

「ラフィはいっつもシエルと一緒に居るんだから!
シエル!いつもずるいぞ!自重しろ!」

「シリウス様がお忙しいのが悪いですよ。
私はただの役得です。
それにラフィリア様とは魔術の研究者仲間ですから。」

ね~っといった具合に、シエルが頭を傾けて微笑む。

「~~~~~!
これ以上仲良くするな!」

おお!これは久々のワンちゃんモード、心を許しているシエルの前で嫉妬をあらわにしている。
こんな風にシリウスが心の内を見せられる人は数少ない。

私はなんとなく微笑ましく見てしまう。

「嫌ですよ~!
せっかく高度な魔術の会話ができる仲間なんですから。」
シエルは分かりつつ意地悪をする。

「ふふふっ!」
会話が可愛すぎてついに笑い声をあげてしまう。

「シリウス。
シリウス王がお忙しいので付き合って頂いていたんですからね!」

私がそう言うとシリウスが耳をペタンとして、紫の瞳がしょんぼりする。

 シリウス大好き!会いたかった!

シリウスだけに聞こえるよう心の中で話しかけて、抱き着いてすりすりする。
私も心の声を操れるようになったのだ。
とっても便利。

 ラフィ~~~!俺も大好きだよ!!!

シリウスは、心の声で言った意味がないくらいに尻尾をぶんぶん振っている。
この3年ずっとこの調子で、いやどんどん加速度的に酷く溺愛されている気がする。

ほっておくとドレスが無限に増えるし、贈り物の山になってしまうので、都度都度注意しなければいけないのだ。
今は気持ちだけ貰っておきたい。

魔窟のドラゴンを倒したかっこいい王様は、心を許した人の前だけでは凄くかわいい。
時々臣下を前に真面目に政治をしているシリウスを見ると、新鮮な気持ちになるほどだ。

「それで、王はなぜラフィリア様を探していたんですか?」

シエルがにこにこ笑いながら本題を斬り込む。
こんなに可愛いシリウスでもいつも忙しくしている、今日は何かあって探していたのだろう。

「そうだ!ラフィに見て欲しいものがあって来たんだ。」
シリウスが真剣な瞳に戻る。

「シエルも来てもらえるか?」

シエルはにっこりと頷いた。
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