24 / 37
子犬の王子
24・味方と名乗る者
しおりを挟む
王城の中の大図書室に背を丸めながら読書に没頭するシリウスの姿がある。
周りにはたくさんの分厚い本が積まれている。
そのどれも人間の生態に関する本だ。
分かった事も沢山あった。
人間は成長が遅い事。
成人と呼べるまで育った人間は18年ほどもかかった事。
だがそのどれも生まれた直後の記述がほとんどで、どのように大きくなって、なぜ人間の成長は遅いのか、獣人との違いは何なのか、詳しいことは書かれていない。
そのほとんどは、生まれぬよう注意する方法、人間になる確率論など、生まれた後育てる方法にフォーカスしている者は無い。
「何だよこれ・・・。」
シリウスは小さな頭を本に突っ伏す。
黒い耳はたれて、溜息しか出てこない。
「守り方が分からない・・・。」
鳥かごのような所に匿ってひっそりと守るその程度の事なら今と変わらない。
でも僕がしなきゃいけないのは王の番として認めさせることだ。
その為の何か突破口でもあれば・・・そう思って調べても、そもそも研究もされていない。
「どうしたらいい・・・。」
頼りなくつぶやく声が、泣きそうだ。
「ラフィリア・・・。」
「おや?王子?どうなさいましたか?」
そう声をかけてきたのは、山積みの本を抱えた魔術師のシエルだった。
「私で何かお力になれることありましたら、お答えいたしますよ?」
そう言って柔らかな笑顔でにっこりと微笑む。
シエルは年こそ若かったが、筆頭魔術師として王国の魔術を牽引し研究もしている。
スナネズミの獣人で可愛らしい耳がピコピコと心配そうに動く。
人間は魔術師の領分ではない気もしたのだけれど、藁をもすがる思いでいたのだ。
僕はこの頼もしそうな藁に縋ってみることにした。
僕はラフィリアの話を避けつつ、人間を国で認めてきちんと地位を用意したいこと、等をオブラートに包みつつ政治の匂いを漂わせて話した。
国としてどうにかしたいという体にしたのだ。
シエルは、隣に座り真摯に聞いてくれた。
頷きながら聞く黒い眼は、僕の話を真剣に聞きそしてどこまで本気なのか、真意はどこにあるのかと探るようなものも感じさせる。
シエルは何か考えるようなしぐさを見せ
「私でよければ、一緒にその御計画に加えて頂けませんか・・・?
お役に立てる部分もあると思いますし、私も興味深く思っておりました。」
シエルは柔らかく微笑み、しかしその目は真剣だった。
僕は正直に言うと迷ったけれど、この国随一の魔術師の地位のあるシエルがどのような考えを持つ人間か知る必要はあると思った。
敵になるのであれば先に知りたい、味方になればこれ以上に頼もしい味方は居ない。
「宜しく、シエル。」
僕も柔らかく微笑んだ。
周りにはたくさんの分厚い本が積まれている。
そのどれも人間の生態に関する本だ。
分かった事も沢山あった。
人間は成長が遅い事。
成人と呼べるまで育った人間は18年ほどもかかった事。
だがそのどれも生まれた直後の記述がほとんどで、どのように大きくなって、なぜ人間の成長は遅いのか、獣人との違いは何なのか、詳しいことは書かれていない。
そのほとんどは、生まれぬよう注意する方法、人間になる確率論など、生まれた後育てる方法にフォーカスしている者は無い。
「何だよこれ・・・。」
シリウスは小さな頭を本に突っ伏す。
黒い耳はたれて、溜息しか出てこない。
「守り方が分からない・・・。」
鳥かごのような所に匿ってひっそりと守るその程度の事なら今と変わらない。
でも僕がしなきゃいけないのは王の番として認めさせることだ。
その為の何か突破口でもあれば・・・そう思って調べても、そもそも研究もされていない。
「どうしたらいい・・・。」
頼りなくつぶやく声が、泣きそうだ。
「ラフィリア・・・。」
「おや?王子?どうなさいましたか?」
そう声をかけてきたのは、山積みの本を抱えた魔術師のシエルだった。
「私で何かお力になれることありましたら、お答えいたしますよ?」
そう言って柔らかな笑顔でにっこりと微笑む。
シエルは年こそ若かったが、筆頭魔術師として王国の魔術を牽引し研究もしている。
スナネズミの獣人で可愛らしい耳がピコピコと心配そうに動く。
人間は魔術師の領分ではない気もしたのだけれど、藁をもすがる思いでいたのだ。
僕はこの頼もしそうな藁に縋ってみることにした。
僕はラフィリアの話を避けつつ、人間を国で認めてきちんと地位を用意したいこと、等をオブラートに包みつつ政治の匂いを漂わせて話した。
国としてどうにかしたいという体にしたのだ。
シエルは、隣に座り真摯に聞いてくれた。
頷きながら聞く黒い眼は、僕の話を真剣に聞きそしてどこまで本気なのか、真意はどこにあるのかと探るようなものも感じさせる。
シエルは何か考えるようなしぐさを見せ
「私でよければ、一緒にその御計画に加えて頂けませんか・・・?
お役に立てる部分もあると思いますし、私も興味深く思っておりました。」
シエルは柔らかく微笑み、しかしその目は真剣だった。
僕は正直に言うと迷ったけれど、この国随一の魔術師の地位のあるシエルがどのような考えを持つ人間か知る必要はあると思った。
敵になるのであれば先に知りたい、味方になればこれ以上に頼もしい味方は居ない。
「宜しく、シエル。」
僕も柔らかく微笑んだ。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~
白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。
国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。
幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。
いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。
これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。
誰もがその聖女はニセモノだと気づいたが、これでも本人はうまく騙せているつもり。
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・クズ聖女・ざまぁ系・溺愛系・ハピエン】
グルーバー公爵家のリーアンナは王太子の元婚約者。
「元」というのは、いきなり「聖女」が現れて王太子の婚約者が変更になったからだ。
リーアンナは絶望したけれど、しかしすぐに受け入れた。
気になる男性が現れたので。
そんなリーアンナが慎ましやかな日々を送っていたある日、リーアンナの気になる男性が王宮で刺されてしまう。
命は取り留めたものの、どうやらこの傷害事件には「聖女」が関わっているもよう。
できるだけ「聖女」とは関わりたくなかったリーアンナだったが、刺された彼が心配で居ても立っても居られない。
リーアンナは、これまで隠していた能力を使って事件を明らかにしていく。
しかし、事件に首を突っ込んだリーアンナは、事件解決のために幼馴染の公爵令息にむりやり婚約を結ばされてしまい――?
クズ聖女を書きたくて、こんな話になりました(笑)
いろいろゆるゆるかとは思いますが、よろしくお願いいたします!
他サイト様にも投稿しています。

悪役令嬢ですが、ヒロインが大好きなので助けてあげてたら、その兄に溺愛されてます!?
柊 来飛
恋愛
ある日現実世界で車に撥ねられ死んでしまった主人公。
しかし、目が覚めるとそこは好きなゲームの世界で!?
しかもその悪役令嬢になっちゃった!?
困惑する主人公だが、大好きなヒロインのために頑張っていたら、なぜかヒロインの兄に溺愛されちゃって!?
不定期です。趣味で描いてます。
あくまでも創作として、なんでも許せる方のみ、ご覧ください。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

婚約者を親友に盗られた上、獣人の国へ嫁がされることになったが、私は大の動物好きなのでその結婚先はご褒美でしかなかった
雪葉
恋愛
婚約者である第三王子を、美しい外見の親友に盗られたエリン。まぁ王子のことは好きでも何でもなかったし、政略結婚でしかなかったのでそれは良いとして。なんと彼らはエリンに「新しい縁談」を持ってきたという。その嫁ぎ先は“獣人”の住まう国、ジュード帝国だった。
人間からは野蛮で恐ろしいと蔑まれる獣人の国であるため、王子と親友の二人はほくそ笑みながらこの縁談を彼女に持ってきたのだが────。
「憧れの国に行けることになったわ!! なんて素晴らしい縁談なのかしら……!!」
エリンは嫌がるどころか、大喜びしていた。
なぜなら、彼女は無類の動物好きだったからである。
そんなこんなで憧れの帝国へ意気揚々と嫁ぎに行き、そこで暮らす獣人たちと仲良くなろうと働きかけまくるエリン。
いつも明るく元気な彼女を見た周りの獣人達や、新しい婚約者である皇弟殿下は、次第に彼女に対し好意を持つようになっていく。
動物を心底愛するが故、獣人であろうが何だろうがこよなく愛の対象になるちょっとポンコツ入ってる令嬢と、そんな彼女を見て溺愛するようになる、狼の獣人な婚約者の皇弟殿下のお話です。
※他サイト様にも投稿しております。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる