神様に癒しをお願いしたら旦那様がもふもふでした

Keina

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子犬の王子

24・味方と名乗る者

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王城の中の大図書室に背を丸めながら読書に没頭するシリウスの姿がある。
周りにはたくさんの分厚い本が積まれている。
そのどれも人間の生態に関する本だ。

分かった事も沢山あった。
人間は成長が遅い事。
成人と呼べるまで育った人間は18年ほどもかかった事。
だがそのどれも生まれた直後の記述がほとんどで、どのように大きくなって、なぜ人間の成長は遅いのか、獣人との違いは何なのか、詳しいことは書かれていない。
そのほとんどは、生まれぬよう注意する方法、人間になる確率論など、生まれた後育てる方法にフォーカスしている者は無い。

「何だよこれ・・・。」
シリウスは小さな頭を本に突っ伏す。
黒い耳はたれて、溜息しか出てこない。

「守り方が分からない・・・。」
鳥かごのような所に匿ってひっそりと守るその程度の事なら今と変わらない。
でも僕がしなきゃいけないのは王の番として認めさせることだ。
その為の何か突破口でもあれば・・・そう思って調べても、そもそも研究もされていない。

「どうしたらいい・・・。」
頼りなくつぶやく声が、泣きそうだ。
「ラフィリア・・・。」

「おや?王子?どうなさいましたか?」
そう声をかけてきたのは、山積みの本を抱えた魔術師のシエルだった。
「私で何かお力になれることありましたら、お答えいたしますよ?」
そう言って柔らかな笑顔でにっこりと微笑む。

シエルは年こそ若かったが、筆頭魔術師として王国の魔術を牽引し研究もしている。
スナネズミの獣人で可愛らしい耳がピコピコと心配そうに動く。
人間は魔術師の領分ではない気もしたのだけれど、藁をもすがる思いでいたのだ。
僕はこの頼もしそうな藁に縋ってみることにした。

僕はラフィリアの話を避けつつ、人間を国で認めてきちんと地位を用意したいこと、等をオブラートに包みつつ政治の匂いを漂わせて話した。
国としてどうにかしたいという体にしたのだ。

シエルは、隣に座り真摯に聞いてくれた。
頷きながら聞く黒い眼は、僕の話を真剣に聞きそしてどこまで本気なのか、真意はどこにあるのかと探るようなものも感じさせる。
シエルは何か考えるようなしぐさを見せ
「私でよければ、一緒にその御計画に加えて頂けませんか・・・?
お役に立てる部分もあると思いますし、私も興味深く思っておりました。」
シエルは柔らかく微笑み、しかしその目は真剣だった。

僕は正直に言うと迷ったけれど、この国随一の魔術師の地位のあるシエルがどのような考えを持つ人間か知る必要はあると思った。
敵になるのであれば先に知りたい、味方になればこれ以上に頼もしい味方は居ない。

「宜しく、シエル。」
僕も柔らかく微笑んだ。





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