神様に癒しをお願いしたら旦那様がもふもふでした

Keina

文字の大きさ
上 下
17 / 37
小さな人間の子

17・罪と罰

しおりを挟む
「ごめんね。あまり、ラフィに聞かせたくない話で、でも、スフィアリム侯爵は罰が必要になってくる。
私がラフィの部屋に泊まった時、暗殺者が現れたんだ。
王がいる部屋に暗殺者を送ることは許されない。たとえ知らなくてもね。
他にも余罪があって、司法の場にかける必要がある。
君の父上ではあるけど、僕は君に対する対応も許すつもりは無いんだ。」

ワンちゃんは眉間に力を込めながら低い声で言う。
「君にもしもの事があっていたらと、寒気がするし、どうしようもない怒りが湧く。」

「ワンちゃん・・・」
ワンちゃんは言わないようにしてるけど、私は父親に殺されそうになっていることを知っている。
だから、ワンちゃんが守ってくれていたかもしれないこと、ワンちゃんの怒りも分かる気がした。
私もきっとワンちゃんに何かが起こっていたら、絶対に許せない。
そのくらいに、ワンちゃんは私にとってかけがえの無い存在だ。
ワンちゃんもそう思ってくれていたのは、やっぱり嬉しい。

私はワンちゃんのほっぺを両手でぷにぷにする。
「ふふ。ありがとう!怒った顔だめ~。」

ワンちゃんは照れて困り顔で笑う。
私はワンちゃんといる時にある、この幸せな時間が大好きなんだ。

「ワンちゃん。お母様は?
お母様は悪くないの!絶対なの!本当にいっぱい愛してくれたの!
私も大好き!お母様に罰は与えないで!
お願い!」
私は必死に訴える。
お母様は、守ってくれたもの!お母様まで何かの罰が与えられたらどうしよう・・・!

「心配ないよ・・・。お母上は罪には問わない。
寧ろラフィを守っていたと聞いてる。
ラフィはここで暮らすけど、ちゃんとお母上にも会えるようにするからね?」
そう言って優しく抱き寄せて、背中を撫でてくれる。
柔らかな黒髪がふわふわで、ワンちゃんそのもので、頭をすりすりっと寄せる癖も人間でも変わらない。

ワンちゃん大好き。
一番安心できる。
人間になってびっくりしたけど、ワンちゃん大好きなままだ。
ワンちゃん、ワンちゃんだ~い好き~~!

私はご機嫌でつい、心の中でワンちゃん大好きソングを歌っていると「・・・ゴ、ゴホンッ!」と咳払いが背後でした。

「スフィアリム侯爵令嬢、その辺にして頂けますでしょうか・・・あ、あの。
王が真っ赤な顔で身もだえておりますので・・・」

「え?・・・・なんで?」
抱っこから起き上がって、ワンちゃんの顔を見ると、真っ赤な顔でフルフルしている。

「セバス!やめろよ!歌ってくれなくなったらどうするんだ!?」
顔を赤く染めて、なんだかにやけ顔のワンちゃんが、プンスカ怒っている。

「歌?なんのこと??」

私心の中で歌ってたよね??
どういうこと?

「あ!いや!あの!だから!ち、ちがう!これは!」
ワンちゃんが耳をせわしなくピコピコしながら焦っている。

「侯爵令嬢、王様は侯爵令嬢に好きだと言われたいばっかりに、侯爵令嬢が心で強く思ったことが周囲に筒抜けだと、黙っておいででした。
我々獣人は声に出さなくとも、通じ合えます。
その原理で、侯爵令嬢の強く思った感情は伝わるのです。」

「ええっ????!!!!」
思わぬことに思わず大きな声を出してしまう。
「なんでばらすんだよ!もうこれから言ってくれなくなるだろ!」
「ワンちゃん?!」

「王がなかなか仰らないからです!王宮でお暮しになるのですから、今までと同じは無理でしょう。
今が潮時ですよ。」

「わんちゃん?なにそれ!なんで教えてくれないの~~~!」
今度は私が赤くなる番だ。

「大丈夫ですよ、侯爵令嬢。心の喋り方は練習すれば覚えられますから。
少しずつがんばしましょうね。」

「ああ!ラフィが好きって言ってくれなくなる!あんな大きな声で言ってくれることないのに!」

「そんなに大きい声だったの?!」
しまった!と言う顔をして、ワンちゃんが口に手を当てる。

「最悪!もうワンちゃんなんて知らない!」

そうしてとんでもない一日は、最後にとんでもない爆弾を落として幕を閉じたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】死の4番隊隊長の花嫁候補に選ばれました~鈍感女は溺愛になかなか気付かない~

白井ライス
恋愛
時は血で血を洗う戦乱の世の中。 国の戦闘部隊“黒炎の龍”に入隊が叶わなかった主人公アイリーン・シュバイツァー。 幼馴染みで喧嘩仲間でもあったショーン・マクレイリーがかの有名な特効部隊でもある4番隊隊長に就任したことを知る。 いよいよ、隣国との戦争が間近に迫ったある日、アイリーンはショーンから決闘を申し込まれる。 これは脳筋女と恋に不器用な魔術師が結ばれるお話。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜

川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。 前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。 恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。 だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。 そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。 「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」 レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。 実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。 女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。 過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。 二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

婚約者を親友に盗られた上、獣人の国へ嫁がされることになったが、私は大の動物好きなのでその結婚先はご褒美でしかなかった

雪葉
恋愛
婚約者である第三王子を、美しい外見の親友に盗られたエリン。まぁ王子のことは好きでも何でもなかったし、政略結婚でしかなかったのでそれは良いとして。なんと彼らはエリンに「新しい縁談」を持ってきたという。その嫁ぎ先は“獣人”の住まう国、ジュード帝国だった。 人間からは野蛮で恐ろしいと蔑まれる獣人の国であるため、王子と親友の二人はほくそ笑みながらこの縁談を彼女に持ってきたのだが────。 「憧れの国に行けることになったわ!! なんて素晴らしい縁談なのかしら……!!」 エリンは嫌がるどころか、大喜びしていた。 なぜなら、彼女は無類の動物好きだったからである。 そんなこんなで憧れの帝国へ意気揚々と嫁ぎに行き、そこで暮らす獣人たちと仲良くなろうと働きかけまくるエリン。 いつも明るく元気な彼女を見た周りの獣人達や、新しい婚約者である皇弟殿下は、次第に彼女に対し好意を持つようになっていく。 動物を心底愛するが故、獣人であろうが何だろうがこよなく愛の対象になるちょっとポンコツ入ってる令嬢と、そんな彼女を見て溺愛するようになる、狼の獣人な婚約者の皇弟殿下のお話です。 ※他サイト様にも投稿しております。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...