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小さな人間の子
15・新しい風
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私の流した涙に気が付き、すぐさま王様が慌てた様子で駆け寄ってくる。
その優しい瞳は本当にワンちゃんで、私の安心できるあの子なのだと、すとんと納得できてしまった。
ワンちゃん、王様だったんだ…。
駆け寄ってきたワンちゃんがオロオロと私を抱き上げる。
綺麗な男性の顔で顔を覗き込まれる、片手で私を抱えながら優しく涙を拭いてくれる。
あまりにも違う動作なのに、いつものワンちゃんだと思った。
私が泣いていると涙を拭いてくれる。
いつものワンちゃんだ…。
止まることない涙に私自身が戸惑った。
緊張の糸が溶けて…。
ずっと、ずっと不安だった。
生まれた時から、この世界でいらない人間だと、ずっとそう言われて、ずっとそうだと思っていた。
私が神の気まぐれで、外から来た人間だから。
一生変わらないと思っていた。
でも、ワンちゃんは出会った時から、ずっと言ってくれていた。
ずっとそばで、大丈夫だと、そう言っていたんだ。
私の安心は堰を切ったように涙となって零れて、今までの悪意も悲しみも全部、全部洗い流してしまうくらいに、次から次へと、とめどなく、とめどなく。
私はワンちゃんの首にいつものように抱き着いて、人間のワンちゃんも私に頭をすりすりして大丈夫だと言ってくれる。
泣き止まない私の背中を優しく撫でてあやしながら、玉座に上る。
少し高い位置で、皆の方に向き合いワンちゃんは続けた。
「この子の魔力は子供の今の状態で、私の3倍以上ある。」
「三倍!!」
「王の魔力は普通の獣人の倍以上あるぞ??!!!」
驚嘆と信じられない思いとで、場がざわざわとまた騒がしくなる。
王の優しい仕草を見て、場は先ほどの緊張と怒りと言うよりも、前向きに聞こうという姿勢になっていた。
番と言うのはそれだけ重大なことなのかもしれない。
「魔力がいかに重要で、それを維持することが大変なものか身にしみてわかる者も居るだろう。
魔力が及ばぬばかりに倒せなかった、悪魔も居た。
時折生れ出る人間は、むしろ神の采配。
この混沌の世界に落として下さっていた、救世主であったのだ。」
え?!神??
あの、オタクで自分勝手で、嫌な感じの神の事??
????
そうなの??
神の遊びに見えたのに、この世界に必要なことなの??
そんなことを起こすのが神の御業なのか、神とはそういう存在なのか、もはや訳が分からなくなった。
泣きすぎてしゃっくりを上げていたが、びっくりし過ぎてしゃっくりが止まるかと思った。
全部神の手の平の上だった孫悟空みたいな気持ちだ。
「我はここに宣言する!
人間を大切に育てられるよう教育施設を建て、人間が生まれた家には相応の援助もする。
育て方が分からぬからと、亡くしていい命などは無い!」
「これは、この世界の為、国益の為にも重要なことだ!
皆、全力で国中に広めよ!」
「最後に、この子の魔力がいかに凄まじいか、見せよう。」
「え?!私、魔法使えないよ??」
今度こそびっくりしてしゃっくりが止まった。
「大丈夫だ、魔力をはかるだけなら水晶に触れるだけでいい。」
玉座の脇から人の頭もありそうな大きな水晶が、恭しく運ばれてくる。
え?本当に??魔法なんて、魔力なんてあるの??
私、地球人だし、そんなの使ったこともないのに?
不安がる私の頭を優しく撫でながら、とろけるような優しい笑顔で「大丈夫だ」と囁くように諭す。
~~~~~~人間の顔!良過ぎてずるい!!
私は差し出された大きな水晶に、恐る恐る手を伸ばした。
私の手が水晶に触れた瞬間。
水晶が目もくらむような光を放ち、キラキラとあまりに美しい音を奏でて粉々に砕けていき、パァァっと光を放ち霧散した。
びっくりし過ぎて固まったままの私に。
目を限界まで見開いて、固まる広場の人々。
息をのみ、そのまま時間が止まったように無音になった。
ワンちゃんは一人微笑み、私の頭を撫でる。
「言っただろう?」
なんて小声でささやく。
そのあんまりに素敵な笑みに、正気に戻る前にほっぺが赤くなった。
「皆、事の重大さが分かったであろう?
我々が今まで、神の意志をどれほど無碍にしてきたか。
分かったら、事を最速、最重要事項としてあたれ!
これは勅命である!」
「はっ!!」
正気に戻り、事の重大さを理解した貴族たちが、真剣な顔で声を揃え礼をする。
この世界で新たな風が動き出した。
そんな瞬間だったんだと、そう思う。
その優しい瞳は本当にワンちゃんで、私の安心できるあの子なのだと、すとんと納得できてしまった。
ワンちゃん、王様だったんだ…。
駆け寄ってきたワンちゃんがオロオロと私を抱き上げる。
綺麗な男性の顔で顔を覗き込まれる、片手で私を抱えながら優しく涙を拭いてくれる。
あまりにも違う動作なのに、いつものワンちゃんだと思った。
私が泣いていると涙を拭いてくれる。
いつものワンちゃんだ…。
止まることない涙に私自身が戸惑った。
緊張の糸が溶けて…。
ずっと、ずっと不安だった。
生まれた時から、この世界でいらない人間だと、ずっとそう言われて、ずっとそうだと思っていた。
私が神の気まぐれで、外から来た人間だから。
一生変わらないと思っていた。
でも、ワンちゃんは出会った時から、ずっと言ってくれていた。
ずっとそばで、大丈夫だと、そう言っていたんだ。
私の安心は堰を切ったように涙となって零れて、今までの悪意も悲しみも全部、全部洗い流してしまうくらいに、次から次へと、とめどなく、とめどなく。
私はワンちゃんの首にいつものように抱き着いて、人間のワンちゃんも私に頭をすりすりして大丈夫だと言ってくれる。
泣き止まない私の背中を優しく撫でてあやしながら、玉座に上る。
少し高い位置で、皆の方に向き合いワンちゃんは続けた。
「この子の魔力は子供の今の状態で、私の3倍以上ある。」
「三倍!!」
「王の魔力は普通の獣人の倍以上あるぞ??!!!」
驚嘆と信じられない思いとで、場がざわざわとまた騒がしくなる。
王の優しい仕草を見て、場は先ほどの緊張と怒りと言うよりも、前向きに聞こうという姿勢になっていた。
番と言うのはそれだけ重大なことなのかもしれない。
「魔力がいかに重要で、それを維持することが大変なものか身にしみてわかる者も居るだろう。
魔力が及ばぬばかりに倒せなかった、悪魔も居た。
時折生れ出る人間は、むしろ神の采配。
この混沌の世界に落として下さっていた、救世主であったのだ。」
え?!神??
あの、オタクで自分勝手で、嫌な感じの神の事??
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そうなの??
神の遊びに見えたのに、この世界に必要なことなの??
そんなことを起こすのが神の御業なのか、神とはそういう存在なのか、もはや訳が分からなくなった。
泣きすぎてしゃっくりを上げていたが、びっくりし過ぎてしゃっくりが止まるかと思った。
全部神の手の平の上だった孫悟空みたいな気持ちだ。
「我はここに宣言する!
人間を大切に育てられるよう教育施設を建て、人間が生まれた家には相応の援助もする。
育て方が分からぬからと、亡くしていい命などは無い!」
「これは、この世界の為、国益の為にも重要なことだ!
皆、全力で国中に広めよ!」
「最後に、この子の魔力がいかに凄まじいか、見せよう。」
「え?!私、魔法使えないよ??」
今度こそびっくりしてしゃっくりが止まった。
「大丈夫だ、魔力をはかるだけなら水晶に触れるだけでいい。」
玉座の脇から人の頭もありそうな大きな水晶が、恭しく運ばれてくる。
え?本当に??魔法なんて、魔力なんてあるの??
私、地球人だし、そんなの使ったこともないのに?
不安がる私の頭を優しく撫でながら、とろけるような優しい笑顔で「大丈夫だ」と囁くように諭す。
~~~~~~人間の顔!良過ぎてずるい!!
私は差し出された大きな水晶に、恐る恐る手を伸ばした。
私の手が水晶に触れた瞬間。
水晶が目もくらむような光を放ち、キラキラとあまりに美しい音を奏でて粉々に砕けていき、パァァっと光を放ち霧散した。
びっくりし過ぎて固まったままの私に。
目を限界まで見開いて、固まる広場の人々。
息をのみ、そのまま時間が止まったように無音になった。
ワンちゃんは一人微笑み、私の頭を撫でる。
「言っただろう?」
なんて小声でささやく。
そのあんまりに素敵な笑みに、正気に戻る前にほっぺが赤くなった。
「皆、事の重大さが分かったであろう?
我々が今まで、神の意志をどれほど無碍にしてきたか。
分かったら、事を最速、最重要事項としてあたれ!
これは勅命である!」
「はっ!!」
正気に戻り、事の重大さを理解した貴族たちが、真剣な顔で声を揃え礼をする。
この世界で新たな風が動き出した。
そんな瞬間だったんだと、そう思う。
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