神様に癒しをお願いしたら旦那様がもふもふでした

Keina

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小さな人間の子

14・この世界の事実

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‥‥え?
‥‥‥‥え????

頭がとても付いて行かない、今私はなんて言ったんだっけ?
「ワンちゃん?」

・・・・ワンちゃん????
ふわふわで可愛い大きくなったワンちゃんの姿と、玉座に座る若く美しい王様がなぜか私の中でリンクする。

???????????

王様は悪戯で可笑しそうに目を細めて笑う。
紫の瞳はワンちゃんと同じように優しく不思議な輝きで私を見ている。
黒々とつややかな髪にワンちゃんと同じ形のすっと尖った耳。
ふさふさのしっぽは今は楽しそうにふわふわ揺れている。

「陛下!御言葉をお許し頂きます!この子供は人間ではないですか!」
一人が口を開くと、堰を切ったように口々に反対意見が紛糾した。

「そ!そうです!人間などと!!何より!まだ小さな子供!」
「陛下との年の差を考えてもふさわしくは無いでしょう!」
「ましてや人間などと!!」
「このようにひ弱な生き物!」
「そもそも、スフィアリム侯爵家に令嬢がいるなど!聞いたことが御座いません!」
「陛下の婚約者に人間など!ふさわしいはずも御座いません!!」

皆一様に叫ぶように大きな声で、とんでもないことだと怒りに任せた調子でしゃべり続ける。

王は冷ややかな目でそれらを眺めながら、美しい顔を呆れ顔にしてため息をつく。

「我は、貴殿らに意見を求めただろうか?」
冷ややかで厳しい良く通る声が、広間に反響するように響き渡る。

場が凍えるように静まり返った。

小太りの巻髭の男性が震える声で、小さくつぶやく。
「な、なぜなのです…?」
小さな呟きだったが、静まり返った広場ではやけに響いて聞こえる。

それはこの場に居る、私を含めたすべての人の疑問だった。
皆平等に混乱している。

「彼女は、私の番なのだ。」

その瞬間、皆が息をのむ。
場に衝撃が走ったことが分かった。
皆、毛が逆立つほどにびっくりしている。

その一言がよほど強大な事なのか、半分納得感のようなものが流れるのを感じたが、肝心な私には理解が出来ていなかった。

番とは、いったい・・・?

堅物そうな、老人が意を決して声を上げる。
「番様なら、無理も聞きましょうが、彼女の髪は金色では…?」

その一言にまたざわざわと騒がしくなった。

私の髪が、金色・・・?
私は自分の髪を見る、金ではあるが紫の輝きが無視できないほどにある気がする。

「ああ、そのことだが。
彼女は人間だ。酷い環境に居たので、我が守るために守護の魔法をかけ、色も隠していた。」

そう言って王様がパチンと指を打ち鳴らすと、私の周りで何かがはじけるような気配がした。

「金に!む、紫!!!!」
再び大きなどよめきが場を包み込む。

「王の色だ!」
「王家の色だ!」
「紫など!王以外にはいない!!」

私は何のことか分からず、自分の髪を見る。
気が付いた時には、もうこの色だと思ったけれど、生まれつきのものではなかったのだろうか??

「彼女に会った時すぐに番だと分かった。
ただ、彼女の環境は酷いものだった。」

鋭く刺さるような視線を、お父様に向ける。
お父様はと言うと、もはや生きているのが不思議なほどの顔色で、ガタガタ震えている。

「だから、会ったその日にすぐに契約を交わしたのだ。
彼女を悪意から守れるように。」

契約?ワンちゃんとあった日に?
ふわふわの子犬と会った、あの優しい日を思い起こしたけれど、契約をした覚えはなかった。

私が不思議な顔をしていると、王様が気が付き、素敵な笑みで微笑みながら鼻をちょんちょんと指で触って見せる。

?…鼻??
あの時したのは、実家の猫とよくやる挨拶??
あれが…。契約だったの??

「それに、誤解しないでもらいたいな。
彼女の方が私より1歳年上。
彼女は子供の成りではあるが、5歳。
彼女の容姿は、人の特徴の一つで大人になるのが獣人より遅いだけだ。」

「5歳?!もう立派な成人の年ではないか!」
「どう見ても子供だぞ?!」
「人の特徴??」
信じられないという顔で、皆一様にじろじろと私を見る。

え??????
5歳ってこんなもんじゃないの??
確かに、最初に会った時は子犬で、よちよち歩いてたワンちゃんが、もう大人になってるけど!
私ってこの世界では異常な成長なんだ!

「獣人の成人は3歳。その後成長は緩やかになり、人との寿命は変わらぬ。
ただ人間は見た目が成人のようになるのに、18年はかかるらしい。」

「じゅうはちねん?!!!?!!!」
皆、一様に飛び上がりそうなほどに驚き続ける。

「今までもわが国では人型の子供は生まれていた。
そういった子供はすぐに死んでしまっていたが、そもそも育て方が我々と異なる。
人型は、成長に時間がかかる分、その魔力は獣人の比ではない。
私たちは、その事に気が付かず、今までずっと健康に生まれた魔力の素養の高い人間を、奇形の弱い個体として上手く育てもせず、死なせてしまっていたのだ。」

「彼女が私に会うまで生きていてくれたのは、彼女の母の功績と、王の番の為加護があったからに過ぎない。」

初めて聞く情報に、ただただ放心したように皆聞き入る。
ところどころで、小さくつぶやくように。「そんな…。」「まさか、あの子は…」と震える声が聞こえる。

次々と話される事に衝撃を受け、震えているのは私も同じだった。
私の疑問が、今次々と紐解かれていくように、明らかになっていく。

若く美しく聡明な王の顔が、自然と目に溜まっていく涙でぼやけていく。
今までの痛みが溶け出すように、自然と涙が零れていた。
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