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魔獣戦争
36話 終盤
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ギルド長とセスキの父親が来たおかげで、レオ達は九死に一生を得た。カーミン支部のギルド長フェニルと、この国の英雄シフトは、SSランク冒険者の実力を持っている。運良くレオ達は助かったのだ。
クロロは魔族に死んでいると言われたが、微かにも息が残っていた。重症で肋骨三本と鼻の骨が折れており、すぐに気当てを行なわれた。今は、衛生兵に引き取られ、簡易ベッドで寝ている。
レオも鼻の骨が折れており、腹が青緑色に腫れていた。クロロほど重症ではないが、出血が多かったのでめまいや立ち眩みが酷く少し休むことになった。
ロック鳥は翼が折れたせいで、飛べなくなってしまったが、落ちたセスキとクラーレのクッションになり、二人は大きな怪我がなく済んだ。レオとクロロが休んでいる中、セスキとクラーレは残りの魔獣を倒している。
「私たちが来るのが、あと少し遅かったら危なかったわね。あなたは運がいいわ」
ギルド長が、レオ達を衛生兵のテントまで運ぶ時に言った。
魔族と戦っているレオを見たのは、本当に偶然だった。発生源と考えられる山頂まで調べに行った時、たまたま魔族を発見したのだ。落ちていく彼を見て、急いで助けに行ったのだと言う。
全員が生き残れたのは、奇跡としか言いようがない。
「おい……ガキ。俺は生きているのか」
クロロが目を覚まし、近くにいるレオに話しかける。最初は起き上がろうとしていたが、「イタタ……」と言うと、ぐったりと横になった。それを見て、彼がどれだけ重症か感じた。
「生きてます。ほら、僕と触れますから」
「いや、俺とガキが死んでても触れるぞ。霊同士は、見えるし触れるって聞いたからな」
その発言に、レオは引き攣った笑いを見せた。どう反応すれば良いのか迷い、少しノリが悪くなる。クロロはそれを察すると、「すまん、冗談」と謝った。
レオの隣で、クロロの発言に対して、アメリアが物凄い剣幕で彼を睨んだ。何も発さず、隣でレオだけがその圧を感じ、何だか気まずいムードになってしまう。
レオやアメリアにとって、そう言う話題はあまり良くない。
いつしか自然に、なるべく触れないことがきまりのようになっていた。そのせいで、お互い仲がこじれるのが嫌だからだ。
アメリアが死を心配するのはよくあるが、死を冗談に使って話題を出すのは今まで避けてきた。
レオからはクロロとも妙に気まずいものを感じ、アメリアの怒りようには、どう話しかければ良いのか分からず、困り果ててしまう。
居心地が悪くなって、彼は「トイレ」と言いながら外へ出た。別にトイレに行きたいわけじゃないが、一旦場を離れようと思ったからだ。
「レオ、あんな奴の言葉気にしなくていいからね!」
「大丈夫だよ」
そう言いながらも、彼は頭の中でもんもんと考えていた。
もし、自分が死んだら、アメリアに触れることができる。簡単だ。首を刎ねれば、少し苦しめばすぐに死ねる。そしたら、彼女と触れることができるし、食べ物も住処もいらない。怪我をすることもないし、一生一緒にいられる。
けど、新しい経験を生で感じることができない。機能するのは視覚と聴覚だけで、映画を見続けるような人生を送らなければならない。仮に成仏した場合、アメリアとは離れ離れになってしまう。
レオがアメリアを生き返らせたい理由は、彼女と過ごすうちに、人間と霊の超えられない壁を感じてしまうからだ。その他にも、アメリアにはたくさんの経験をして欲しかった。美味しい食べ物を食べて、雪の冷たさを感じて、柔らかい布団で寝て、生者が感じることのできるごく当たり前の日常を。
だから、自分が死んでアメリアと一緒にいる、という甘い考えには同意できない。
「僕はね、今が幸せ。だから、死のうとは思わないよ。安心して」
すると、アメリアは「嫌だ」とはっきり答えた。レオは「えっ」と言いながら、彼女の方を見返す。否定されたことに驚いて、なぜと疑問も出てきた。
「安心なんてできない。冒険者は死ぬか、生きるかなんでしょ。私の心配はどこに持っていったら良いの? レオはどんどん危険な場所へ行こうとするから、私はいつも冷や冷やしながら隣にいるの」
彼女は、今まで秘密にしてきたことを打ち明けた。もう、今しかないと思ったし、魔族と正面から戦おうとする姿に限界が来たからだ。
レオが死ぬのは、そう遠い未来ではないと思う。彼にとって無理をしていなくても、大丈夫だと答えてても、死ぬような真似はもうして欲しくなかった。
「ごめん……」
しかし、冒険者を止めるわけにもいかない。アメリアの心配はもっともだが、目的のエテレインを見つけるにも、生計を立てるにも、冒険者が大きな役割を果たしてくれるからだ。
すると、ジャック・オ・ランタンがレオに向かって飛びかかってきた。本当に、魔獣はタイミングというものを考えてくれない。
シュルシュルとツルを動かして、彼の首を絞めようとしてくる。レオは、すぐに剣で切断すると、カボチャを真っ二つに割った。ジャック・オ・ランタンは、人型のツルの形をしており、頭部のカボチャの所に魔石がある。
中が光って見えるのは、魔石の輝きが隙間から溢れているのだ。
「時間が欲しい。一週間、考えさせて」
つい、この場凌ぎに言ってしまった。冒険者を続けたいがために、時間で何とかしようと考える自分が情けない。急なアメリアの発言に対して、しばらく考える時間がほしかった。
「何を考えるの?」
「アメリアが……僕に安心してもらえる方法……」
「死ぬような危険な事をしなければ良い話だよ」
「それは、冒険者を止めるって意味でしょ。僕は、アメリアの蘇生を」
「もう死んだ人のために、レオが危険なことはしなくていいよ。私は……私はね、殺処分から逃れられた大切な命を、無駄に使って欲しくないの。私は死んだから、もう生き返られないの。諦めて……」
沈黙ができた。どちらも少し気が荒くなっている。一旦、落ち着きたいと思った。でも、こんな場所でそれはできないので、今感じて考えた事をチグハグになりながらも答えた。
「僕だって、死にたいわけじゃないよ。魔獣も本当なら、殺したくない。でも、アメリアを霊のまま残したくない。成仏が一番苦しまずに済むから。人間は必ず死ぬよ。僕もいつか死んでしまう。遅かれ、早かれ、僕がこの世を去るのは絶対的な運命だ。
そして、わがままかもしれないけど、僕はなるべく成仏したいと思っている。だから、アメリアも成仏させたい。そのために、今必死に強くなろうと思っているから。
お願いします。僕は、冒険者を続けてエテレインを探したい。アメリアが安心できるくらい強くなるための努力するから」
「決断するのはレオだから、私はいつでも賛成する。私の心配事を押し付けて、強制なんかはしないよ。でも、ずっとレオを見てきてね、安心して背中を押せる勇気はないの。ごめんね、急にこんな話されたら困るよね」
すると、ゴブリン二体がこんぼうを振り回してやってきた。レオは、鬱陶しく感じながら、すぐに首を跳ねる。今度はツチノコが牙をむき出しながら飛びついてきた。静かにアメリアと話すことができないので、少しずつ魔獣にイライラしてきた。ツチノコの頭を刺すと、レオは話の続きで思いついた事を提案した。
唐突な発案だが、彼女が承諾してくれる事を願う。
「もし、一ヶ月後ギルド長に勝てたら……安心する……?」
アメリアは少し迷ってみせた後、コクリと頷いた。「なぜ、ギルド長が出てきた?」と最初は思ったが、レオは勘違いしているんだと気づいた。
レオが弱いから心配になっているのではない。ギルド長を選んだのは、魔族に簡単に勝てたほどの力があるから、強いの証明になると思ったんだ。でも、アメリアが心配なのは、自分から危険な行為をするレオの無意識な癖だ。
正義感が強く、真っすぐな考えで、限界まで頑張ろうとする。優しくて、周りを大切にしたがるから、誰かの不幸に臆病。その性格のせいで、自分を大切にするのを忘れて、周りの人のために無茶なことをしだす。
だから、分かっていないんだなって思った。レオが弱いから不安なんじゃない。魔族に勝てなかったから安心できないんじゃない。ギルド長に勝てるほど強くなって欲しいんじゃなくて、その危ない性格をどうにかして欲しかった。
でも、もう仕方ないよね。彼が決めて、今努力しているから。これ以上、否定するような言葉はよそう。あのギルド長に一ヶ月で勝とうとするくらいなんだから、レオのやる気は誰も止められないと思う。
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全員が生き残れたのは、奇跡としか言いようがない。
「おい……ガキ。俺は生きているのか」
クロロが目を覚まし、近くにいるレオに話しかける。最初は起き上がろうとしていたが、「イタタ……」と言うと、ぐったりと横になった。それを見て、彼がどれだけ重症か感じた。
「生きてます。ほら、僕と触れますから」
「いや、俺とガキが死んでても触れるぞ。霊同士は、見えるし触れるって聞いたからな」
その発言に、レオは引き攣った笑いを見せた。どう反応すれば良いのか迷い、少しノリが悪くなる。クロロはそれを察すると、「すまん、冗談」と謝った。
レオの隣で、クロロの発言に対して、アメリアが物凄い剣幕で彼を睨んだ。何も発さず、隣でレオだけがその圧を感じ、何だか気まずいムードになってしまう。
レオやアメリアにとって、そう言う話題はあまり良くない。
いつしか自然に、なるべく触れないことがきまりのようになっていた。そのせいで、お互い仲がこじれるのが嫌だからだ。
アメリアが死を心配するのはよくあるが、死を冗談に使って話題を出すのは今まで避けてきた。
レオからはクロロとも妙に気まずいものを感じ、アメリアの怒りようには、どう話しかければ良いのか分からず、困り果ててしまう。
居心地が悪くなって、彼は「トイレ」と言いながら外へ出た。別にトイレに行きたいわけじゃないが、一旦場を離れようと思ったからだ。
「レオ、あんな奴の言葉気にしなくていいからね!」
「大丈夫だよ」
そう言いながらも、彼は頭の中でもんもんと考えていた。
もし、自分が死んだら、アメリアに触れることができる。簡単だ。首を刎ねれば、少し苦しめばすぐに死ねる。そしたら、彼女と触れることができるし、食べ物も住処もいらない。怪我をすることもないし、一生一緒にいられる。
けど、新しい経験を生で感じることができない。機能するのは視覚と聴覚だけで、映画を見続けるような人生を送らなければならない。仮に成仏した場合、アメリアとは離れ離れになってしまう。
レオがアメリアを生き返らせたい理由は、彼女と過ごすうちに、人間と霊の超えられない壁を感じてしまうからだ。その他にも、アメリアにはたくさんの経験をして欲しかった。美味しい食べ物を食べて、雪の冷たさを感じて、柔らかい布団で寝て、生者が感じることのできるごく当たり前の日常を。
だから、自分が死んでアメリアと一緒にいる、という甘い考えには同意できない。
「僕はね、今が幸せ。だから、死のうとは思わないよ。安心して」
すると、アメリアは「嫌だ」とはっきり答えた。レオは「えっ」と言いながら、彼女の方を見返す。否定されたことに驚いて、なぜと疑問も出てきた。
「安心なんてできない。冒険者は死ぬか、生きるかなんでしょ。私の心配はどこに持っていったら良いの? レオはどんどん危険な場所へ行こうとするから、私はいつも冷や冷やしながら隣にいるの」
彼女は、今まで秘密にしてきたことを打ち明けた。もう、今しかないと思ったし、魔族と正面から戦おうとする姿に限界が来たからだ。
レオが死ぬのは、そう遠い未来ではないと思う。彼にとって無理をしていなくても、大丈夫だと答えてても、死ぬような真似はもうして欲しくなかった。
「ごめん……」
しかし、冒険者を止めるわけにもいかない。アメリアの心配はもっともだが、目的のエテレインを見つけるにも、生計を立てるにも、冒険者が大きな役割を果たしてくれるからだ。
すると、ジャック・オ・ランタンがレオに向かって飛びかかってきた。本当に、魔獣はタイミングというものを考えてくれない。
シュルシュルとツルを動かして、彼の首を絞めようとしてくる。レオは、すぐに剣で切断すると、カボチャを真っ二つに割った。ジャック・オ・ランタンは、人型のツルの形をしており、頭部のカボチャの所に魔石がある。
中が光って見えるのは、魔石の輝きが隙間から溢れているのだ。
「時間が欲しい。一週間、考えさせて」
つい、この場凌ぎに言ってしまった。冒険者を続けたいがために、時間で何とかしようと考える自分が情けない。急なアメリアの発言に対して、しばらく考える時間がほしかった。
「何を考えるの?」
「アメリアが……僕に安心してもらえる方法……」
「死ぬような危険な事をしなければ良い話だよ」
「それは、冒険者を止めるって意味でしょ。僕は、アメリアの蘇生を」
「もう死んだ人のために、レオが危険なことはしなくていいよ。私は……私はね、殺処分から逃れられた大切な命を、無駄に使って欲しくないの。私は死んだから、もう生き返られないの。諦めて……」
沈黙ができた。どちらも少し気が荒くなっている。一旦、落ち着きたいと思った。でも、こんな場所でそれはできないので、今感じて考えた事をチグハグになりながらも答えた。
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そして、わがままかもしれないけど、僕はなるべく成仏したいと思っている。だから、アメリアも成仏させたい。そのために、今必死に強くなろうと思っているから。
お願いします。僕は、冒険者を続けてエテレインを探したい。アメリアが安心できるくらい強くなるための努力するから」
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アメリアは少し迷ってみせた後、コクリと頷いた。「なぜ、ギルド長が出てきた?」と最初は思ったが、レオは勘違いしているんだと気づいた。
レオが弱いから心配になっているのではない。ギルド長を選んだのは、魔族に簡単に勝てたほどの力があるから、強いの証明になると思ったんだ。でも、アメリアが心配なのは、自分から危険な行為をするレオの無意識な癖だ。
正義感が強く、真っすぐな考えで、限界まで頑張ろうとする。優しくて、周りを大切にしたがるから、誰かの不幸に臆病。その性格のせいで、自分を大切にするのを忘れて、周りの人のために無茶なことをしだす。
だから、分かっていないんだなって思った。レオが弱いから不安なんじゃない。魔族に勝てなかったから安心できないんじゃない。ギルド長に勝てるほど強くなって欲しいんじゃなくて、その危ない性格をどうにかして欲しかった。
でも、もう仕方ないよね。彼が決めて、今努力しているから。これ以上、否定するような言葉はよそう。あのギルド長に一ヶ月で勝とうとするくらいなんだから、レオのやる気は誰も止められないと思う。
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