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魔獣戦争
29話 山頂へ
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ただひたすらに進んだ。冒険者や魔獣達が生死をかけながら戦う中、アメリアはそのまますり抜けて真っ直ぐ走る。レオに言われたあの高い山に向かって、周りなんて気にせずに駆けた。
「レオ……大丈夫かな」
今回ばかりは、心配で怖かった。いつもレオを見ていて冷や冷やさせられるが、本当にこの依頼はレオが死んでしまうのではないか、と落ち着き払ってはいられない。
異常な量の魔獣。深夜という人間にとって不利な状況。圧倒的な人手の少なさ。そして、レオはまだまだ若い。こんな鬼畜な仕事をするには早いし、荷が重すぎると思った。
彼には、自分をもっと大事にしてほしい。死んだ人間に、尽くす必要なんてない。それでも、命をかけてまで戦っているのだから、アメリアの心配事はどこで処理をしたら良いのだろうか。
何の前触れもなくやってきた大量の魔獣。まるで人間を襲うために、何者かが計画を立てたようで、一点から集中して発生するのには理由がないとおかしい。もしかしたら、山頂に何かあるのだろうかと感じたが、それが何かは皆目見当がつかなかった。
他の冒険者も、皆ここぞとばかり報酬に浮かれていたが、こんなことになるとは誰も思わなかったはずだ。
「この山だよね……?」
三十分かかって山の目の前に来た。
後ろを振り返ると、魔獣がこの辺り一帯を荒らし続け、冒険者が剣や魔法をつかって懸命に立ち向かっていた。弱った冒険者はとどめを刺され、醜い魔獣に貪り食われる。恐怖で逃げようとする者もいた。
つい、それがレオにもできて欲しいと思う。この光景を見ると、彼の身の安全が心配で不安が倍増してきた。しかし、任せられたことはちゃんとやるつもりだ。
前を向くと、魔獣が上から降りてくる。無限に増え続け、殺してもまた増えるの繰り返し。いつ、この発生が尽きるのだろう、とアメリアも冒険者も皆思った。
きっと、答えは頂上にあるはずだ。
ゴツゴツした斜面の上を進んだ。歩くと遅れてしまうため、体をふわっと浮かせながら登っていく。まるで、高い空へ、天へ上っていくような感覚だった。
成仏に失敗したのだから、一生天に召されることはできないのだが、上に進むうちについ感じてしまう。
なだらかだが、岩が極端な凹凸を作ったり、急な斜面が壁のように立ちはだかったり、アメリアは飛べるから良いのだが、正直進みずらかった。
かなりな高所まで来てしまうと、下が怖くなってくる。落ちても自分は死んでいるから大丈夫、と思いたいが本能が勝って足が震えてしまう。なるべく上を見ることを意識して、山巓を目指した。
次々に魔獣とすれ違うが、アメリアはそのまますり抜けて登る。攻撃とかした方がいいのだろうか、と思ったが生者に触れることはできなく、これといった武器もない。
なにより、時間がないので山頂を目指すことを優先した。
「え、もう朝になってる。急がないと!」
距離は長いので時間はかかってしまう。ぼんやりと光が見えたと思うと、太陽が昇って朝になった。まだ頂上に着けていないというのに、もうこんなに時間が過ぎているのだとアメリアは焦ってしまう。
山の三分の二は登り切った。残り三分の一で、あと少し険しい坂を登攀するだけだ。
ここまで来ると、地面は真っ白で雪の一面だった。彼女はちょっとした興味が湧いてきて、雪の高さはどれくらいなのだろうか、と普通に立ってみることにした。
すると、自分の腰までがすっぽり入る。
これじゃあ前に進めない。思っていたよりも深いことに、アメリアは子供さながら驚いた。もし、レオがこの山を登ったら、同じようにすっぽりはまってしまうかもしれない。
「あっ、いけない! 早く山頂に」
時間がないということは、子供の彼女でも理解していた。それなのに、滅多に見れない雪に憧れ、手を出してしまうなんて時間が勿体ない。太陽もすでに昇っているので、もう何時間も経っているのだ。
アメリアは、早くレオの安全も確認したい気持ちで、急ぎ足で山を駆け上がる。頂に近くなると斜面が急で、もうほぼ真上に飛んでいる状態だ。
「やっと、着いた……」
太陽が昇ってきて一時間くらいが経ち、彼女は山の頂に到着した。
しかし、感動なんてしていられない。二つの意味を含めてそうだった。一つ目は時間的余裕。二つ目は山頂の様子だ。
火口には、千をゆうに超える量の魔獣が集まっている。山の噴火口は大きなくぼみができており、中心からもくもくと煙を上げながら、池のように水も溜まっていた。そして、そのくぼみの中から魔獣が這い出て、下に降りていくのだ。
大きなくぼみに閉じ込められた魔獣が、一気に逃げ出すような光景にも見える。
なぜ、魔獣がこんな所に?
「フハハハハ。人間め、もっと苦しめ!」
こんなに分かりやすい悪役がいるものか。空を飛んで地上を眺めている魔族が、愉快な声を上げてすぐに見つかった。こいつが主犯だ、と直感以上に分かる。
彼女は恐る恐る魔族に近づくと、武器や種類について注意深く見た。
背中には尖った黒い翼を持ち、手足の爪が長く大きく、細長い角が二本生えている。笑った時にはギラギラの牙が見え、武器は持っていなさそうだった。
周囲を確認しても、魔族は一匹のようだ。普通は複数で協力しながら行動することが多いのだが、この魔族に限ってはなぜか一人だけ。隠れている可能性も考慮して、噴火口周辺を探し回ったが、それらしき姿もなかった。
なぜ、どうやって、この魔族がここまでの事態を起こしたのかは分からないが、魔族がいるというのは一大事だ。
「ひとまず、戻ってレオに知らせよう!」
彼女はレオのいるB地点まで降りていった。
「レオ……大丈夫かな」
今回ばかりは、心配で怖かった。いつもレオを見ていて冷や冷やさせられるが、本当にこの依頼はレオが死んでしまうのではないか、と落ち着き払ってはいられない。
異常な量の魔獣。深夜という人間にとって不利な状況。圧倒的な人手の少なさ。そして、レオはまだまだ若い。こんな鬼畜な仕事をするには早いし、荷が重すぎると思った。
彼には、自分をもっと大事にしてほしい。死んだ人間に、尽くす必要なんてない。それでも、命をかけてまで戦っているのだから、アメリアの心配事はどこで処理をしたら良いのだろうか。
何の前触れもなくやってきた大量の魔獣。まるで人間を襲うために、何者かが計画を立てたようで、一点から集中して発生するのには理由がないとおかしい。もしかしたら、山頂に何かあるのだろうかと感じたが、それが何かは皆目見当がつかなかった。
他の冒険者も、皆ここぞとばかり報酬に浮かれていたが、こんなことになるとは誰も思わなかったはずだ。
「この山だよね……?」
三十分かかって山の目の前に来た。
後ろを振り返ると、魔獣がこの辺り一帯を荒らし続け、冒険者が剣や魔法をつかって懸命に立ち向かっていた。弱った冒険者はとどめを刺され、醜い魔獣に貪り食われる。恐怖で逃げようとする者もいた。
つい、それがレオにもできて欲しいと思う。この光景を見ると、彼の身の安全が心配で不安が倍増してきた。しかし、任せられたことはちゃんとやるつもりだ。
前を向くと、魔獣が上から降りてくる。無限に増え続け、殺してもまた増えるの繰り返し。いつ、この発生が尽きるのだろう、とアメリアも冒険者も皆思った。
きっと、答えは頂上にあるはずだ。
ゴツゴツした斜面の上を進んだ。歩くと遅れてしまうため、体をふわっと浮かせながら登っていく。まるで、高い空へ、天へ上っていくような感覚だった。
成仏に失敗したのだから、一生天に召されることはできないのだが、上に進むうちについ感じてしまう。
なだらかだが、岩が極端な凹凸を作ったり、急な斜面が壁のように立ちはだかったり、アメリアは飛べるから良いのだが、正直進みずらかった。
かなりな高所まで来てしまうと、下が怖くなってくる。落ちても自分は死んでいるから大丈夫、と思いたいが本能が勝って足が震えてしまう。なるべく上を見ることを意識して、山巓を目指した。
次々に魔獣とすれ違うが、アメリアはそのまますり抜けて登る。攻撃とかした方がいいのだろうか、と思ったが生者に触れることはできなく、これといった武器もない。
なにより、時間がないので山頂を目指すことを優先した。
「え、もう朝になってる。急がないと!」
距離は長いので時間はかかってしまう。ぼんやりと光が見えたと思うと、太陽が昇って朝になった。まだ頂上に着けていないというのに、もうこんなに時間が過ぎているのだとアメリアは焦ってしまう。
山の三分の二は登り切った。残り三分の一で、あと少し険しい坂を登攀するだけだ。
ここまで来ると、地面は真っ白で雪の一面だった。彼女はちょっとした興味が湧いてきて、雪の高さはどれくらいなのだろうか、と普通に立ってみることにした。
すると、自分の腰までがすっぽり入る。
これじゃあ前に進めない。思っていたよりも深いことに、アメリアは子供さながら驚いた。もし、レオがこの山を登ったら、同じようにすっぽりはまってしまうかもしれない。
「あっ、いけない! 早く山頂に」
時間がないということは、子供の彼女でも理解していた。それなのに、滅多に見れない雪に憧れ、手を出してしまうなんて時間が勿体ない。太陽もすでに昇っているので、もう何時間も経っているのだ。
アメリアは、早くレオの安全も確認したい気持ちで、急ぎ足で山を駆け上がる。頂に近くなると斜面が急で、もうほぼ真上に飛んでいる状態だ。
「やっと、着いた……」
太陽が昇ってきて一時間くらいが経ち、彼女は山の頂に到着した。
しかし、感動なんてしていられない。二つの意味を含めてそうだった。一つ目は時間的余裕。二つ目は山頂の様子だ。
火口には、千をゆうに超える量の魔獣が集まっている。山の噴火口は大きなくぼみができており、中心からもくもくと煙を上げながら、池のように水も溜まっていた。そして、そのくぼみの中から魔獣が這い出て、下に降りていくのだ。
大きなくぼみに閉じ込められた魔獣が、一気に逃げ出すような光景にも見える。
なぜ、魔獣がこんな所に?
「フハハハハ。人間め、もっと苦しめ!」
こんなに分かりやすい悪役がいるものか。空を飛んで地上を眺めている魔族が、愉快な声を上げてすぐに見つかった。こいつが主犯だ、と直感以上に分かる。
彼女は恐る恐る魔族に近づくと、武器や種類について注意深く見た。
背中には尖った黒い翼を持ち、手足の爪が長く大きく、細長い角が二本生えている。笑った時にはギラギラの牙が見え、武器は持っていなさそうだった。
周囲を確認しても、魔族は一匹のようだ。普通は複数で協力しながら行動することが多いのだが、この魔族に限ってはなぜか一人だけ。隠れている可能性も考慮して、噴火口周辺を探し回ったが、それらしき姿もなかった。
なぜ、どうやって、この魔族がここまでの事態を起こしたのかは分からないが、魔族がいるというのは一大事だ。
「ひとまず、戻ってレオに知らせよう!」
彼女はレオのいるB地点まで降りていった。
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