異世界転生、魔法のできない欠陥品は逃走。実は霊が見えるので最強を目指します。

冒険へ

19話 魔法の勉強

　魔法とは、マナのエネルギー変換の総称で、この世のものは全てマナを含んでいる。マナは、そのものに秘められているエネルギーで、空気中にも物にもわずかに存在し、魔石や惑星の核に一番多い。

　魔法は、炎・水・土・光・闇の五つが原点であり、それらが枝分かれや応用することによって雷や霧、風、金属などができている。しかし、重力操作や空間魔法などはどれにも当てはまらないことから例外らしい。
　そして、魔法は詠唱を唱えることで発動すると書かれていた。

　魔流、魔力が深く関係し、マナの流れとその大きさを魔流といい、魔流を押し出す力を魔力と言う。魔力が高いほど多くのマナが流れ、威力も増してくる。
　一般的には、魔力の調整を行うためと、より強力な魔法を発動するための、二種類の魔法具を使用するケースが多い。

　魔力を上げる方法は、マナをより多く吸収することだ。
　マナを吸収するというのは、現在研究として証明されておらず、どのように、どこから、とまだまだ実験を進めている段階だ。
　そして、魔力の上がった人は、魔獣を倒したり、特に強い魔法を扱う生き物を討伐すると、魔力がアップしているケースが多い。ただし、個人差がある。

　それでは、吸収の元となるものは何かと考えてくると、魔石が候補に上がっている。魔石には、マナを体内で循環させる働きの他にも、マナを吸収する働きもあるのではないかとされているのだ。
　どの生物にも魔石が存在する。だから、どの生物も魔法が使えるというと、理屈が通ってくる。しかし、スライムなどの生物は、生命活動を維持するのが精一杯で魔法を扱うのが難しい。

　マナを魔石にためる飽和魔力量があり、魔石の大きさに比例することから、ドラゴンや魔族の魔石は魔法具に使われる。だから、オークションで売ると莫大な金銭を手に入れられるそうだ。

　最初は、魔法の基礎知識から書かれていた。そして、それが内容の半分を占めている。残り半分のページが魔法の使い方や応用、コツ、注意事項で、最後の三ページに法令が詰められていた。

　詳しく記載されており、内容は所々難しいが米印をなぞって見ると、その説明も書いてあってわかりやすかった。特に、好印象だったのが、ページの下端に豆知識が加えられていて、それがとても面白い。

　例えば、風魔法は、火魔法で空気を温め、氷魔法で冷やすことで、気圧の差を生じさせている。たまに理科要素が入っていて、つい納得してしまう。
　それほどの説得力もあったのだ。

　読み進めていて、思わず感嘆の声をあげてしまいそうな、科学を勉強していたあの頃のような感覚になった。

　おそらく、あの本屋も転移魔法とか使ってあちらこちらに移動しているのだろう。異世界の魔法なんて、もうほぼなんでもありだ。
　魔法がなぜ発動するのかの原理、その条件も書かれており、なるほどと思うものばかり。

　マナは、エネルギー保存の法則と似ていて、食べ物からも空気からもマナを摂取できているという。そして、マナのエネルギーはほとんど生命活動維持のために使われる。
　だから、過食症の人はマナが低く魔力が少ない。また、老衰の場合も、魔石に含まれているマナが尽きており、大怪我で亡くなる場合も、回復のエネルギーにマナを使い切っている。
　しかし、魔獣を倒すと効率が良いのは、まだ分かっていないそうだ。

　体内のマナ→魔法でエネルギーを放出→空気中にエネルギーが散乱→空気を吸う→わずかにマナを吸収。というようなイメージだと思う。

　ただの自分の仮説だが、魔獣を倒すことで魔石が機能しなくなり、空気中に大量にマナを放出して、近くの人間が空気を吸った時に多く吸収する。
　単なる妄想に過ぎないが、エネルギーの循環と似ているはずだと感じた。

　そして、本を読んでいて、一番気になったのは、詠唱魔法が最初のうちはなかなか発動しにくいということ。

　本には、皆初めての魔法は慣れてないから、練習することでできるようになると。しかし、それはスイッチを押しても初めは電気が流れないと同じ意味ではないのか？

　僕は、詠唱は魔力を目的の魔法に変換するためのスイッチだと思っている。だから、詠唱を唱えることで、スイッチが入ったようにエネルギー変換をするのだと思っていた。

　けれど、言葉で魔法ができるなんて、よくよく考えてみるとおかしいと思う。なぜ言葉を発するだけで、エネルギー変換するのか、その原理とかも書かれてなく、理解できなかった。

「うーん、分からない……」
　魔法が全く使えないから、さらに感覚やイメージがつきにくい。本に載っている詠唱もやってみたが、一ミリたりとも炎は出てこなかった。

「ねぇ、レオ。寝ないの？
　集中しているのは良い事だけど、もう十一時過ぎているよ」

「え！　もうそんな時間⁉︎」

　彼は、本を閉じて急いで歯を磨くと、ベッドにダイブした。溜まっている疲労を、マットレスが受け止めてくれる。一気に力が抜けて、ふかふかで暖かく身を包み込む感覚に、安心感が生まれた。

　そういえば、八年もまともなベッドに寝れてない。研究所も床で寝てたし、森にいた時も草が布団みたいなもんだったからなぁ。
　あったかい……。なんて心地いいんだ……。

　レオは、何秒もかからずにすぐに眠りに入った。アメリアは、やれやれと言いながら、彼に毛布をきちんと被せてあげる。

「疲れているんだね。おやすみ」