四度目は、精霊の加護を授かりました

ラニーニャ

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1話

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 グラリフィアは、人間と魔物と精霊が共存する魔法の世界。

 魔法には炎や水、光、闇など様々な属性があり、人々は魔物や精霊の力を借りて魔法を使うことができる。
 さらに、その属性ごとに全ての魔物や精霊を統べる『精霊王』が存在し、稀に人間に加護を与えるのだ。
 そして、全ての属性を持つ世界に一人だけの精霊王は、『全能の神』とも呼ばれている。

 その世界、グラリフィアに転生したエルヴィスは、その全能の神の孫と出会い、ソフィアと名前を授けて加護を与えられたのだ。

 当時、赤ん坊だった彼は運良く彼女と出会ったことで、森の中でも生き残ることができた。

 全能の神の孫ソフィアは、五百年もの間ガナの森の聖なる岩に閉じ込められていたが、魂の濃い、それも生まれつき精霊が見える人間と出会うことで、契約を結び解放されるのだった。
 一般人は精霊を見ることができない。しかし、見える人間と契約を結ぶことで、肉体を手に入れられるのだ。
 つまり、契約後の精霊は見える。

 ◇◆◇◆◇

「エル、朝ごはんできたよ」

「あ、うん。今行く」

 小さな洞窟の中、そこを改造して二人の子供が生活をしている。
 キッチンに、ベッドに、テーブルに朝ごはんまで全てが完璧に配置しており、薄暗いはずの洞窟は素晴らしい住処になっていた。

ーーエルヴィスとソフィアが契約をして、十年が経った。
 まるで、同い年の子供がリアルおままごとをしているように見えるが、本当に生活をしている。

「「いただきます」」

 二人は同時に手を合わせてそう言うと、朝食を美味しそうに頬張った。
 川で獲れた魚に、森で狩った魔物の肉、草木から取った実や葉などを使った料理は、どれも素朴だがその良い香りときたら、つい涎が出るほどだ。

「ソフィ、この肉柔らかくて脂身がのっていてとても美味しいよ。この野菜も俺が調理した時は苦くて不味かったのに、こんなに味付けが良くて苦味がないのはすごい!
 ソフィの料理の絶品さ、本当尊敬する」

 今にもほっぺが落ちそうな顔をして、エルヴィスは食事を楽しんだ。

「あはは、五百年生きた知恵だよ」

 食事中の何気ない団欒を終えた後、食器を洗っていつもの日課、剣術、魔法、昼ごはん、読書、体術とあるのだが、今日は違った。

「ねえ、ソフィ。話があるんだけど、ちょっといいかな?」
 食器を洗い終わって、エルヴィスがテーブルを拭きながら話しかけた。

「ん? なーに?」

 少しの短い沈黙を作ると、エルヴィスは珍しく真剣な顔をして、真っ直ぐとソフィアの顔を見ながらお願いする。

「俺、外に行きたい。森に閉じこもってばっかじゃなくて、町に行ったり、友達を作ったり、買い物をしてみたり、したい……ダメ、かな?」

「ご主人様、もうお忘れですか? 
 私は、あなた様のためなら、どんな願いも仰せのままに従います。 さあ、町にいく準備をしましょう」

 エルヴィスはぱあと笑顔を見せると、「よっしゃ」と声を上げて喜んだ。その様子に、ソフィアも微笑む。


「よし! こんなもんかな」

 エルヴィスとソフィアは出掛けるのに必要最低限の荷物を背負った。
 すると、ソフィアは食卓のテーブルに紫の水晶玉を置いて、家を出た。そして、エルヴィスも一緒に洞窟の外にいることを確認すると、パチンっと指を鳴らす。

 ゴゴゴゴゴオォォ

 その瞬間、洞窟はシャッターが降りるように土の壁が、入り口を見かけ状塞いだ。
 側でワクワクのオーラを出しながら待っているエルヴィスを見ると、「レッツゴー」と進む先を指差して言う。

 見慣れている森の中をソフィアに誘導されながら、街へと向かう。
 生まれて初めて森から出るので、ソフィアに人間の常識を教えてもらいながら進んだ。

「人間界で生きるには、まず金が必要で、その金を手に入れるために仕事をしなければならないの。
 だから、最初は仕事探しをしないとね。エルは希望の仕事とかある?」

「うーん……。冒険者、やってみたい。
 この前読んだ本で、強い魔獣を倒して皆を救う姿がかっこよかったから」

「じゃあ、それにしようか」

 その後、ソフィアは金の払い方や、人間の地位と権力、学校の存在について色々なことを説明し、二時間でやっと人間のいる街に到着した。

「わぁ! すごい四角い建物と人が沢山いる!」

 丘の上から見た町の景色に、エルヴィスは圧倒された。今まで前世も含めて、外の建物を見たのは今日が初めてだからだ。
 その興奮にワクワクは止まらない。これからどんな楽しみが待ち受けているのだろうか、と胸を躍らせ期待した。

「ほらっ、ぼーっとしてないで早く行こ」

 ソフィアが彼の手を引っ張った。丘から見る景色と、彼女が手を引きながら無邪気に笑う姿がマッチし、思わず「綺麗」と呟いた。
 しかし、ソフィアにはその言葉が聞こえなかったのか、そのまま手を引いて二人は走りだす。
 揺れる長い髪は風に優しく煽られ、ほわっと甘い匂いをほのかに感じた。

 それにエルヴィスは手の甲で口を軽く覆い、顔を赤くして下をうつむく。ソフィアが引く左手を見ると、耳が熱くなった。

「どうしたの?」
 いつの間にか町の中に入っており、手を握りながらソフィアはエルヴィスの表情に心配を隠せなかった。
 彼女とおでこと彼のおでこを当てて、顔の赤さに熱がないか確認する。

「ん⁉︎ ちょ、ちょっと。大丈夫、大丈夫だよ」
 急に顔が近くなったことに、今にも頭が爆発しそうだ。エルヴィスは心臓のドクドクを大声で掻き消しながら、「ぼ、冒険者ギルドにゴー」と先頭に進んだ。

「フフフ。エル、こっちじゃないよ」
 彼の肩をトントンと叩いて合図をすると、冒険者ギルドの所に指差して先頭を交換した。
 自分が間違ったのに少し恥ずかしさを覚えながら、エルヴィスは彼女の言う方向について行った。

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